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十二章
三話 【美王】
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ベンゾウと弁慶が、潰れたテントの中からベッドなど使える物を運び出す。
惣一郎は外で、ベンチテーブルを出し、駆除剤を小瓶に詰める作業をしていた。
多分二號街を襲っている魔獣はダンゴムシだろう。
ならムカデと同じ駆除剤が効くはずである。
明るくなり出す頃、惣一郎達は歩き始める。
岩場の中を歩きづらそうに進む惣一郎に、岩の上を飛び進む、ベンゾウとクロ。
昼頃にようやく、二號街が見えて来た。
開けた平地に石造りの頑丈そうな外壁が、大きな岩山の麓に聳え立つ。
確かに一部崩れかけていた。
ダンゴムシはいない様だ。
門に近付くと、外壁の上から、
「なんの用じゃ!」
っとドワーフが顔を出す。
「獣王のジンから頼まれて来た、ジビカガイライの惣一郎だ!」
「おお、連絡は受けちょる! が、着くのが早くないか? まだ先かと思うちょった」
門が開き、数人のドワーフが警戒しながら冒険者カードを確認すると、安心したのか中へ案内してくれる。
外壁の中は石造りの建物が建ち並び、その奥の岩山の岩肌に大きな扉があった。
どうやら街は、岩山の中にある様だ。
その大扉の横の通用口から入り、暗い階段を降りて行くと、洞窟の中に街が広がっている。
ドワーフの街だ。
あちこちから煙をあげ、カンカンと何かを叩く音が聞こえる。
すると小走りで近付くドワーフが、息を切らしながら話しかけてくる。
「ハァハァ、まっちょったぞ! ハァ早かったの! わしゃ[ギルバン]じゃ、美王様の所へ案内する」
「初めまして、惣一郎だ。よろしく頼む」
ギルバンは歩きながら、街の事を教えてくれる。
工業生産に長けた街に、惣一郎は興味津々だった。
奥の大きな建物へ入って行くと、家の者が慌て出す。
そんな中、ドワーフの女性がギルバンに話しかける。
樽の様な体格のふくよかな女性……
まぁ、髭のないドワーフだ。
女性はギルバンと話すと、慌ただしくここで待つ様に言い戻って行く。
ギルバンは溜め息を吐き、無視して進んで行く。
待たなくて良いのだろうか?
奥の大きな扉の前で、
「美王様! 獣王の所から客がお着きになりましたぞ!」
「まだじゃ! ちょっと待つのじゃ!」
また、溜め息を吐くギルバン。
「すまんの~ 少し待たせるぞ」
………っと、待つ事30分。
「まだかいの~ 美王様!」
「もう少しじゃ! もう少し待っておれ」
はぁ……
更に30分……
「もうええかの~」
「ふむ、まぁ良いじゃろ!」
やっと許しを得て、ドアが開くとそこのは!
