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第十一章
二十四話 【小さな奇跡】
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「良かったのか? 旦那様」
「ん? 何が?」
「大事な杖じゃ?」
「あぁ、ムカデの魔石2個も手に入ったしね!」
荷車に揺られながら、ワークがなんとなくスワロを思い出させたとは、言えない惣一郎だった。
ワークなら、間違った使い方はしないだろう。
それにしても肌寒い!
草原を吹き抜ける風が、容赦なく体温を削って行く。
たまらず、ヒートテックのインナーを中に着だす惣一郎。
「君たちは、寒く無いのかね?」
「「 ……… 」」
ほらみろ、痩せ我慢しやがって。何にだよ!
ふたりにもインナーを渡す。
「ご主人様、これあったかい!」
「おお、これは暖かい!」
ピッチピチのタイトなインナーは、それはそれでセクシーだった。
肌着一枚で済むなら、服買わなくても良かったな……
服から出ている、手や顔まで暖かかった。
しばらく行くと大きな川にぶつかる。
浅瀬だが川幅は広く、澄んだ綺麗な水がキラキラ夕陽に輝いていた。
惣一郎はここでテントを出し、休むと言い出す。
するとクロが過去の雪辱戦か! 川に飛び込むと、ベンゾウも後を追いかけ飛び込む。
なんでそんなに元気なの?
だがすぐに、ベンゾウがガタガタ震えながら戻ってくる。
なんでそんなにアホなの?
クリーンをかけ、焚き火で暖まる。
人目も無いし、川を見ながら風呂もいいかと、準備を始めると、クロが戻ってくる。
口には…… 人?
随分と小さくない?
子供とかじゃ無く、普通の人の1/4スケール。
その小人が、真っ青な顔で意識を失っていた。
惣一郎は、そのまま風呂にぶち込む。
「[ホルビット族]か? 見たのはアタイも初めてだ……」
ぷかぷか浮いた小人の顔色は、見る見る血色が良くなって行く。
「ああぁ、暖かい…… 天国か?」
意識を取り戻した様だ。
「はっ! 誰!」
「こっちのセリフだよ!」
「な~ 巨人!」
「お前が、小さいんだよ!」
そう言うと惣一郎は、摘んで風呂から出すと、クリーンをかける。
「おお、さっぱりした!」
身長約40cmのとぼけた青年は、靴や服のボタンまで小さい。
「すまん、助けられた様だな!」
「クロが、川から拾って来たんだよ!」
ワン!
「ぎゃー! 魔獣!」
「クロだよ!」
「え? でも白いよ?」
やばい、疲れる奴だ……
「初めましてホルビット族の[チル]と言う!」
え、このタイミングで?
「あ、あぁ、惣一郎だ」
「夕飯は?」
「クロ、捨てて来い!」
惣一郎は渋々、焚き火を囲み夕飯を分ける。
「なんで川で溺れてたんだ?」
「そうなのだ! 急がなければ!」
「何処に?」
「村が、襲われているので町まで、冒険者を雇いに行く所なのだった」
「そりゃ大変だ、急がないとな!」
「ああ、助けてくれて感謝する!」
「気をつけて行けよ!」
「………」
「なんだよ」
「助けてください」
「………」
川上にある村から急ぐ為、舟で川を下っていて溺れたチルは、助けられたクロにまたがり、暗い川沿いを川上まで進む。
曇っているのか、いつもより暗く感じる。
嫌々だった惣一郎も、ちょっとホビット族の村を見たくて後ろを歩く。
歩いて数分で、村に着く。
「ちか! お前速攻で溺れたのか!」
「魚に襲われる大冒険だったぞ!」
「数分で大冒険は出来ません!」
川から少し離れた岩場に、5軒の小さな家が並んでいた。
大きめの犬小屋サイズだな……
「で、何に襲われたんだ」
見た感じ普通だった。
「あれだ!」
奥に山かと思っていたシルエットが、動く。
ノイテだった。
大型の牛が長閑に暗い中、草を食べていた。
マジか……
ま、でも近づいて来て踏まれたら終わりだな。
惣一郎は、苦無を出してノイテの頭を貫通させると、あっさり倒す。
「すっげ~」
「え、もう倒したの?」
「なになに? 何かあった?」
近くの大きな岩の上から、数人のホルビット族が顔を出してきた。
「ん? 何が?」
「大事な杖じゃ?」
「あぁ、ムカデの魔石2個も手に入ったしね!」
荷車に揺られながら、ワークがなんとなくスワロを思い出させたとは、言えない惣一郎だった。
ワークなら、間違った使い方はしないだろう。
それにしても肌寒い!
