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十三章
六話 【帰ろう…】
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「スワロ様とおっしゃるのですね……
この国は古くから、この地に住まう王族とセルロス神を信仰する我々教会の者が、共存し長年に渡り民を守って参りました。
ですが、厄災と呼ばれる魔獣の出現に、かつて無いほどの被害を生み、国として終わりを迎えるのを待つだけになっていたのです。
神に見放されたと信仰は地に落ち、我々教会の者も、長年仕えて来た神の存在を否定し始めていたのです。
そこに厄災からこの地を取り戻し、国をお救いになられた方が現れたのです。
長年共に歩んで来た王族貴族の方々は、教会への信用を無くし、新たに現れた英雄を讃え、そこにかつての教国の姿は無くなっておりました。
そんな中、教会の力を取り戻そうと教皇は、王族達に全て仕組まれていた事と嘘吹き、神の名における試練であると扇動し始めたのです。
これには教会も二分する事になり、更に教会への信頼を地に落とす事になりました。
思う様に行かなくなった教皇派は、王族達を捕らえ国を乗っ取ると言う暴挙に出たのです。
そんな時です。
私の夢に、光に包まれた鳥が現れたのは。
鳥は私に「魔王が生まれる」と……
日に日に鳥は男性へ姿を変え、勇者を解き放つ様にと語りかけるように。
私は神の啓示を受けたのだと、教皇に国取りの場合では無い事を進言したのですが、彼はその事も利用し、英雄の協力者であった、マイズ村の聖女と呼ばれていた者を……
教会として、止める事が出来なかった事を、心から謝罪致します。
スワロ様が討たれたと知らせを受け、我々反対派も立ち上がり、ここに来たのですが、ほぼ同時にゴキコロリ様も報復に来られたと」
「なるほど、じゃ俺の復讐は教皇を殺して終わったと?」
「そんな話では無いのです! 私は貴方を見て確信しました。貴方がお告げにあった魔王だと! 国取りや教会存続など、どうでもいいのです! この世界の為に、復讐に取り憑かれてはいけません!」
「あっはははは! 随分と勝手な言い分だな~ 戦争仕掛けておいて、負けそうになると一人の責任でしたか」
「ゴキコロリ様、こちらを!」
「今度は何?」
「これは、私41代目以前の聖女が記した、自伝書です。我々聖女は生まれながら不思議な力を持っております。
皆各々、生き方や成長、信仰などを書き記した本には、不思議と予言めいた事も含まれております。
これには、厄災の出現も示唆されておりました。
そして、魔王と呼ばれる大きな力を持った者の事も!」
「へぇ~ じゃ今日、全て終わる事もわかってたんだね」
「いえ! それが、今まで記されていた魔王と私が以前まで感じていた魔王が、ここ数ヶ月、全くの別物になっているのです。
黒い感情を我儘に振るう魔王…… 世界を滅びに導く…… そんな悪いイメージだったのですが、数ヶ月前に突然、それまでと全く違う、予測の付かないイメージに……
それが最近になって更に、日に日に変わっていくのです。
まるで元の魔王と別の魔王が、入れ替わった様な……」
俺が、この世界に来たからか?
ここの神も聖女も、異世界から間違って来た俺の事は、予測出来なかったのか……
魔王候補は他にいた。
本来破滅に導く魔王から、魔王を奪った俺が、破滅を回避する。
そっか…… 魔王になっても生き方は選べるのか。
それなら何故、ベンゾウの夢に魔王を倒せと出るんだ?
この世界の神は、俺が破滅に導くと決めつけているのか?
「心当たりはあるよ、だがそれでは何故、夢に勇者を解放しろだ、賢者と協力して魔王を倒せと出るんだ?」
「危ういのです! それだけ大きな力を持っているのです! それがどこでどう転ぶか…… 対抗策は必要なのかと…… 現に今、貴方を止める力は、我々にはありません。
私も会うまではお告げの通り、倒さなくてはと思っていました。
ですが、いざ対峙してみると、以前抱いていた敵意は無く、むしろお告げの方が何かの間違いではないのかと……」
分からなくも無いが、やや強引な気もする。
結局スワロが俺のせいで殺された事実だけが変わらないのか……
「完全に覚醒してないからなのかは、正直分かりません。大切な人を失った悲しみと怒りに、飲み込まれる事が引き金で覚醒するのかも知れません。ですが、他にも大切な人はいませんか?」
………
「どうかこのまま、先代達が思い描いた魔王の様にだけはならないでください…… 本当に勝手な事だと思います。
私一人の命で償えるならいくらでも差し上げます! どうか、どうかこのまま、お怒りをお納め下さい」
怒りのまま、ここで関係ない者まで殺せば、どっかの誰かの思惑通りって事か……
「…………国葬を。
スワロは誰よりもこの国を、マイズの村の事を思っていた。
彼女がこの国を救ったんだ。
盛大に国をあげ彼女を弔い、彼女が成した事を忘れない様に。
教皇の暴走も公に、それで潰れるなら教会は潰れろ。
それと、俺だって望んで魔王になりたい訳じゃ無い、だが俺が魔王にならなければ、きっと他の奴が、その本の様な魔王として、生まれるだろう。
なら、おれが害のない魔王を目指す。
その邪魔をするなら、次は容赦しない」
「承りました。今代41代目聖女の[セシル・デラフィオーレ]この命に変えて、そのお約束、御守りします」