厚化粧で煌びやかな下品な服に身を包んだ、ドワーフの女性が、豪華な椅子に座りポーズを決めていた。
「よく来たの~ 妾が美王! セレニティレスじゃ」
「……はぁ」
「ふふふ、あまりの美しさに声も出せぬか!」
「失礼。ジビカガイライの惣一郎です。獣王から頼まれて、魔獣討伐に来たのですが」
「ふむ、ご苦労! グラマラの木を燃やしてなんとか追い返してはいるが、このままじゃ外壁が保たぬ! 奴らはまた明け方に襲って来るじゃろう。よろしく頼む!」
「え、ええ」
「なんじゃなんじゃ、そんなに妾が美し過ぎて、会話も入ってこんか?」
「………」
「美王様! 後はこのギルバンが、失礼します」
ギルバンに連れられ、部屋を出る惣一郎。
惣一郎はあまりにも、想像してたイメージとかけ離れていたので、混乱していた。
「で、ギルバン。今の珍獣を討伐すればいいのか?」
「はぁ~ すまんの~ そうなるのもよう分かる! じゃが、現実から目を逸らしても何も変わりゃせんのじゃ」
惣一郎は割と本気だった。
惣一郎は外で、ベンチテーブルを出し、駆除剤を小瓶に詰める作業をしていた。
多分二號街を襲っている魔獣はダンゴムシだろう。
ならムカデと同じ駆除剤が効くはずである。
明るくなり出す頃、惣一郎達は歩き始める。
岩場の中を歩きづらそうに進む惣一郎に、岩の上を飛び進む、ベンゾウとクロ。
昼頃にようやく、二號街が見えて来た。
開けた平地に石造りの頑丈そうな外壁が、大きな岩山の麓に聳え立つ。
確かに一部崩れかけていた。
ダンゴムシはいない様だ。
門に近付くと、外壁の上から、
「なんの用じゃ!」
っとドワーフが顔を出す。
「獣王のジンから頼まれて来た、ジビカガイライの惣一郎だ!」
「おお、連絡は受けちょる! が、着くのが早くないか? まだ先かと思うちょった」
門が開き、数人のドワーフが警戒しながら冒険者カードを確認すると、安心したのか中へ案内してくれる。
外壁の中は石造りの建物が建ち並び、その奥の岩山の岩肌に大きな扉があった。
どうやら街は、岩山の中にある様だ。
その大扉の横の通用口から入り、暗い階段を降りて行くと、洞窟の中に街が広がっている。
ドワーフの街だ。
あちこちから煙をあげ、カンカンと何かを叩く音が聞こえる。
すると小走りで近付くドワーフが、息を切らしながら話しかけてくる。
「ハァハァ、まっちょったぞ! ハァ早かったの! わしゃ[ギルバン]じゃ、美王様の所へ案内する」
「初めまして、惣一郎だ。よろしく頼む」
ギルバンは歩きながら、街の事を教えてくれる。
工業生産に長けた街に、惣一郎は興味津々だった。
奥の大きな建物へ入って行くと、家の者が慌て出す。
そんな中、ドワーフの女性がギルバンに話しかける。
樽の様な体格のふくよかな女性……
まぁ、髭のないドワーフだ。
女性はギルバンと話すと、慌ただしくここで待つ様に言い戻って行く。
ギルバンは溜め息を吐き、無視して進んで行く。
待たなくて良いのだろうか?
奥の大きな扉の前で、
「美王様! 獣王の所から客がお着きになりましたぞ!」
「まだじゃ! ちょっと待つのじゃ!」
また、溜め息を吐くギルバン。
「すまんの~ 少し待たせるぞ」
………っと、待つ事30分。
「まだかいの~ 美王様!」
「もう少しじゃ! もう少し待っておれ」
はぁ……
更に30分……
「もうええかの~」
「ふむ、まぁ良いじゃろ!」
やっと許しを得て、ドアが開くとそこのは!
厚化粧で煌びやかな下品な服に身を包んだ、ドワーフの女性が、豪華な椅子に座りポーズを決めていた。
「よく来たの~ 妾が美王! セレニティレスじゃ」
「……はぁ」
「ふふふ、あまりの美しさに声も出せぬか!」
「失礼。ジビカガイライの惣一郎です。獣王から頼まれて、魔獣討伐に来たのですが」
「ふむ、ご苦労! グラマラの木を燃やしてなんとか追い返してはいるが、このままじゃ外壁が保たぬ! 奴らはまた明け方に襲って来るじゃろう。よろしく頼む!」
「え、ええ」
「なんじゃなんじゃ、そんなに妾が美し過ぎて、会話も入ってこんか?」
「………」
「美王様! 後はこのギルバンが、失礼します」
ギルバンに連れられ、部屋を出る惣一郎。
惣一郎はあまりにも、想像してたイメージとかけ離れていたので、混乱していた。
「で、ギルバン。今の珍獣を討伐すればいいのか?」
「はぁ~ すまんの~ そうなるのもよう分かる! じゃが、現実から目を逸らしても何も変わりゃせんのじゃ」
惣一郎は割と本気だった。
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