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第六章
一話 【悪戯奴隷!】
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船内にベルが鳴り響き港が近いことを教える。
ベンゾウはまた甲板で、クロと遊んでいるのだろう。
狭い部屋で惣一郎は、体を伸ばし船を降りる準備を始める。
船旅は大きなトラブルもなく、惣一郎のスキルのおかげで食事にも事を欠かず、この狭い部屋以外は快適な旅であった…… なんて事は無かった。
狭い船内で騒ぐベンゾウとクロは、乗船員と幾度と揉め。
揺れの激しい船で惣一郎は、数日青い顔で食事も喉を通らず。
途中鯨の様な魔獣と交戦したり、同じ船に乗り合わせたマダムに頬を叩かれ、はしゃいだクロが海に落ちたりと、散々な船旅であった……
小船に乗り換えアースリア大陸に足を踏み入れる惣一郎。
久々の地面は揺れており、真っ直ぐ立つ事の難しさを知る惣一郎は、ベンゾウの肩につかまり街へと向かう。
船の荷物を下ろす作業をする青灰色の小人が、倉庫へ列を作っていた。
ヒレとエラの魚顔、これがマーマンらしいがイメージとは大分違った……
人魚さんはどこに?
チョイロの町は、海に流れる川を左右に地区を分けるように広がっており、町中には生活水路が張り巡らされていた。
これぞ異世界!って雰囲気に惣一郎の気分も、多少晴れて行く。
でも今は観光よりベッドで寝たいと、宿or倉庫を探す。
宿屋に着くとクロも従魔として同じ部屋でいいそうなので、広めの部屋を借りる事にする。
2人部屋のベッドは固く寝具も汚いし、広さはあるが高さが無いのでテントは出せない。
仕方なく宿の備品を一旦収納!
ダブルベッドを新たに出し、揺れが治るまで寝る事にする惣一郎だった。
翌朝復活した惣一郎は宿の朝食を食べ、町へと繰り出す。
穏やかな雰囲気に水の流れる音がする町を歩いて行く。
露店では港町なのに魚より果物が多く並んでおり、試しに買ってみると瑞々しい見たことない赤い果物は、激甘な桃に似ていた。
マーマンの好物との事だった。
魚じゃないのね……
すると、長閑な雰囲気を壊す罵声が聞こえてくる。
「さっさと歩け、ウスノロ!」
首輪に繋がれた古傷の多い片腕のマーマンを鎖で引っ張る男がおり、マーマンも反抗的な目をしていた。
「この役立たずが、さっさと歩けってんだよ!」
イラつきながら男は、マーマンを引っ張り建物へ入って行った。
気を取られ見ていた惣一郎に気付き、果物を売る露店の老婆が、
「この町は初めてかい? ありゃそこの建物で貸し出してる[ブロ]狩り用の奴隷さね」
「ブロ?」
聞くと南の入江にいる海の魔獣で、皮も肉も高額で取引されているそうだ。
その凶暴な魔獣を捕まえるのに、奴隷となったマーマンを囮にするそうで、なんとも気分の良くない話であった。
そしてこのマーマン。
小柄で知能も幼い子供ぐらいしかないそうで、労働力としてこの町では使われる存在なのだが、良くない人が騙しては奴隷にしたりと悪用する者も少なくない。
長閑な町の裏の顔であった。
気を悪くした惣一郎は川を渡り、もう半分の町へ向かう。
南地区と呼ばれるこちらにはギルドがあり、ここは、商人ギルドと冒険者ギルドが一緒になっている。
先の情報でも集めようと建物に入ると、人は少なく大きな掲示板に張り出された依頼も寂しかった。
[ブロ買取 46ギー]
[急募 ブロの皮 28ギー]
[ブロ捕獲用奴隷買取 170ギー]
[北の巨人調査依頼 25ギー]
そしてベンゾウに絡むアホ、プライスレス。
ギルドで絡まれるのも久々であり、この貴重なアホはベンゾウにのされ、床になっていた。
「野郎! 何しやがる!」
仲間が意気込むが、まんまこっちのセリフである。
冒険者らしい床となった男の連れは、考える前に手が出るタイプの様で、ベンゾウに殴りかかるが避けられる。
「ご主人様、こわい!」
惣一郎の後ろに隠れる悪戯っ子は舌を出し、惣一郎は溜め息を吐く。
何をしてるのかな、ベンゾウさん?
