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第四章

六話 【噛み合う歯車!】

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「冒険者様!」とドア越しに呼ぶ声に、惣一郎は嫌な予感しかしなかった。

ドアを開けると村人が、

「大量のムイムリが出ました!」

っと、慌てた様子で避難する様に言ってきた。

このムイムリは集団で襲ってくるが、スピードが速いわけではないので、走れば逃げ切れるそうだが、量が多いと数カ所は刺される。

そんな大騒ぎする程の事でも無い気もするが……

外に出ると慌てた村人が、家中の隙間に繊維質な植物の様な物を詰め、ムイムリに備えていた。

そこに、村長が慌てて駆け寄る。

「過去に無い量のムイムリが来ます! 早く密閉の終わった家へ避難して下さい!」

またも大きな溜め息を吐く惣一郎は、仕方ないかっと蚊取り線香を取り出し、村長に村中に火をつけ焚く様に指示をした。

「そんな場合では無いです!」 

あっそう……

聞く耳を持たなかった村長を無視して火を付けた蚊取り線香を、次々とベンゾウとスワロに渡し、村中に置くよう指示する惣一郎。

こんな時にと焦る村長だったが、先に入り込んだ近づく黒い影の塊が、煙にポタポタ落ちていくのを目の当たりにし、大慌てで村人を集め出す。

夕焼けの空を黒く染めるような大群が、もうそこまで迫って来ていた。

ププと言うカエルが減ったぐらいで、異常発生するレベルではなかった……

村中で白い煙が上がり始めると、ブーンと言う嫌な音が近付くが、近いムイムリから順番に、ポトポトと地面に落ちていく。

その異常な光景に村人は、ただ立ちすくむ事しか出来なかった。

夕方の赤い空を埋め尽くす大量の黒い影は、村に近付く端から次々と落ちて行く。

すると遅れて、その黒い影を追ってゲコゲコとカエルの鳴き声が近付いて来る。

黄色のイボイボな肌以外、見た目もカエルに近いププが大量に現れ、地面を埋め尽くす。

ププは10cm程の大きさで、粘着質な長い舌を出し、一度に大量のムイムリの死骸を地面から絡め取り食べていた。

驚くほどの凄い食欲だった。

なるほどコレじゃ異常発生する訳だ……



すっかり陽も落ちた村に、ゲコゲコと響き渡るププの鳴き声で、そのププを追って来ている大きな影がある事にまだ誰も、気付いてはいなかった。

ムイムリの急襲を乗り切った村は、歓喜の声を上げ、その次に訪れた村の大事な収入源に誰しもが喜び、我先にとププを捕まえていたが、その喜びの声が悲鳴に変わり、村人のひとりが大きな声を上げる。

「出た! バリスキラだ!」 

だそうです。

ププの群れの後方に、時折光る巨大な黒い影が星に照らされ、不気味に動いていた。

コモドオオトカゲそっくりな見た目だが、大きさが半端ない!

全長10mはあるだろう巨大なトカゲは、時折体をピカっと光らせ、近くで感電したププを夢中で食べていた。

村長が慌てて駆け寄り「ぼっ冒険者様、奴です!」っと声を上げる。

ため息を吐き惣一郎は、ベンゾウとスワロに「しょうがない、行くか」っと声をかけ、カエルの群れの中を歩き出す。

だが、ベンゾウが動こうとしない。

どうしたのかよく見ると、ベンゾウの足が小刻みに震えていた。

「どうした?」

「ご主人様…… ププ怖い」

はい?

散々食ってたよね?

えっ、カエルが苦手とかそんな感じ?

マジで?

バリスキラ討伐の要が、予期せぬププの群れに震え上がっている。

仕方ない今回はスワロとふたりで、やるしかなさそうだな!

惣一郎はネットで絶縁の作業服を購入し、服の上から着ると、スワロにも着させる。

「俺が抑えるので、ガンガン魔法ぶち込んで!」

っと、イケメン発言するこの男。

誰だ?

星明かりの中を盾を構え、水色の絶縁スーツに身を包み、颯爽と前を歩き「ゲっ、ププ踏んじゃった!」っと、惣一郎であった。



泥濘を進みトカゲの近くまで来ると、バリスキラは邪魔するなと言わんばかりの、今日一番の電撃攻撃をする。

水を含んだ泥濘を広範囲にビリビリと電気が走るが、ふたりには全く効かなかった。

それに怒り、くるりと体を入れ替えると、遅れて風を切る音と共に棘のついたぶっとい尻尾が飛んでくる!

惣一郎は、それを盾で軽く受け止める。

家をも破壊する一撃をだ! 

それに合わせて後方から、スワロの魔法が辺りを明るく照らすと、バリスキラの背中に今までで一番大きな炎槍が突き刺さる。

刺さった炎槍が火柱を上げると、叫びに似た声をあげて暴れ出すオオトカゲ!

再度飛んで来る尻尾を、再度受け止める惣一郎。

トカゲの頭にもう一本の炎槍が刺さると、立て続けにもう2本の炎槍がバリスキラの体に刺さり、バリスキラは動くのをやめた。

なんとか倒せたか、ベンゾウなしで……

完全動かなくなったバリスキラを収納し、戻ろうとスワロに声をかける。

スワロはまだ自分の魔法が、信じられないといった表情だった。

村に戻ると、地面を黒く染めていたムイムリの死骸はほぼ食い尽くされ、ププもまばらになっていた。

腹一杯になると、地面に潜るらしい。

喜び歓声を上げる村人と共に、出迎えたベンゾウは泣きそうな顔で、

「ご主人様…… ごめんなさい、動けなくて……」

っと、泣き出した。

「苦手な物は仕方ないよ」

笑顔で優しくベンゾウの頭を、ポンポンと叩く惣一郎。

スワロも追って慰めていた。





村はすっかり宴会モードになっていた。

ニの轍は踏まないと惣一郎は、村長を呼び出して交渉を始める。

最近逞しくなって来た、惣一郎であった。






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