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第六章
二十六話 【ブルジョワ・モモ】
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下着姿でいつまでも喜ぶベンゾウとモモは、惣一郎がくれた他のデザインの物も試しては、大きな鏡の前で自分にうっとりとしていた。
風呂から上がった惣一郎は、ふたりを無視する事に専念し、ベッドに横になる。
翌朝、両脇で寝ている下着姿のふたりを起こさない様に起き、朝食の準備を始める。
精神衛生上良くない環境で食事を終えると、今日はダンジョン産のアイテムを探しに街に出ようと、下着姿のまま出かけようとするふたりを必死で止め、服を着せてから倉庫を出る。
街で情報を聞きながら、高級な物を扱う店にたどり着く。
入り口に居る鎧を着込んだ屈強なガードマンが、惣一郎達の入店を品定めし、中へ入る事を許されると、小綺麗な商人が店内を案内する。
店内は想像とは違い、こじんまりとした狭い部屋にいくつか商品が展示されており、奥に商談スペースがあるだけだった。
展示された商品は、ダンジョン産の武器がほとんどで、どれも妖しいオーラを放っている様に思えた。
冷たい氷の様な短剣や、持手部分から刃まで真っ黒な槍など、一つ一つ商人に説明されながら見て行く惣一郎の顔は、青かった。
どれもベンゾウの小刀に劣る武器は、全て億を超える金額であった。
「如何でしょう? こちらなど相手に毒を付与するサーベルになっておりますが、金額もお安く17,600ギーで御座います」
「あはは素敵ですね…… あの~ 武器以外、薬の様な物はありますか?」
「そうですね…… 今あるのは深い傷も一瞬で治る薬が一つございますが」
回復薬か!
この世界では薬草しか知らなかったが、あるのか、ちゃんとゲームの様な回復薬が……
「お値段は、3.200ギーとお求めやすくなっておりますが」
全然お求め安く無かった……
だが、重傷を負った時を考えれば、高くはないのだろう……
惣一郎達は、店員に礼を言い何も買わずに店を出た。
ダンジョン産おそるべし……
「なぁモモ、強くなるって言うその薬はいくらで買ったんだ?」
「はい……その……家を出る時に持ち出したお金……ほとんど使いました……確か……34,000ギーだったかと……」
なっ、3億!!
え、何者なの? 3億以上も持って出る家って!
「あはは~ お金持ちだったのね……」
「あ…いえ……ごめんなさい……」
その後、黙り込むモモに惣一郎も、それ以上聞くのをやめた。
ギルドに顔を出し、情報を聞こうとギルマスを訪ねるが、留守との事。
ギルド内は相変わらず暇な冒険者が多く、陽も高いうちから酒を飲んでいる。
掲示板には、ほとんど依頼が無く、ダンジョンの買取がメインの街なのだろう……
「おい、ジビカガイライだ……ヒソヒソ……目を合わすな……ヒソヒソ」
また始まった…… 退散しますか。
惣一郎がギルドを出ようとすると、
「おいおい、ビビってんじゃね~よ! 1000人斬りなんて嘘に決まってるじゃねぇか!」
っと、正解を出す冒険者が声を荒げる。
「大方、ビビらせようと自分で流した噂かも知れねぇぜ!」
それは不正解。
ダンジョン産だろう腰の武器はオーラが違っている。
その男は、それだけでベテラン冒険者だと言っていた。
若そうだが、ガタイも良く長めの髪を後ろで縛る男は、
「オイ、おっさん! 女連れでダンジョンに入ろうとは、少し舐め過ぎじゃねぇか?」
完全に絡んで来ているな…… ハァ……
「ソウデスネ、キヲツケマス」
惣一郎は、そのままギルドを出ようすると目の前に、ガシャン!っと椅子が飛んで来る。
「おい、舐めてるのか?」
血管を額に浮き彫りにする男は、腰の剣に手を伸ばし惣一郎を睨み付ける。
周りの冒険者も、噂を確認したくて誰も止めやしない。
ベンゾウは隣で興味無さそうにあくびをし、モモは困ってオドオドしていた。
ため息を吐く惣一郎は、
「イス、弁償しろよな……」
っと覇気の無い声で返事をすると、冒険者の男と向き合い、手にはすでに呪羅流眠が握られていた。
ざわつく周りは、男が剣を抜くと一気に静まり返る。
怒りながらも、抜いた剣を構える冒険者は、手練れと思わせる雰囲気で惣一郎に、
「かかって来いよ、遊んでやるぜ!」
っと言うので、遠慮なく。
杖を構えるでもなく、ただ手に持った状態で惣一郎の鉄球は、男の腹に食い込んでいた。
男の表情が変わる前に、下から顎にもう一つが飛んでいき、のけぞる男の周りには、計4つの鉄球が浮いていた。
すでに白目で意識を無くす冒険者に容赦無く、次々と鉄球が襲い掛かる。
そのスピードは…… まぁ普通だった。
惣一郎なりに手加減はしているのだろう、ボコボコに襲う鉄球に男は倒れる事も出来ずに、軽く浮いていた。
