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第八章

一話 【ここは何処?】

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太陽が朝日と呼ばれなくなる頃、重い腰を上げ歩き出す。

取り敢えず、朝日の昇っていた東に向かって。

何も無い平原をしばらく進むと、やっと景色が変わり、緩やかな坂を降った先に集落が見え始める。

集落に人影も見え、話を聞こうと近付く。

前合わせの着物の様な膝上までの服に、ズボンを履き、帯びを巻いた男性が、こちらに気付く。

「おや、珍しい旅人ですかな?」

「こんにちは、ええ、そんなもんです。それでいきなりですいませんが、ここは何処なんですかね?」

「おやおや、迷子の旅人ですか! あっははは」

「ははは、ダンジョンを出たら知らない場所でして、ああ、そうそう、コレイって国から来まして!」

「コレイ? はて? 聞かない国ですな~ ここは[アスロ]って国の名も無い集落ですが、コレイ…… ん~ 北の[アマルの町]に行けば知ってる人も居るかもしれないですが」

「北か…… ありがとうございます」

「いえいえ、お役に立てませんで」

数軒しか無い集落をそのまま通過して、アマルに向かう。

クロの荷車に乗って、北を目指すと林が現れ、数匹のオオカミが遠巻きにこちらを警戒していた。

陽が傾き出す頃に林を抜け、明かりの点き始めた町が見えた。

アマルについた時には、すっかり暗くなっていた。

木の板を張られた外壁に囲まれた町には、冒険者カードで簡単に入れ、取り敢えず一安心。

何処か和を感じる町並みの中、通りにまではみ出したテーブルに、美味そうな料理を並べ、酒を楽しむ人で賑わう酒場に入る。

「いらっしゃい! そこのテーブル今片付けるのでどうぞ」

食べ散らかされた真四角の赤いテーブルに座り待つと、すぐ店員が片しに来て、注文を取る。

「取り敢えず酒と、適当に5人前の料理を」

あいよ!っと元気な声の看板娘だろう店員が、厨房に戻っていく。

先に酒を持って来る店員が、相席の許可を取る。

快く了解して、ベンゾウを横に座らせ席を二つ空けると、冒険者風の男女が座る。

「悪いね、一緒させてもらうよ!」

「ええ、どうぞ遠慮なく!」

「犬神連れてるとは、珍しいね~ 冒険者かい?」

「ええ、コレイって国から飛ばされて来た、右も左も分からない冒険者です」

そこに丁度、惣一郎達の料理が運ばれて来たので、

「こちらの方にも酒と料理を、払いはこちらに!」

「え! 良いのかい?」

「はい、今言った様に来たばかりでして情報が欲しい! 払いは持つので好きな物を頼んで下さい」

「そりゃ助かる、最近景気も良くないからね~ なんでも聞いてくれ!」

惣一郎にとっても渡に船であった。

今出会ったふたり[ロド]という男と[カマナ]と言う女性のふたりの冒険者は、口数の少ないカマナに対して、酒が入るほど良く喋るロドのふたりだけで、この町近辺を拠点に活動しているそうだ。

そしてここは、惣一郎が最初に飛ばされて来た、マイセルージ大陸の更に北にある[セキヌス大陸]の西にあるアスロ国のアマルの町と、随分遠くに飛ばされた様だった。

そりゃ遠くに行きたいとは思ったが……

アスロ国にもダンジョンはあるそうで、すんなり信じてくれたふたりは「そりゃ災難だったな~」っと色々と教えてくれた。

意外と美味い酒と料理に、惣一郎もロドと同様に良い気分になっており、すっかり意気投合していた。

賑やかで楽しい食事を突然、料理ぶち撒けて置かれたテーブルの上のグルピーの頭がぶち壊す。

「ロド! テメ~ 昼間は良くもなすりつけてくれたな!」

店内を静まり返えらせ現れた冒険者風の男は、怒りの形相でロドを睨みつけていた。

赤い顔のロドもヤバイと今更遅いが、手で顔を隠す。

突然現れたロドに恨みのある男は、鉄球を抱えたまま店の外まで飛ばされる。

呪羅流眠を構えた惣一郎が、立っており、

「折角の料理を台無しにしやがって!」

っとこちらもすでに出来上がっていた……

言い放った相手は道ですでに意識もなく、聞いてもいない。

ふわふわ戻る鉄球。

静まり返った店内。

はっ!と我に帰る惣一郎はここで、一度言ってみたかったセリフを口にする。

「すまん! 今日の払いは俺が全部持つ! 気を取り直して好きなだけ飲んでくれ!」

「「「「 おおおおおお~ 」」」」

その場にいた客全てが、コップを掲げて歓喜の声を上げた。

なぜかベンゾウも、コップを上げ喜ぶ!

ベンゾウは払った事がないでしょ……




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