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第九章

十一話 【無慈悲】

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夕方には雨はあがり、赤い空に星が出始める。

その日はそのまま休む事にして、夕食の献立を考える惣一郎。

ノートはあれからずっと黙っていた。

惣一郎はハンバーグなど、子供が好きそうなメニューを作り、テーブルに並べる。

「貴方、冒険者なんて辞めて、私の専属コックになりなさい!」

食べながらも生意気なお嬢様。

ハンバーグが、よほど気に入った様だ。

食後、ベンゾウと弁慶にリンゼを任せ、風呂に入らせる。

喜ばせようと、惣一郎は風呂上がりに食べさせようと、チョコバナナサンデーを3つ作り始めると、

「惣一郎様、お嬢様に普通の生活をさせる為に、具体的にどの様にお力をお貸し頂けるのでしょうか?」

重い口を開くノートに、惣一郎はアイスを重ねながら、

「これから考えるさ!」

と、行き当たりばったりな答えだった。

風呂からは楽しげな声が聞こえていた。





翌朝、林の中を北に進む。

すっかり元気になったリンゼは、荷車の先頭で楽しげに、ベンゾウとクロに進行を指示している。

前にも感じたが、ベンゾウは子供の面倒見が良かった。



林の中を進むとベンゾウの顔色が一気に変わり、辺りを警戒し出す。

クロも気付き、ゆっくりと荷車が止まると先に人影が見える。

木の影から一人、二人と増えていく人影は、手に武器を持ち、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、惣一郎達を囲み出す。

「へへへ、こりゃ当たりかもな~!」

リンゼとノートを見ての発言か、盗賊の一人がそう言うと、口々に下品な言葉が続く。

「おいおい、女は久しぶりだぜ!」

「こっちはデカいが、いい胸だ!」

すると後から盗賊の頭だろう一際目立つ男が現れる。

「男は殺せ、女は俺様が味見してからだ!」

惣一郎達は誰も動かない。

クロもきちんとお座りして、あくびをしている。

徐々に増えて行く汚い盗賊達は、30人近くいた。

すると弁慶がゆっくり荷車を降りると、ベンゾウもクロの前に出る。

幼い少女は気丈に見えたが、足は震えていた。

惣一郎は座ったまま、

「盗賊の頭は殺すなよ」

っと、声に出す。

すると簡単に戦闘が始まる。

ベンゾウは閃光になり、前の四人を素早く斬り倒す。

弁慶はポーチから侃護斧を出すと、腕の筋肉が盛り上がり、一振りで二人をミンチにする。

ノートはすぐにリンゼの目を覆い隠す。

惣一郎は何もしない。

盗賊の慌てる悲鳴が林の中に響く。

ベンゾウは盗賊達の間をすり抜けながら、腕を落とし、足を落とし、首を落として行く。

弁慶は後ろで、盗賊の攻撃を避けもせず、左手で掴んでは振り回し、右手の侃護斧で潰しては、踏んで歩く。

残った盗賊も逃げると考えつく前に、武器を振り上げる前に、次々と数を減らして行く。

あっという間に盗賊の頭は、一人っきりになっていた。

奥歯をガチガチ鳴らしながら、震えた声で、

「な、な、なんだ、なんだよ!」

と、振り絞った言葉がコレだった。

惣一郎はゆっくり立ち上がり、盗賊の頭に話しかける。

すでに苦無が2本、浮いていた。

「近くにアジトでも、あるのかな?」

盗賊の頭は、惣一郎の言葉が理解出来ない。

シュっと肩を貫通する苦無。

武器を落とし、悲鳴を上げる。

「まだ仲間がいるのか?」

二回目は理解出来た。

だが、返事が遅かった。

シュ!っと逆の肩にも穴が開く。

膝を突き、声を上げる。

「案内してくれるかな?」

頭はコクコクと何度も頷く。

惣一郎はベンゾウと弁慶に盗賊の首を回収しておく様に頼むと、頭を連れて一人林の奥へ入って行く。

ノートは言葉を失い、少女を抱えていた。





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