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第十一章
九話 【救助に来ました!】
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海と違い、波が高くないので揺れもない。
湖の船は惣一郎の心配をよそに、快適そのものだった。
対岸までは半日程で着くそうで、のんびり遊覧船気分で、はしゃぐベンゾウとクロだった。
頼むから、もう落ちるなよ。
「なるほど…… 陣唱紙は魔導書みたいな物か」
「工程はほぼ同じですが、全く違います。魔導書の先に在るのが陣唱紙なのです」
「そうなの? 魔導書作る方が凄いと思ってたけど……」
「ある程度、一つの魔法を使い続けて理解が進むと、魔導書は割と多くの人が作れます。ですが陣唱紙は、その理解が進んだ人の記憶を切り分けると言うか…… 説明が難しいですが、封印術の様に思って頂けると」
「なるほどね~ さっぱり分からん」
「ええ、学者でも理解の及ばない世界です。コレを学会で発表した方は、正しく天才でしょう。ですが、その工程に問題があったそうで、学会を追放されたと聞きます」
人の居ない客室のベンチで、湖を眺めながらクオンと話していた惣一郎。
そこに現れた弁慶が、
「すまん旦那様…… 船長を殴ってしまった」
聞きたくありません……
夕方には対岸が見えてくる。
対岸の港も倉庫と家が並び、マリュウショの町程では無いが、町と言っても差支えない様な所であった。
船を降りると甲板で、何やら叫ぶ船長らしき人影が船乗りに押さえ付けられているのが見えたが、無視しよう……
「こちら側にギルドは無いので宿になりますが、どうしますか?」
「宿だとクロが泊まれないので、食事をしたら町を出て、テントで休もう」
だが、ベンゾウが顔を横に振る。
美味い店が無いと言う事かな。
残念だがそのまま町を出て、テントで夕飯になりそうだ。
町を出ると林が広がり、国境の街までの道が伸びていた。
暗くなって来たので、この辺にしよう。
テントの中でクオンのベッドを出し、仕切りを置くと驚かれる。
「これじゃ宿など要らない訳ですね」
夕飯はカレーうどん。
残ったカレーを蕎麦つゆで薄め片栗粉でとろみをつける。
白いローブに飛ばしまくるクオンだったが、箸が止まらない。
後でクリーンで綺麗にしてやろう。
余談だが、この世界で箸は普通に使われていた。
特にマナーはない様で、持ち方は様々だが、このクオンの箸の使い方は、今まで見た中で一番上手かった。
翌日から林の中を進み始め、二日経ってもまだ林の中だった……
相当な広さだ。
すると、ベンゾウの耳が動く。
「ご主人様、誰か戦ってる!」
クロを急がせると、道に冒険者の遺体が転がっていた。
ベンゾウが林の中でまだ戦っていると言うので、荷車を降りて走り出す。
3人の冒険者が、オークと交戦中だった。
「助けるぞ!」
理喪棍に引っ張られる様に飛び出す惣一郎は、オークの群れの中に突っ込んでいく。
幻腕でオークを殴り飛ばすと、ククリ刀を4つの円盤にして、冒険者を囲み結界を作る。
ベンゾウは端から閃光になり、バタバタとオークを斬り倒して行く。
遅れた弁慶が侃護斧でオークを潰して行く。
冒険者ギルドのギルドマスターは、その光景に、瞬きを忘れる。
「あ、あれは…… ハイオークですよ……」
惣一郎は3人の冒険者に薬草を出すが、1人は胸に大きな傷があり意識がなく、もう1人はすでに事切れていた。
最後の1人も出血が目立つ。
それ以上に奥歯をガチガチ鳴らし、完全に状況が分かってない様子だった。
「クオン、この人達を頼む!」
はっ!っと我に帰るクオンは、慌てて駆け寄り冒険者の手当てを始める。
「ベンゾウ! 弁慶! ここを頼むわ」
大分数を減らした弁慶が駆け寄り、
「旦那様は?」っと聞くと、
ベンゾウが急に現れ「私もアレと遊びたい!」っと視線を飛ばす。
「だ~め。俺がやるの!」
