23 / 409
第三章
七話 【魅入られたベンゾウ!】
しおりを挟む
目の前に現れた、二本の小刀に鳥肌が立つ……
この世界では、物の用途が強化される。
作り手の思いも。
この二刀には、どれだけの思いが込められているのだろうか……
ベンゾウは全身の毛が逆立っていた。
瞬きも出来ずにベンゾウは、その小刀を鞘から抜くと、青白く光る刀身は美しい刃紋を「チン」っと澄んだ音と共に空気を凍らせ、その美しさに魅入られる。
分厚いメガネの少女は、小さい声で呟く。
「なんだコレ……」
試し切りがしたいと、國家と國千代を握る少女が、テントを出て行く。
ズシリとくる重さを確認し、構えるベンゾウ。
銀の疾風が吹くと目の前の木が綺麗に崩れ落ちる。
振り抜いた姿勢のまま眼を見開き、驚き固まるベンゾウ。
その表情が見れただけでも、高い買い物をした甲斐はあった。
三徳包丁は後で手入れして、予備として使おうと預かり収納する。
この時間から旅を続けるのも半端過ぎるので、料理を色々作り置きしておく事にする惣一郎。
ベンゾウは國家と國千代を腰に装備するのに、皮と紐が欲しいと言うので、銀の狼の魔獣の革と、二刀の鞘の組紐に似た紐をネットで買って渡す。
多めに作った作り置きのおにぎりで夕食を済ませ、早めに寝て明日は早めに出る事にした。
「いつまでも見て無いで、早く寝なさい!」
早朝まだ薄暗い中、テントを収納して旅路に戻るふたり。
腰に狼の銀の毛皮を纏い、2本の漆塗りの美しい刀が鮮やかな組紐で取り付けられ、ベンゾウの足取りは自信に満ち溢れていた。
この異世界の危険な森で、國家と國千代の出番は直ぐに訪れる。
朝陽を遮る薄暗いルイードの森は、まだ終わりが見えない。
前を歩くベンゾウの足が止まり、耳が動く。
元冒険者の顔は、新たな武器を試せるチャンスに喜びを隠せずにいた。
数十メートル先の道の真ん中に、前屈みの大男のシルエットが見えた。
アオーン!っと遠吠えに似た声を上げると、森から新たに四つの影が現れる。
ベンゾウはゆっくりと小刀を抜く。
影の正体は…… 狼男?
「ご主人様[ベルフ]です。下がって下さい」
ベンゾウの声は嬉しそうだった。
長い腕を地面まで垂らし、青がかった灰色の狼男ベルフ。
そのニ匹が素早く前に出て、上下同時に鋭い爪でベンゾウに襲い掛かる。
コンビネーションが取れている!
その上下の攻撃の真ん中をスルリと優雅にすり抜けると、三匹目がタイミング良く大きな口を開け噛みついて来る。
それもヒラリと軽やかに飛び越えて、さらに奥の二匹に小刀を突き付け、構える。
最初の二匹の腕が鮮血と共に地面に落ちると、三匹目の頭も時間差で地面に落ちる。
遅れて腕を無くした最初の二匹が、肩から腰に体を二つに崩れ落ち、首を無くした三匹目もその場で、膝をつくように前に倒れ込む。
惣一郎にはすり抜けただけにしか見えなかった。
残り二匹の顔色が変わるとベンゾウの姿は消え、四匹目の上半身が下半身と分かれる。
最後のベルフの顔は恐怖を色濃く表し、身を翻して四足獣本来の格好で逃げるつもりだったのだろう……
だが、すでにベンゾウの小刀が頭に突き立てられていた。
刺しながらベンゾウは、すでにベルフに興味を無くした様に、もう片方に握られた小刀を見つめ笑みを浮かべている…… 怖いわ!
「凄い…… 凄いですコレ!」
興奮状態のベンゾウは、空気の抵抗まで切れたとかなんとか、よくわからない事を饒舌に語っていた。
ベルフも売れるとの事で収納し、まるで何もなかった様に歩き出すふたり。
惣一郎もだいぶ慣れてきている……
歩きながらもベンゾウは、刀を構えたり振ってみたりしながら、この美善國家と美善國千代がどれだけ凄いか説明してくれていたが、惣一郎はニコニコしながら全く聞いていなかった。
この小刀、ネットで買える中では最上級だろうが、達人と呼ばれる様な人の愛蔵の一本ってレベルだろう。
もっと本気のウン千万や億のやばい国宝級の刀がこの世界に来たら、一体どうなるのだろう……
そんな事を考えていた。
その後もゴブリンや、猪のギュノ、ガラスの様な透明の角をした鹿[バイソリズー]等を、ベンゾウさんが瞬殺し、森でまた夜を迎える。
テントを出し、煮込みうどんを作り、食事を終えるとベッドの中で惣一郎は考えていた。
この世界の魔物、オークやゴブリン、スライムなどの名前は前から本やアニメで知っていたが、グルピーやギュノ、ベルフ、バイソリズーなんて聞いた事も無い事に疑問を感じていた。
知らなかっただけなのだろうか?
