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第五章
八話 【工夫は大事!】
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ハイオークの件は何とか誤魔化せそうだ……
これ以上目立つのはスローライフの妨げになると、ホッと胸を撫で下ろす惣一郎だった。
やがて陽が傾き、森の中は暗くなって行く。
「ここで今日は野営しましょう」
そう言うと惣一郎は薪を出し火を起こし始める。
リヴォイ達は疲れたのか、装備を脱ぎ出して休み始める。
惣一郎達がいる事に安心し、森で装備を外したのだろう。
惣一郎は皆に、街で買った食事を配り水の入った樽を置く。
「食事が暖かい…… それマジックバッグですよね? 量も凄いが、食事が出来立ての様だ……」
しまった!って顔の惣一郎に、リヴォイが、
「いえ失礼、もう詮索はしません。ここで暖かい飯が食べられるだけでも十分ありがたい」
気を遣わせた様で……
すっかり忘れていた惣一郎だった。
食事を終えるとクロがいるので見張りは必要ないと、3人に休むよう勧める。
ベンゾウはすでに、惣一郎の膝に頭を乗せて寝ていた。
焚火を囲み皆が寝付くと、クロがむくっと起き警戒し出した。
惣一郎も、まだ起きていたので異変に気付く。
ベンゾウも寝ながら目を開けるが、惣一郎が頭に手を置き「寝てな」っと囁く。
三徳包丁を1本投げ出し、座ったまま杖で印を結ぶと宙に浮き出す。
みんな寝てるし、ククリ刀じゃ回るとうるさい。
クロが見つめる先の大木の影から、大きなグルピーが顔を出す。
惣一郎達に気が付くと、のそっと立ち上がり吠えようとするその前に、額に包丁が深く突き刺さる。
惣一郎は深く刺さった包丁を抜こうと意識するが、抜けなかった。
そのままグルピーは倒れる。
強く意識し、離れた包丁を抜こうと杖を向ける。
グルピーの額から抜け浮かぶ包丁。
結構な魔力を使った事に気付く。
力がいるような重いものは魔力を使うようで、やはり回転するククリ刀は正解だった様だ。
安価な刈払機などで使う丸鋸の刃とも考えたが、切れ味が悪く回収が困難になるぐらいなら、高くても切れ味はある程度必要と思い、ククリ刀を選んだ。
包丁を操りながら、そんな事を考えているとリヴォイが目を覚まし、こちらを見ていた。
「ほんとお強いですね……」
起き抜けに感心するリヴォイが、焚火の近くに座り話しかけて来る。
「それ、建築現場とかでたまに見るテレキシスの魔法ですよね? 結構な魔力量がないと使えないって言う…… それをそんな使い方出来るなんて、相当な魔力量なんですね」
え、そんな使い方なのか……
「あははは~ 量だけなんです、質が悪くて」
「いえ、出来る事で工夫してらっしゃる。それであそこまで戦えるなんて、ほんと尊敬しますよ。あのグルピーだって普通一人じゃ逃げますよ」
惣一郎は褒められると弱かった。
その後もリヴォイの誉め殺しは、遅くまで続いた。
翌朝、ベンゾウが惣一郎を起こすとリヴォイ達はすでに準備出来ていた。
朝食なんて考えてもいないリヴォイ達。
「さぁ行きましょう!」っと張り切っており、言い出せないまま歩き始める。
途中、狼の魔獣が出たがリヴォイ達がサクッと退治してくれた。
流石は森の調査依頼を受けるレベルの冒険者だ。
コンビネーションも長年一緒だっただけはあり、特にトーチの魔法には目を引いた。
スワロも使っていた炎槍なんだが、自分の魔力量を理解しているのだろう、小さな槍と言うより矢に近い炎を数多く撃ち、一撃で倒そうとせず、敵の誘導や、姿勢を崩し仲間に繋ぐ事に専念していた。
冒険者は『工夫が大事なんだなぁ』と感心する惣一郎だった……
そんなこんなでようやく、出口が見えて来た。
森を出ると丘の下に海が広がっていた。
潮の香りは異世界でも変わらなかった。
