異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付

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第六章

十一話 【モモの覚悟】

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世界が回り立てないオオカミ男の周りには、四方を囲む様に苦無が浮いていた。

「チョイロへの荷物は?」

言葉が足りない様に感じた惣一郎のセリフに、オオカミ男は観念し素直に来た岩場を指差す。

男の両腕ごと体をぐるぐる巻きに縛り、引っ張ってアジトに向かう惣一郎。

ベンゾウも後を追う。

夢から覚めたモモがクロを見て『頼りない……』と心で思い、盗賊の馬に乗って惣一郎を追いかける。

残されたクロは大きくあくびをする。




盗賊達のアジトに着くと、食い散らかされた食料と木箱を積んだ荷車が二台置いてあり、他に仲間はいなさそうだった。

「襲った人達は?」

盗賊が答える前にベンゾウが「ご主人様」と惣一郎を呼ぶ。

岩の裏には積み上げられた人の骨があった。

惣一郎は静かに「食べたの?」っと聞く。

答えは求めていなかった。

手を合わせ、目を閉じる行動はモモ達にどう映るのだろう。

積荷を収納しクロの所へと、男を引っ張り戻る。

盗賊もこのままエルサムロへ連れて行く。

惣一郎より、この男を殺すに相応しい人がいるだろう。

戻るとベンゾウは、マジックバッグに盗賊達の貴重品を集め出し、遺体は捨て置く。

盗賊の頭だと言うニキ族の生き残りは、小刻みに震え素直に付いて来る。




小さな森は本当に小さく、中は生い茂った木で暗いが、入り口から出口が見える程の距離で、街へと続くトンネルの様だった。

森を抜けると大きな壁が聳え立ち、跳ね橋が堀を跨ぐ様に降りていた。

橋を渡り、門番に冒険者カードを見せ事情を説明する惣一郎。

守衛が数人集まり、盗賊の頭を引きずって行く。

「この辺りでも有名な盗賊だ、感謝するよ」

守衛の言葉に軽く手をあげ答える惣一郎は、モモの分のお金を払い街の中へと入る。



大きな街であった。

石造の二階から三階建ての建物が並び、整理された道がまっすぐ繁華街へと伸びていた。

まずはモモの服だな!っと服屋を探す。

あれからずっと黙っていたモモが、店に入るとお礼を言い服を選び始める。

まぁ、布を巻いただけじゃ、恥ずかしいわな……

ボタンが閉まらず胸元が大きく空いたシャツに、茶色のズボンと黒のロングブーツに着替えたモモは、安い服でも気品と胸を見せていた。

料金を払い店員に、貸し倉庫の様な物があるか尋ねると、一本裏の通りにあるそうなので向かう事にする。

貸し倉庫は元馬小屋だったのか、匂いが気になるが安いので契約し、消臭剤の一噴きで全く臭わなくなる。

倉庫の中にテントを出し、今日は休む事にする。

そろそろキュアもかけないといけない頃だった。

食事を作っているとモモが、

「惣一郎様……何から何まで本当に…あ、ありがとうございます。あの……惣一郎様も……ベンゾウ殿も…凄くお強いの…ですね……まさに私が求める……強さでした。惣一郎様どうか……私にも…その強さ御指導していただけないでしょうか? なんでも致しますので……どうか……」

頭を下げるモモは、惣一郎の返事を聞くまで姿勢を崩さなかったが「事情を聞いてもいいか?」っと尋ねると沈黙が続く。

夕飯は、餃子とニラレバ炒めでチャーハンを食べる。

惣一郎はビールで食事を楽しむ!

モモも餃子に感激しており、ベンゾウは黙々と皿ごと抱える様に食べている。

食後は久しぶりに、風呂の準備をする。

風呂は海の砂が沈んでいたので、入れ直す事になる。

何故か砂はクリーンでは取れなかったのだ。

ベンゾウにモモの面倒を見るように頼み先に風呂に入らせ、惣一郎はベッドメイキングや湯上がりのデザートの準備など、奴隷の世話を楽しんでやっていた。

風呂からは感激の声が聞こえて来る……





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