草原を吹き抜ける風が、容赦なく体温を削って行く。
たまらず、ヒートテックのインナーを中に着だす惣一郎。
「君たちは、寒く無いのかね?」
「「 ……… 」」
ほらみろ、痩せ我慢しやがって。何にだよ!
ふたりにもインナーを渡す。
「ご主人様、これあったかい!」
「おお、これは暖かい!」
ピッチピチのタイトなインナーは、それはそれでセクシーだった。
肌着一枚で済むなら、服買わなくても良かったな……
服から出ている、手や顔まで暖かかった。
しばらく行くと大きな川にぶつかる。
浅瀬だが川幅は広く、澄んだ綺麗な水がキラキラ夕陽に輝いていた。
惣一郎はここでテントを出し、休むと言い出す。
するとクロが過去の雪辱戦か! 川に飛び込むと、ベンゾウも後を追いかけ飛び込む。
なんでそんなに元気なの?
だがすぐに、ベンゾウがガタガタ震えながら戻ってくる。
なんでそんなにアホなの?
クリーンをかけ、焚き火で暖まる。
人目も無いし、川を見ながら風呂もいいかと、準備を始めると、クロが戻ってくる。
口には…… 人?
随分と小さくない?
子供とかじゃ無く、普通の人の1/4スケール。
その小人が、真っ青な顔で意識を失っていた。
惣一郎は、そのまま風呂にぶち込む。
「[ホルビット族]か? 見たのはアタイも初めてだ……」
ぷかぷか浮いた小人の顔色は、見る見る血色が良くなって行く。
「ああぁ、暖かい…… 天国か?」
意識を取り戻した様だ。
「はっ! 誰!」
「こっちのセリフだよ!」
「な~ 巨人!」
「お前が、小さいんだよ!」
そう言うと惣一郎は、摘んで風呂から出すと、クリーンをかける。
「おお、さっぱりした!」
身長約40cmのとぼけた青年は、靴や服のボタンまで小さい。
「すまん、助けられた様だな!」
「クロが、川から拾って来たんだよ!」
ワン!
「ぎゃー! 魔獣!」
「クロだよ!」
「え? でも白いよ?」
やばい、疲れる奴だ……
「初めましてホルビット族の[チル]と言う!」
え、このタイミングで?
「あ、あぁ、惣一郎だ」
「夕飯は?」
「クロ、捨てて来い!」
惣一郎は渋々、焚き火を囲み夕飯を分ける。
「なんで川で溺れてたんだ?」
「そうなのだ! 急がなければ!」
「何処に?」
「村が、襲われているので町まで、冒険者を雇いに行く所なのだった」
「そりゃ大変だ、急がないとな!」
「ああ、助けてくれて感謝する!」
「気をつけて行けよ!」
「………」
「なんだよ」
「助けてください」
「………」
川上にある村から急ぐ為、舟で川を下っていて溺れたチルは、助けられたクロにまたがり、暗い川沿いを川上まで進む。
曇っているのか、いつもより暗く感じる。
嫌々だった惣一郎も、ちょっとホビット族の村を見たくて後ろを歩く。
歩いて数分で、村に着く。
「ちか! お前速攻で溺れたのか!」
「魚に襲われる大冒険だったぞ!」
「数分で大冒険は出来ません!」
川から少し離れた岩場に、5軒の小さな家が並んでいた。
大きめの犬小屋サイズだな……
「で、何に襲われたんだ」
見た感じ普通だった。
「あれだ!」
奥に山かと思っていたシルエットが、動く。
ノイテだった。
大型の牛が長閑に暗い中、草を食べていた。
マジか……
ま、でも近づいて来て踏まれたら終わりだな。
惣一郎は、苦無を出してノイテの頭を貫通させると、あっさり倒す。
「すっげ~」
「え、もう倒したの?」
「なになに? 何かあった?」
近くの大きな岩の上から、数人のホルビット族が顔を出してきた。
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