異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付

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十二章

二十一話 【相性】

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「驚いた…… 本当に手も足も出ないのか……」

ダリダリが呟く。

ゴールデールも言葉が出ない様だった。

ベンゾウが、ワクワクしながら準備運動を始める。

「もうやめないか? 意味無いし危険だぞ」

「危険?」

ゴールデールも引くに引けなくなっていた。

「ベンゾウは、俺より強いぞ!」

巨人の大きな顔に、汗が流れる。

惣一郎は脅しで言っているのではなく、実際ベンゾウのスピードは、惣一郎の反応速度の上を行く。

飛ぼうが、ガードしようが、テレキシスで攻撃しようが、ベンゾウが本気で殺しに来たなら、何も出来ずに首が落ちるだろう。

照れるベンゾウが、モジモジしていた。

勝負にならないのは目に見えていたのだ。

言い出した事を後悔しながらも、ゴールデールは前に出る。

「敵わなくても、強さに触れたい」

惣一郎には理解出来なかった。

ゴールデールは両手に斧を持っていた。

ベンゾウと向き合うと、顔色が変わる。

穏やかそうな巨人はもういない。

ベンゾウもステップを踏み、真剣な表情になる。

足場の悪い砂漠では、ベンゾウのスピードは、半減されるだろ。

ベンゾウ本人もそれは分かっているはずなのだが、普通に歩み寄る。

普通に歩いて攻撃範囲に入ってきた少女を、ゴールデールは戸惑いながらも踏み込み、斧で襲い掛かる!




時間にして3分は経っているだろうか、ゴールデールの強襲は休む事なく続いていた。

大きな顔にキラキラと汗が輝いている。

ダリダリは折れた腕の事を忘れ、現実を受け止めようとふたりの戦いを見ていた。

弁慶もまた、巨人に自分を重ね、目が離せないでいる。

その巨人は目の前にいる少女が、本当にいるのか確かめる様に、次々と攻撃を繰り返していたが、擦りもしない攻撃に、ただ息が上がって行く。

ベンゾウは…… ただ立ってスリルは楽しんでいた。

「相性だろうな……」

惣一郎の呟きに、巨人はゆっくりと攻撃をやめ、武器を下ろし、黙って肩を揺らす。

ベンゾウは武器を抜く事もない勝負に、満足したのか、ニコっと笑って惣一郎の元へ駆け寄る。

「楽しんだか?」

惣一郎の言葉に、ベンゾウは、

「うん! ブンブンって、よく見えた!」

巨人は聞こえたのか、虚な目で両膝を突く。



惣一郎は、声掛けに反応しないダリダリ達を他所目に、テントを収納し、出発の準備を整える。

「じゃ、俺らはもう行くぞ!」

「「 ……… 」」

気の毒に。

自信を無くした様に肩を落とすふたりに、かける言葉が見当たらない惣一郎達は、そのまま舟に乗り、南東を目指し飛び立つ。

乾燥した寒さの中、砂漠にも雪って降るのかな~っと考える惣一郎だった。





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