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第十章
十五話 【魔法学者】
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惣一郎は中庭の瓦礫を片っ端から収納し運ぶ。
ベンゾウと弁慶は、惣一郎が出したスコップでサクサクと地面を平す。
3人とも無言だった……
弁慶が大きな転圧ローラーで地面を固め、惣一郎がウォーターで水を撒き、ついでにとベンゾウが、芝の種を蒔く。
「大分片付きましたね~」
ヒロヨシーが現れた。
元々ベリルがやった中庭を、なぜ俺が……
惣一郎が正当な賃金を要求しようとすると、
「惣一郎殿、魔法学者の方がお見えになりました」
あら、早いんでないの?
「初めまして[ミズイラ]と申します」
学者と言うのが似合わない若い女性だった。
「初めまして、庭師の惣一郎です」
惣一郎はテントの中へ案内して、お茶を勧める。
「魔法学者をお探しと聞いたのですが」
「ええ、古代魔法について知りたい事がありまして、先日の襲撃事件はご存じですか?」
「はい、ちょうど王都に居たもので……」
「二度目は、身体中に護符の様な物を仕込んでましてね」
「ゴフ? ゴフとは?」
「それを知りたかったのですが、爆発する札の様な何かが書かれている紙を、何枚も身体に貼っていたのです」
「陣唱紙の事かしら?」
「じんしょうし?」
「ええ、紙に魔法の陣と詠唱を書き込み別のきっかけで発動させる物です」
「ええ、きっとそれですね!」
「陣唱紙は、書き込む時に魔力を込めるので、使う時は魔力を使わなくて済むのが特徴なんです」
「なるほど、ストックして置けるのか」
「はい、ただ誰でも作れると言った物ではなく、魔導具の類いと思って頂けると……」
「ベリルの様に、転生魔法が使える奴なら毎度、人間爆弾が出来るのか…… 益々厄介だな~」
「転生魔法! 古代魔法を使える人がいるのですか?」
顔色を変える学者だった。
研究してる古代魔法を使う奴がいれば興奮もするだろう。
だがベリルはそれを自ら現代に作ったとされる。
学者並みの知識があったのか……
それから古代魔法について色々と話を聞き、ヒロヨシーと帰っていった。
陣唱紙……
以前魔法学会で問題になった物だそうで、詳しくは公にされなかったそうだが、禁忌とされ姿を消した魔導具との事……
ミズイラの話では、古代魔法が残っていないのは、その発動に必要な媒介に問題が多く、陣唱紙同様、禁忌とされたからじゃないかとの事であった。
「旦那様、お茶のお代わりは?」
「ああ、ありがと」
惣一郎は自然と左腕を使おうとして、先がない事を思い出す。
感覚はあるんだがな……
幻肢と呼ばれる物だろう。
交通事故などで失ったはずの手足に、痛みが残る幻肢痛に悩む人も少なく無いと言う。
惣一郎も痛みこそ無いが、無い腕の感覚がはっきりと分かるのだった。
すると湯呑みが倒れお茶がこぼれる。
「すぐ拭きます!」
っと弁慶が雑巾を取りに行く。
惣一郎は固まっていた。
無い腕で取ろうとして倒した様に思えたからだ。
惣一郎はそれから夢中でテーブルの上に立てた鉛筆を失った左腕で掴むイメージを繰り返す。
ベンゾウは鉛筆を睨む惣一郎を、可哀想な子を見る目で見ていた……
ベンゾウと弁慶は、惣一郎が出したスコップでサクサクと地面を平す。
3人とも無言だった……
弁慶が大きな転圧ローラーで地面を固め、惣一郎がウォーターで水を撒き、ついでにとベンゾウが、芝の種を蒔く。
「大分片付きましたね~」
ヒロヨシーが現れた。
元々ベリルがやった中庭を、なぜ俺が……
惣一郎が正当な賃金を要求しようとすると、
「惣一郎殿、魔法学者の方がお見えになりました」
あら、早いんでないの?
「初めまして[ミズイラ]と申します」
学者と言うのが似合わない若い女性だった。
「初めまして、庭師の惣一郎です」
惣一郎はテントの中へ案内して、お茶を勧める。
「魔法学者をお探しと聞いたのですが」
「ええ、古代魔法について知りたい事がありまして、先日の襲撃事件はご存じですか?」
「はい、ちょうど王都に居たもので……」
「二度目は、身体中に護符の様な物を仕込んでましてね」
「ゴフ? ゴフとは?」
「それを知りたかったのですが、爆発する札の様な何かが書かれている紙を、何枚も身体に貼っていたのです」
「陣唱紙の事かしら?」
「じんしょうし?」
「ええ、紙に魔法の陣と詠唱を書き込み別のきっかけで発動させる物です」
「ええ、きっとそれですね!」
「陣唱紙は、書き込む時に魔力を込めるので、使う時は魔力を使わなくて済むのが特徴なんです」
「なるほど、ストックして置けるのか」
「はい、ただ誰でも作れると言った物ではなく、魔導具の類いと思って頂けると……」
「ベリルの様に、転生魔法が使える奴なら毎度、人間爆弾が出来るのか…… 益々厄介だな~」
「転生魔法! 古代魔法を使える人がいるのですか?」
顔色を変える学者だった。
研究してる古代魔法を使う奴がいれば興奮もするだろう。
だがベリルはそれを自ら現代に作ったとされる。
学者並みの知識があったのか……
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陣唱紙……
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すると湯呑みが倒れお茶がこぼれる。
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惣一郎は固まっていた。
無い腕で取ろうとして倒した様に思えたからだ。
惣一郎はそれから夢中でテーブルの上に立てた鉛筆を失った左腕で掴むイメージを繰り返す。
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