鉄球が動きを止めると、顔の原型もわからない冒険者はゆっくりと倒れる。
ダンジョン産の剣は床で粉々になっていた。
風呂から上がった惣一郎は、ふたりを無視する事に専念し、ベッドに横になる。
翌朝、両脇で寝ている下着姿のふたりを起こさない様に起き、朝食の準備を始める。
精神衛生上良くない環境で食事を終えると、今日はダンジョン産のアイテムを探しに街に出ようと、下着姿のまま出かけようとするふたりを必死で止め、服を着せてから倉庫を出る。
街で情報を聞きながら、高級な物を扱う店にたどり着く。
入り口に居る鎧を着込んだ屈強なガードマンが、惣一郎達の入店を品定めし、中へ入る事を許されると、小綺麗な商人が店内を案内する。
店内は想像とは違い、こじんまりとした狭い部屋にいくつか商品が展示されており、奥に商談スペースがあるだけだった。
展示された商品は、ダンジョン産の武器がほとんどで、どれも妖しいオーラを放っている様に思えた。
冷たい氷の様な短剣や、持手部分から刃まで真っ黒な槍など、一つ一つ商人に説明されながら見て行く惣一郎の顔は、青かった。
どれもベンゾウの小刀に劣る武器は、全て億を超える金額であった。
「如何でしょう? こちらなど相手に毒を付与するサーベルになっておりますが、金額もお安く17,600ギーで御座います」
「あはは素敵ですね…… あの~ 武器以外、薬の様な物はありますか?」
「そうですね…… 今あるのは深い傷も一瞬で治る薬が一つございますが」
回復薬か!
この世界では薬草しか知らなかったが、あるのか、ちゃんとゲームの様な回復薬が……
「お値段は、3.200ギーとお求めやすくなっておりますが」
全然お求め安く無かった……
だが、重傷を負った時を考えれば、高くはないのだろう……
惣一郎達は、店員に礼を言い何も買わずに店を出た。
ダンジョン産おそるべし……
「なぁモモ、強くなるって言うその薬はいくらで買ったんだ?」
「はい……その……家を出る時に持ち出したお金……ほとんど使いました……確か……34,000ギーだったかと……」
なっ、3億!!
え、何者なの? 3億以上も持って出る家って!
「あはは~ お金持ちだったのね……」
「あ…いえ……ごめんなさい……」
その後、黙り込むモモに惣一郎も、それ以上聞くのをやめた。
ギルドに顔を出し、情報を聞こうとギルマスを訪ねるが、留守との事。
ギルド内は相変わらず暇な冒険者が多く、陽も高いうちから酒を飲んでいる。
掲示板には、ほとんど依頼が無く、ダンジョンの買取がメインの街なのだろう……
「おい、ジビカガイライだ……ヒソヒソ……目を合わすな……ヒソヒソ」
また始まった…… 退散しますか。
惣一郎がギルドを出ようとすると、
「おいおい、ビビってんじゃね~よ! 1000人斬りなんて嘘に決まってるじゃねぇか!」
っと、正解を出す冒険者が声を荒げる。
「大方、ビビらせようと自分で流した噂かも知れねぇぜ!」
それは不正解。
ダンジョン産だろう腰の武器はオーラが違っている。
その男は、それだけでベテラン冒険者だと言っていた。
若そうだが、ガタイも良く長めの髪を後ろで縛る男は、
「オイ、おっさん! 女連れでダンジョンに入ろうとは、少し舐め過ぎじゃねぇか?」
完全に絡んで来ているな…… ハァ……
「ソウデスネ、キヲツケマス」
惣一郎は、そのままギルドを出ようすると目の前に、ガシャン!っと椅子が飛んで来る。
「おい、舐めてるのか?」
血管を額に浮き彫りにする男は、腰の剣に手を伸ばし惣一郎を睨み付ける。
周りの冒険者も、噂を確認したくて誰も止めやしない。
ベンゾウは隣で興味無さそうにあくびをし、モモは困ってオドオドしていた。
ため息を吐く惣一郎は、
「イス、弁償しろよな……」
っと覇気の無い声で返事をすると、冒険者の男と向き合い、手にはすでに呪羅流眠が握られていた。
ざわつく周りは、男が剣を抜くと一気に静まり返る。
怒りながらも、抜いた剣を構える冒険者は、手練れと思わせる雰囲気で惣一郎に、
「かかって来いよ、遊んでやるぜ!」
っと言うので、遠慮なく。
杖を構えるでもなく、ただ手に持った状態で惣一郎の鉄球は、男の腹に食い込んでいた。
男の表情が変わる前に、下から顎にもう一つが飛んでいき、のけぞる男の周りには、計4つの鉄球が浮いていた。
すでに白目で意識を無くす冒険者に容赦無く、次々と鉄球が襲い掛かる。
そのスピードは…… まぁ普通だった。
惣一郎なりに手加減はしているのだろう、ボコボコに襲う鉄球に男は倒れる事も出来ずに、軽く浮いていた。
鉄球が動きを止めると、顔の原型もわからない冒険者はゆっくりと倒れる。
ダンジョン産の剣は床で粉々になっていた。
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