惣一郎は武器を仕舞、聖騎士達の中を歩き出す。
家族のもとに……
この国は古くから、この地に住まう王族とセルロス神を信仰する我々教会の者が、共存し長年に渡り民を守って参りました。
ですが、厄災と呼ばれる魔獣の出現に、かつて無いほどの被害を生み、国として終わりを迎えるのを待つだけになっていたのです。
神に見放されたと信仰は地に落ち、我々教会の者も、長年仕えて来た神の存在を否定し始めていたのです。
そこに厄災からこの地を取り戻し、国をお救いになられた方が現れたのです。
長年共に歩んで来た王族貴族の方々は、教会への信用を無くし、新たに現れた英雄を讃え、そこにかつての教国の姿は無くなっておりました。
そんな中、教会の力を取り戻そうと教皇は、王族達に全て仕組まれていた事と嘘吹き、神の名における試練であると扇動し始めたのです。
これには教会も二分する事になり、更に教会への信頼を地に落とす事になりました。
思う様に行かなくなった教皇派は、王族達を捕らえ国を乗っ取ると言う暴挙に出たのです。
そんな時です。
私の夢に、光に包まれた鳥が現れたのは。
鳥は私に「魔王が生まれる」と……
日に日に鳥は男性へ姿を変え、勇者を解き放つ様にと語りかけるように。
私は神の啓示を受けたのだと、教皇に国取りの場合では無い事を進言したのですが、彼はその事も利用し、英雄の協力者であった、マイズ村の聖女と呼ばれていた者を……
教会として、止める事が出来なかった事を、心から謝罪致します。
スワロ様が討たれたと知らせを受け、我々反対派も立ち上がり、ここに来たのですが、ほぼ同時にゴキコロリ様も報復に来られたと」
「なるほど、じゃ俺の復讐は教皇を殺して終わったと?」
「そんな話では無いのです! 私は貴方を見て確信しました。貴方がお告げにあった魔王だと! 国取りや教会存続など、どうでもいいのです! この世界の為に、復讐に取り憑かれてはいけません!」
「あっはははは! 随分と勝手な言い分だな~ 戦争仕掛けておいて、負けそうになると一人の責任でしたか」
「ゴキコロリ様、こちらを!」
「今度は何?」
「これは、私41代目以前の聖女が記した、自伝書です。我々聖女は生まれながら不思議な力を持っております。
皆各々、生き方や成長、信仰などを書き記した本には、不思議と予言めいた事も含まれております。
これには、厄災の出現も示唆されておりました。
そして、魔王と呼ばれる大きな力を持った者の事も!」
「へぇ~ じゃ今日、全て終わる事もわかってたんだね」
「いえ! それが、今まで記されていた魔王と私が以前まで感じていた魔王が、ここ数ヶ月、全くの別物になっているのです。
黒い感情を我儘に振るう魔王…… 世界を滅びに導く…… そんな悪いイメージだったのですが、数ヶ月前に突然、それまでと全く違う、予測の付かないイメージに……
それが最近になって更に、日に日に変わっていくのです。
まるで元の魔王と別の魔王が、入れ替わった様な……」
俺が、この世界に来たからか?
ここの神も聖女も、異世界から間違って来た俺の事は、予測出来なかったのか……
魔王候補は他にいた。
本来破滅に導く魔王から、魔王を奪った俺が、破滅を回避する。
そっか…… 魔王になっても生き方は選べるのか。
それなら何故、ベンゾウの夢に魔王を倒せと出るんだ?
この世界の神は、俺が破滅に導くと決めつけているのか?
「心当たりはあるよ、だがそれでは何故、夢に勇者を解放しろだ、賢者と協力して魔王を倒せと出るんだ?」
「危ういのです! それだけ大きな力を持っているのです! それがどこでどう転ぶか…… 対抗策は必要なのかと…… 現に今、貴方を止める力は、我々にはありません。
私も会うまではお告げの通り、倒さなくてはと思っていました。
ですが、いざ対峙してみると、以前抱いていた敵意は無く、むしろお告げの方が何かの間違いではないのかと……」
分からなくも無いが、やや強引な気もする。
結局スワロが俺のせいで殺された事実だけが変わらないのか……
「完全に覚醒してないからなのかは、正直分かりません。大切な人を失った悲しみと怒りに、飲み込まれる事が引き金で覚醒するのかも知れません。ですが、他にも大切な人はいませんか?」
………
「どうかこのまま、先代達が思い描いた魔王の様にだけはならないでください…… 本当に勝手な事だと思います。
私一人の命で償えるならいくらでも差し上げます! どうか、どうかこのまま、お怒りをお納め下さい」
怒りのまま、ここで関係ない者まで殺せば、どっかの誰かの思惑通りって事か……
「…………国葬を。
スワロは誰よりもこの国を、マイズの村の事を思っていた。
彼女がこの国を救ったんだ。
盛大に国をあげ彼女を弔い、彼女が成した事を忘れない様に。
教皇の暴走も公に、それで潰れるなら教会は潰れろ。
それと、俺だって望んで魔王になりたい訳じゃ無い、だが俺が魔王にならなければ、きっと他の奴が、その本の様な魔王として、生まれるだろう。
なら、おれが害のない魔王を目指す。
その邪魔をするなら、次は容赦しない」
「承りました。今代41代目聖女の[セシル・デラフィオーレ]この命に変えて、そのお約束、御守りします」
惣一郎は武器を仕舞、聖騎士達の中を歩き出す。
家族のもとに……
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