ベンゾウはまた甲板で、クロと遊んでいるのだろう。
狭い部屋で惣一郎は、体を伸ばし船を降りる準備を始める。
船旅は大きなトラブルもなく、惣一郎のスキルのおかげで食事にも事を欠かず、この狭い部屋以外は快適な旅であった…… なんて事は無かった。
狭い船内で騒ぐベンゾウとクロは、乗船員と幾度と揉め。
揺れの激しい船で惣一郎は、数日青い顔で食事も喉を通らず。
途中鯨の様な魔獣と交戦したり、同じ船に乗り合わせたマダムに頬を叩かれ、はしゃいだクロが海に落ちたりと、散々な船旅であった……
小船に乗り換えアースリア大陸に足を踏み入れる惣一郎。
久々の地面は揺れており、真っ直ぐ立つ事の難しさを知る惣一郎は、ベンゾウの肩につかまり街へと向かう。
船の荷物を下ろす作業をする青灰色の小人が、倉庫へ列を作っていた。
ヒレとエラの魚顔、これがマーマンらしいがイメージとは大分違った……
人魚さんはどこに?
チョイロの町は、海に流れる川を左右に地区を分けるように広がっており、町中には生活水路が張り巡らされていた。
これぞ異世界!って雰囲気に惣一郎の気分も、多少晴れて行く。
でも今は観光よりベッドで寝たいと、宿or倉庫を探す。
宿屋に着くとクロも従魔として同じ部屋でいいそうなので、広めの部屋を借りる事にする。
2人部屋のベッドは固く寝具も汚いし、広さはあるが高さが無いのでテントは出せない。
仕方なく宿の備品を一旦収納!
ダブルベッドを新たに出し、揺れが治るまで寝る事にする惣一郎だった。
翌朝復活した惣一郎は宿の朝食を食べ、町へと繰り出す。
穏やかな雰囲気に水の流れる音がする町を歩いて行く。
露店では港町なのに魚より果物が多く並んでおり、試しに買ってみると瑞々しい見たことない赤い果物は、激甘な桃に似ていた。
マーマンの好物との事だった。
魚じゃないのね……
すると、長閑な雰囲気を壊す罵声が聞こえてくる。
「さっさと歩け、ウスノロ!」
首輪に繋がれた古傷の多い片腕のマーマンを鎖で引っ張る男がおり、マーマンも反抗的な目をしていた。
「この役立たずが、さっさと歩けってんだよ!」
イラつきながら男は、マーマンを引っ張り建物へ入って行った。
気を取られ見ていた惣一郎に気付き、果物を売る露店の老婆が、
「この町は初めてかい? ありゃそこの建物で貸し出してる[ブロ]狩り用の奴隷さね」
「ブロ?」
聞くと南の入江にいる海の魔獣で、皮も肉も高額で取引されているそうだ。
その凶暴な魔獣を捕まえるのに、奴隷となったマーマンを囮にするそうで、なんとも気分の良くない話であった。
そしてこのマーマン。
小柄で知能も幼い子供ぐらいしかないそうで、労働力としてこの町では使われる存在なのだが、良くない人が騙しては奴隷にしたりと悪用する者も少なくない。
長閑な町の裏の顔であった。
気を悪くした惣一郎は川を渡り、もう半分の町へ向かう。
南地区と呼ばれるこちらにはギルドがあり、ここは、商人ギルドと冒険者ギルドが一緒になっている。
先の情報でも集めようと建物に入ると、人は少なく大きな掲示板に張り出された依頼も寂しかった。
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そしてベンゾウに絡むアホ、プライスレス。
ギルドで絡まれるのも久々であり、この貴重なアホはベンゾウにのされ、床になっていた。
「野郎! 何しやがる!」
仲間が意気込むが、まんまこっちのセリフである。
冒険者らしい床となった男の連れは、考える前に手が出るタイプの様で、ベンゾウに殴りかかるが避けられる。
「ご主人様、こわい!」
惣一郎の後ろに隠れる悪戯っ子は舌を出し、惣一郎は溜め息を吐く。
何をしてるのかな、ベンゾウさん?
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