幻腕を実戦で試したい惣一郎が、理喪棍を片手に歩き出す。
前には、大きなハイオークの王がいた。
湖の船は惣一郎の心配をよそに、快適そのものだった。
対岸までは半日程で着くそうで、のんびり遊覧船気分で、はしゃぐベンゾウとクロだった。
頼むから、もう落ちるなよ。
「なるほど…… 陣唱紙は魔導書みたいな物か」
「工程はほぼ同じですが、全く違います。魔導書の先に在るのが陣唱紙なのです」
「そうなの? 魔導書作る方が凄いと思ってたけど……」
「ある程度、一つの魔法を使い続けて理解が進むと、魔導書は割と多くの人が作れます。ですが陣唱紙は、その理解が進んだ人の記憶を切り分けると言うか…… 説明が難しいですが、封印術の様に思って頂けると」
「なるほどね~ さっぱり分からん」
「ええ、学者でも理解の及ばない世界です。コレを学会で発表した方は、正しく天才でしょう。ですが、その工程に問題があったそうで、学会を追放されたと聞きます」
人の居ない客室のベンチで、湖を眺めながらクオンと話していた惣一郎。
そこに現れた弁慶が、
「すまん旦那様…… 船長を殴ってしまった」
聞きたくありません……
夕方には対岸が見えてくる。
対岸の港も倉庫と家が並び、マリュウショの町程では無いが、町と言っても差支えない様な所であった。
船を降りると甲板で、何やら叫ぶ船長らしき人影が船乗りに押さえ付けられているのが見えたが、無視しよう……
「こちら側にギルドは無いので宿になりますが、どうしますか?」
「宿だとクロが泊まれないので、食事をしたら町を出て、テントで休もう」
だが、ベンゾウが顔を横に振る。
美味い店が無いと言う事かな。
残念だがそのまま町を出て、テントで夕飯になりそうだ。
町を出ると林が広がり、国境の街までの道が伸びていた。
暗くなって来たので、この辺にしよう。
テントの中でクオンのベッドを出し、仕切りを置くと驚かれる。
「これじゃ宿など要らない訳ですね」
夕飯はカレーうどん。
残ったカレーを蕎麦つゆで薄め片栗粉でとろみをつける。
白いローブに飛ばしまくるクオンだったが、箸が止まらない。
後でクリーンで綺麗にしてやろう。
余談だが、この世界で箸は普通に使われていた。
特にマナーはない様で、持ち方は様々だが、このクオンの箸の使い方は、今まで見た中で一番上手かった。
翌日から林の中を進み始め、二日経ってもまだ林の中だった……
相当な広さだ。
すると、ベンゾウの耳が動く。
「ご主人様、誰か戦ってる!」
クロを急がせると、道に冒険者の遺体が転がっていた。
ベンゾウが林の中でまだ戦っていると言うので、荷車を降りて走り出す。
3人の冒険者が、オークと交戦中だった。
「助けるぞ!」
理喪棍に引っ張られる様に飛び出す惣一郎は、オークの群れの中に突っ込んでいく。
幻腕でオークを殴り飛ばすと、ククリ刀を4つの円盤にして、冒険者を囲み結界を作る。
ベンゾウは端から閃光になり、バタバタとオークを斬り倒して行く。
遅れた弁慶が侃護斧でオークを潰して行く。
冒険者ギルドのギルドマスターは、その光景に、瞬きを忘れる。
「あ、あれは…… ハイオークですよ……」
惣一郎は3人の冒険者に薬草を出すが、1人は胸に大きな傷があり意識がなく、もう1人はすでに事切れていた。
最後の1人も出血が目立つ。
それ以上に奥歯をガチガチ鳴らし、完全に状況が分かってない様子だった。
「クオン、この人達を頼む!」
はっ!っと我に帰るクオンは、慌てて駆け寄り冒険者の手当てを始める。
「ベンゾウ! 弁慶! ここを頼むわ」
大分数を減らした弁慶が駆け寄り、
「旦那様は?」っと聞くと、
ベンゾウが急に現れ「私もアレと遊びたい!」っと視線を飛ばす。
「だ~め。俺がやるの!」
幻腕を実戦で試したい惣一郎が、理喪棍を片手に歩き出す。
前には、大きなハイオークの王がいた。
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