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第九章
十話 【雨】
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倒したベルフを収納しながら、執事の話を聞いていた。
要するに!
アロス国の王位継承争いで負けた兄エリオット派だったクライス家は、先日の件でお取潰し。
当主は打首、当主の妻も余罪が発覚し死罪。
で、このお嬢ちゃんは密かに交流を持ってたワーテイズ側の貴族の家に嫁に行く事で、生き延びようとしていた。
俺がした事の波紋がこの子に……
いや、同情はするが兄を傀儡していた側の人間だし、俺に責任はないか……
だが、この子にも関係はない……
一応は被害者か。
「お嬢様は何もご存じ無い状況でして、まだクライス家があるものと…… その為あの様な態度を、申し訳ありません。ですがあの歳で他国に嫁ぐ覚悟をなされた強いお方なのです。どうかこの先の[コマレークの街]まで護衛をお願い出来ないでしょうか?」
「仲間に相談してみます」
惣一郎は少し離れた所で、ベンゾウと弁慶に相談する。
一応弁慶は、兄に殺されかけたし確認はしておかないと……
……と言う訳なんだが。
「ご主人様、温泉は?」
それな~
「あたいは構わんぞ」
懐広いね~
ワン!(肉!)
そっか、クロも優しいな~
よし断ろう!
執事のノートに事情を話し断るが、惣一郎はこの先の[キリの村]までなら連れて行くと話す。
選択肢の無いノートは深々と頭を下げて礼を言うと、馬車から荷物を持ち出し、意識のない少女を抱え荷車に乗り込む。
ようやく荷車は、北へ進み始める。
少し進むとポツポツと雨が降り出す。
雨は少女を起こし、次第に雨脚を強める。
林の中で惣一郎はテントを出し、中へ避難する。
その光景に驚くふたりは、中へ入り更に驚く。
全員にクリーンをかけ、惣一郎は黙って食事の準備を進める。
言葉を失うふたりは言われるがまま、テーブルに着き、出されたお茶を飲んでいた。
ふたりに食事を出す。
他のみんなはまだ、食べたばかりで……
ベンゾウにも出す。
馬車で走りっぱなしだったからか、食べたらまたすぐ寝る少女。
よく育ちそうだ。
惣一郎はノートに話しかける。
「嫁ぐのは本人の希望なのか?」
「いえ[サルビン家]からの申し出です」
残念そうな言いっぷりだな~
「何かあるのか?」
「その、余りいい噂が……」
なるほど。
「他に選択肢は無かったのか?」
「身寄りのない9歳の少女にどの様な?」
………
「失礼しました…… 私もこの歳です。彼女が大人になるまでは生きられません」
「何処かでふたり、ひっそり暮らす手もあるのかと思っただけだ。それが貴族の生き方だって言うなら俺には関係ないしお好きに! 失礼、元貴族だったな」
「冒険者風情が知った風な事を!」
惣一郎はノートの目の前にコインを投げ出す。
「コレは!!」
「エリオットを捕まえたのも、計画を阻止したのも、殺したのも俺だ」
「では、貴方がジビカガイライ!」
「ああ、だが俺や泥舟に乗ったあんたには関係があっても、子供には関係ない話だろ」
「あの子が普通を望むなら手を貸すが、貴族であり続けるならキリの村までだ」
………
「9歳の子に決断を押し付けるなよ、あんたが決めろ」
………
雨脚は更に強くなる。
要するに!
アロス国の王位継承争いで負けた兄エリオット派だったクライス家は、先日の件でお取潰し。
当主は打首、当主の妻も余罪が発覚し死罪。
で、このお嬢ちゃんは密かに交流を持ってたワーテイズ側の貴族の家に嫁に行く事で、生き延びようとしていた。
俺がした事の波紋がこの子に……
いや、同情はするが兄を傀儡していた側の人間だし、俺に責任はないか……
だが、この子にも関係はない……
一応は被害者か。
「お嬢様は何もご存じ無い状況でして、まだクライス家があるものと…… その為あの様な態度を、申し訳ありません。ですがあの歳で他国に嫁ぐ覚悟をなされた強いお方なのです。どうかこの先の[コマレークの街]まで護衛をお願い出来ないでしょうか?」
「仲間に相談してみます」
惣一郎は少し離れた所で、ベンゾウと弁慶に相談する。
一応弁慶は、兄に殺されかけたし確認はしておかないと……
……と言う訳なんだが。
「ご主人様、温泉は?」
それな~
「あたいは構わんぞ」
懐広いね~
ワン!(肉!)
そっか、クロも優しいな~
よし断ろう!
執事のノートに事情を話し断るが、惣一郎はこの先の[キリの村]までなら連れて行くと話す。
選択肢の無いノートは深々と頭を下げて礼を言うと、馬車から荷物を持ち出し、意識のない少女を抱え荷車に乗り込む。
ようやく荷車は、北へ進み始める。
少し進むとポツポツと雨が降り出す。
雨は少女を起こし、次第に雨脚を強める。
林の中で惣一郎はテントを出し、中へ避難する。
その光景に驚くふたりは、中へ入り更に驚く。
全員にクリーンをかけ、惣一郎は黙って食事の準備を進める。
言葉を失うふたりは言われるがまま、テーブルに着き、出されたお茶を飲んでいた。
ふたりに食事を出す。
他のみんなはまだ、食べたばかりで……
ベンゾウにも出す。
馬車で走りっぱなしだったからか、食べたらまたすぐ寝る少女。
よく育ちそうだ。
惣一郎はノートに話しかける。
「嫁ぐのは本人の希望なのか?」
「いえ[サルビン家]からの申し出です」
残念そうな言いっぷりだな~
「何かあるのか?」
「その、余りいい噂が……」
なるほど。
「他に選択肢は無かったのか?」
「身寄りのない9歳の少女にどの様な?」
………
「失礼しました…… 私もこの歳です。彼女が大人になるまでは生きられません」
「何処かでふたり、ひっそり暮らす手もあるのかと思っただけだ。それが貴族の生き方だって言うなら俺には関係ないしお好きに! 失礼、元貴族だったな」
「冒険者風情が知った風な事を!」
惣一郎はノートの目の前にコインを投げ出す。
「コレは!!」
「エリオットを捕まえたのも、計画を阻止したのも、殺したのも俺だ」
「では、貴方がジビカガイライ!」
「ああ、だが俺や泥舟に乗ったあんたには関係があっても、子供には関係ない話だろ」
「あの子が普通を望むなら手を貸すが、貴族であり続けるならキリの村までだ」
………
「9歳の子に決断を押し付けるなよ、あんたが決めろ」
………
雨脚は更に強くなる。
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