海の手前には大きな街も見え、帆船もいくつか止まっているのが見える、ここが港町セルロイ。
久々にテンションの上がる光景であった。
これ以上目立つのはスローライフの妨げになると、ホッと胸を撫で下ろす惣一郎だった。
やがて陽が傾き、森の中は暗くなって行く。
「ここで今日は野営しましょう」
そう言うと惣一郎は薪を出し火を起こし始める。
リヴォイ達は疲れたのか、装備を脱ぎ出して休み始める。
惣一郎達がいる事に安心し、森で装備を外したのだろう。
惣一郎は皆に、街で買った食事を配り水の入った樽を置く。
「食事が暖かい…… それマジックバッグですよね? 量も凄いが、食事が出来立ての様だ……」
しまった!って顔の惣一郎に、リヴォイが、
「いえ失礼、もう詮索はしません。ここで暖かい飯が食べられるだけでも十分ありがたい」
気を遣わせた様で……
すっかり忘れていた惣一郎だった。
食事を終えるとクロがいるので見張りは必要ないと、3人に休むよう勧める。
ベンゾウはすでに、惣一郎の膝に頭を乗せて寝ていた。
焚火を囲み皆が寝付くと、クロがむくっと起き警戒し出した。
惣一郎も、まだ起きていたので異変に気付く。
ベンゾウも寝ながら目を開けるが、惣一郎が頭に手を置き「寝てな」っと囁く。
三徳包丁を1本投げ出し、座ったまま杖で印を結ぶと宙に浮き出す。
みんな寝てるし、ククリ刀じゃ回るとうるさい。
クロが見つめる先の大木の影から、大きなグルピーが顔を出す。
惣一郎達に気が付くと、のそっと立ち上がり吠えようとするその前に、額に包丁が深く突き刺さる。
惣一郎は深く刺さった包丁を抜こうと意識するが、抜けなかった。
そのままグルピーは倒れる。
強く意識し、離れた包丁を抜こうと杖を向ける。
グルピーの額から抜け浮かぶ包丁。
結構な魔力を使った事に気付く。
力がいるような重いものは魔力を使うようで、やはり回転するククリ刀は正解だった様だ。
安価な刈払機などで使う丸鋸の刃とも考えたが、切れ味が悪く回収が困難になるぐらいなら、高くても切れ味はある程度必要と思い、ククリ刀を選んだ。
包丁を操りながら、そんな事を考えているとリヴォイが目を覚まし、こちらを見ていた。
「ほんとお強いですね……」
起き抜けに感心するリヴォイが、焚火の近くに座り話しかけて来る。
「それ、建築現場とかでたまに見るテレキシスの魔法ですよね? 結構な魔力量がないと使えないって言う…… それをそんな使い方出来るなんて、相当な魔力量なんですね」
え、そんな使い方なのか……
「あははは~ 量だけなんです、質が悪くて」
「いえ、出来る事で工夫してらっしゃる。それであそこまで戦えるなんて、ほんと尊敬しますよ。あのグルピーだって普通一人じゃ逃げますよ」
惣一郎は褒められると弱かった。
その後もリヴォイの誉め殺しは、遅くまで続いた。
翌朝、ベンゾウが惣一郎を起こすとリヴォイ達はすでに準備出来ていた。
朝食なんて考えてもいないリヴォイ達。
「さぁ行きましょう!」っと張り切っており、言い出せないまま歩き始める。
途中、狼の魔獣が出たがリヴォイ達がサクッと退治してくれた。
流石は森の調査依頼を受けるレベルの冒険者だ。
コンビネーションも長年一緒だっただけはあり、特にトーチの魔法には目を引いた。
スワロも使っていた炎槍なんだが、自分の魔力量を理解しているのだろう、小さな槍と言うより矢に近い炎を数多く撃ち、一撃で倒そうとせず、敵の誘導や、姿勢を崩し仲間に繋ぐ事に専念していた。
冒険者は『工夫が大事なんだなぁ』と感心する惣一郎だった……
そんなこんなでようやく、出口が見えて来た。
森を出ると丘の下に海が広がっていた。
潮の香りは異世界でも変わらなかった。
海の手前には大きな街も見え、帆船もいくつか止まっているのが見える、ここが港町セルロイ。
久々にテンションの上がる光景であった。
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