異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

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第八章

六話 【巻き込まれ体質】

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今思えばギルドで、領主と関わるなと情報をくれた冒険者も怪しく思える。

もう面倒臭いから、先に領主の方に遺体を届けた方がいいか!っと惣一郎は思った。



翌朝、朝食をみんなで摂り終えると惣一郎はカマナに、父親と話し合う気はあるか尋ねる。

説得する気も無いならこの町に、居続ける意味も無いだろう。

何処か遠くでふたりで生きて行くか、父親を説得して認めてもらうかの二択を迫る。

いや別れるっていう選択もあるか!

いやいや、領主を亡き者にしギルドを……

「話し合ってみます! もう一度!」

「それは一番、面倒く… 危険な茨の道だぞ!」

「「 はい! 」」

…………

惣一郎は、領主の家へ向かう事にする……





領主の家は町から離れた場所にある。

北に半日行った所に農園があり、その中に大きな屋敷が建っており、そこに領主が居るとの事。

クロの荷車に乗り、半日とかからず農園に着く。

荷車に乗り慣れないふたりは着いて早々、胃袋を空にする。

ワン!(道が悪いだけだぞ)

端が見えない大きな農園を、石を組み上げた壁がぐるっと囲っている。

カマナに気付く門番が慌てて「お嬢様!」っと門を開ける。

ブドウなのだろうか? まだ実をつけて無い背丈程の木が奥まで続いている。

しばらく進むと農夫達の家が並び、奥に柵で囲まれたお屋敷が現れる。

手入れの行き届いた庭に入ると、大きな玄関が開き、

「カマナお嬢様! やっとお戻りに!」

っと、白髪の執事が慌てて、他のメイドに主人に伝える様、指示を飛ばす。

遅れて現れた、領主だろう太った男が、

「おぉ~ カマナ! 良く顔を見せておくれ!」

と近づき、歩みを止める。

「なぜ、魔族がここに! カマナ、まだ騙されているのかい?」

「お父様、いい加減にして! ロドはいい人よ! お願いだから話を聞いて!」

そこからしばらく行き違う、親子の会話が続く。

ベンゾウは飽き、庭でクロと遊び初め、惣一郎は執事の男と農園の話に夢中になっていた。

「そんな男か女か分からん奴に、お前を守る事などできん! できると言うならこの[ファミマ]を倒して見せろ! そしたら話を聞いてやる!」

奥からコンビニの様な男が…… いや、コンビニの名前の様な男が現れる。

領主の護衛だろうファミマは、着物の様な前合わせの服に、腰に巻かれた上着に2本の剣が下げられ、侍の様な風体であった。

「ファミマ! そこの魔族を殺してしまえ!」

細い目の片方を見開き、長い髪をかき上げて縛り出す。

「やめてお父様! この国にファミマに敵う者がいる訳ないでしょ!」

「頑張れ~ ロド~」

執事と話していた惣一郎が無責任に応援する。

「ちょっと惣一郎さん! お願いよ止めて!」

「え? 止めるの? 障害を乗り越えて掴み取るんじゃ無いの?」

「そうよ! この惣一郎さんが相手だわ!」

「はい?」

「アッハハハ! 誰だろうと一緒よ! ファミマに敵う者などおらんわ!」

「いやちょっと、何で俺が……」

「ハッハハ! もう臆したか!」

「はい?」

「俺が倒しても、ふたりの関係を認めてくれるのか?」

「あぁ? 話を聞くと言ったのだ!」

「あれ負けると?」

「いや、ファミマが負ける訳…… 良かろう! お前の様な者に、この剣神と言われたファミマが負ける訳が無いわ! 万が一でも勝てれば認めてやろう! あはははっは~」

惣一郎は呪羅流民を握り、鉄球を4つ地面に投げ置く。

「やってしまえ! その男も魔族のガキも!」

ロドもカマナも執事も、そして領主も息を呑み対決に目を見張る!

ベンゾウはまだクロと遊んでいた。

剣を抜き、両手に構える剣神が静かに間合いを詰める。

鉄球が浮かび回り、惣一郎は盾を出さずに杖だけを前に構え深く集中する。

次の瞬間! 間合いを一気に低い姿勢で、剣を振り詰め寄る剣神は、左上から顎に鉄球を喰らい、振り切った剣先は鉄球が折っていた。

ふらつきながら、半歩下がり耐えている剣神は飛んで来る鉄球を残った剣で叩き落とそうとするが、こちらも剣を折られ、腹へと鉄球をめり込ませる。

そこからは、倒れる事も出来ずボコボコに鉄球の餌食となり、剣神が折れた剣を手放すと鉄球も動きを止める。

誰もが言葉を失い、ただ見ていた。

ベンゾウ以外は……

「剣神って、随分と大袈裟な名前だな~ そこの銀髪の子の方が、よっぽどその名に相応しいけどな~」

傷一つ、いや一歩も動かなかった惣一郎が、皮肉を飛ばすが、誰の耳にも届いていないだろう。

いや、ベンゾウが嬉しそうに惣一郎を見ていた。





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