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第十章
十二話 【失った物】
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惣一郎が目を覚ます。
「知らない、てんじょううぅ!「ご主人様!」」
抱きつくベンゾウ!
「いったたたたぁ!」
痛がる惣一郎。
「だんだだまーーーーー!」
泣き叫ぶ弁慶。
そしてクロは、寝ていた……
クロはテントの中で無事だった様だ。
「目ヤニが! どの位寝てた?」
どうやらギルドの治癒室で三日も寝ていた様だ。
職員が慌ててギルマスを呼びに行く。
「惣一郎殿!」
ヒロヨシーも無事だった様だ。
ベリルの爆発で亡くなったのは、その場に居た騎士4名、貴族3名、大臣1名、元老院3名。
むしろ助かった方を数える方が早かった。
惣一郎の飛ばした盾は6個しか無かったのだ。
そしてベリルも、遺体の一部が見つかっている。
だが最後の言葉が、また会おうだ。
きっと生きているだろう、違う姿で。
惣一郎は起きあがろうとするが、腹に力が入らない。
まだ回復には時間がかかりそうだ……
「惣一郎殿、怪我をした惣一郎殿を運んでいたら急にこれが現れて」
刺さっていた苦無だった。
迷彩柄のシートを貼ったお陰で、庭など緑の多い場所では見えないが、建物の中では見えたのだろう。
そこで惣一郎は驚き、目を疑う!
ない、ない! 長年連れ添った左腕が!
感覚はあるのに、肘上から先がない……
惣一郎も流石にこれには血の気が引いた。
ベンゾウが泣きそうな顔で驚く惣一郎を見ている。
弁慶は泣きっぱなしだ。
理由はこれか……
そのまま意識をなくす……
次に起きると目の前に、アロマで世話になった宰相さんがいた。
ワーテイズと交渉に来たのだろう。
「惣一郎殿…… 心配せず今はゆっくり休まられよ……」
心配そうな顔は宰相さんの方だった。
交渉は無事、アロス側有利に進んでいるそうだ。
惣一郎の言葉が効いたのだろう。
左腕を見るが、何度見てもやはり無い。
なんとか起き上がれそうなので、テントに移ろうとすると、弁慶が軽々とお姫様抱っこをしてくれる。
恥ずかしい……
左側が酷く痛む。
テントに戻るとベッドに横になり、アイテムボックスから食い物を出して、みんなで食べ始める。
まずは食わねば、治るものも治らん!
食後に惣一郎は回復薬をとり出し飲むと、痛みが大分楽になる。
肩と脇腹の傷が塞がった様だ。
薬草の何倍も効果はあるな……
きっとエリクサーを飲めば、左腕も生えて来るだろうが…… 今じゃ無い。
腕よりもっと大切なものがある。
すると、ヒロヨシーが庭から声をかけて来る。
弁慶が中へ案内すると、
「惣一郎殿、先程ベリルの城へ向かったケンブルから連絡が入りまして、分かった事が!」
調査に向かったケンブルが調べた所、隠し部屋を見つけ、そこには古文書や古の魔法が書かれた本などが多数あったとの事。
少しは奴の手の内がわかるだろう。
分かった事は……
古城にあった転移魔法陣は、もう使えないそうだ。
だが、本に書かれた古い魔法に転移に似た魔法があり、どうやらベリルはそれを元に魔法を作った様だ。
[転生魔法]肉体を捨て、他の生き物に転生出来る魔法。
ただ移ると、元の魂と干渉し人格が分裂するので、死んですぐの遺体に転生すると言う物らしい。
ベリルが使っていた魔法で間違い無いな。
そして魔石を砕き欠けらを遺体に仕込んで置けば、離れていても転生出来るとまで書いてあったそうだ。
指向性か! そんな使い方まで……
それじゃ捕まえるのは不可能に近い。
転生すればその肉体の力を使えると……
これも確認済みだ。
それと、古文書の方にはベリルについて書かれていたと言う。
厄災を封印する為に犠牲となった魔導士ベリル。
どうやらそのベリルから名を貰ったのが、子孫のベリルなのだろう。
復讐か…… 自ら犠牲になった訳じゃなさそうだな。
だが復讐の相手は誰だ?
王族なら終わっているはずだが……
まだ解らない事だらけの様だ。
惣一郎はヒロヨシーに、ベリルよりその一族について調べる様に指示する。
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