ベルフなんて見た感じ、狼男やワーウルフとか聞き覚えありそうな名前でもいいと思うんだが……
異世界に来た時に貰ったスキル、言語理解のバグなのか?
考えてるうちに眠りにつく。
集中力の続かない男……
この世界では、物の用途が強化される。
作り手の思いも。
この二刀には、どれだけの思いが込められているのだろうか……
ベンゾウは全身の毛が逆立っていた。
瞬きも出来ずにベンゾウは、その小刀を鞘から抜くと、青白く光る刀身は美しい刃紋を「チン」っと澄んだ音と共に空気を凍らせ、その美しさに魅入られる。
分厚いメガネの少女は、小さい声で呟く。
「なんだコレ……」
試し切りがしたいと、國家と國千代を握る少女が、テントを出て行く。
ズシリとくる重さを確認し、構えるベンゾウ。
銀の疾風が吹くと目の前の木が綺麗に崩れ落ちる。
振り抜いた姿勢のまま眼を見開き、驚き固まるベンゾウ。
その表情が見れただけでも、高い買い物をした甲斐はあった。
三徳包丁は後で手入れして、予備として使おうと預かり収納する。
この時間から旅を続けるのも半端過ぎるので、料理を色々作り置きしておく事にする惣一郎。
ベンゾウは國家と國千代を腰に装備するのに、皮と紐が欲しいと言うので、銀の狼の魔獣の革と、二刀の鞘の組紐に似た紐をネットで買って渡す。
多めに作った作り置きのおにぎりで夕食を済ませ、早めに寝て明日は早めに出る事にした。
「いつまでも見て無いで、早く寝なさい!」
早朝まだ薄暗い中、テントを収納して旅路に戻るふたり。
腰に狼の銀の毛皮を纏い、2本の漆塗りの美しい刀が鮮やかな組紐で取り付けられ、ベンゾウの足取りは自信に満ち溢れていた。
この異世界の危険な森で、國家と國千代の出番は直ぐに訪れる。
朝陽を遮る薄暗いルイードの森は、まだ終わりが見えない。
前を歩くベンゾウの足が止まり、耳が動く。
元冒険者の顔は、新たな武器を試せるチャンスに喜びを隠せずにいた。
数十メートル先の道の真ん中に、前屈みの大男のシルエットが見えた。
アオーン!っと遠吠えに似た声を上げると、森から新たに四つの影が現れる。
ベンゾウはゆっくりと小刀を抜く。
影の正体は…… 狼男?
「ご主人様[ベルフ]です。下がって下さい」
ベンゾウの声は嬉しそうだった。
長い腕を地面まで垂らし、青がかった灰色の狼男ベルフ。
そのニ匹が素早く前に出て、上下同時に鋭い爪でベンゾウに襲い掛かる。
コンビネーションが取れている!
その上下の攻撃の真ん中をスルリと優雅にすり抜けると、三匹目がタイミング良く大きな口を開け噛みついて来る。
それもヒラリと軽やかに飛び越えて、さらに奥の二匹に小刀を突き付け、構える。
最初の二匹の腕が鮮血と共に地面に落ちると、三匹目の頭も時間差で地面に落ちる。
遅れて腕を無くした最初の二匹が、肩から腰に体を二つに崩れ落ち、首を無くした三匹目もその場で、膝をつくように前に倒れ込む。
惣一郎にはすり抜けただけにしか見えなかった。
残り二匹の顔色が変わるとベンゾウの姿は消え、四匹目の上半身が下半身と分かれる。
最後のベルフの顔は恐怖を色濃く表し、身を翻して四足獣本来の格好で逃げるつもりだったのだろう……
だが、すでにベンゾウの小刀が頭に突き立てられていた。
刺しながらベンゾウは、すでにベルフに興味を無くした様に、もう片方に握られた小刀を見つめ笑みを浮かべている…… 怖いわ!
「凄い…… 凄いですコレ!」
興奮状態のベンゾウは、空気の抵抗まで切れたとかなんとか、よくわからない事を饒舌に語っていた。
ベルフも売れるとの事で収納し、まるで何もなかった様に歩き出すふたり。
惣一郎もだいぶ慣れてきている……
歩きながらもベンゾウは、刀を構えたり振ってみたりしながら、この美善國家と美善國千代がどれだけ凄いか説明してくれていたが、惣一郎はニコニコしながら全く聞いていなかった。
この小刀、ネットで買える中では最上級だろうが、達人と呼ばれる様な人の愛蔵の一本ってレベルだろう。
もっと本気のウン千万や億のやばい国宝級の刀がこの世界に来たら、一体どうなるのだろう……
そんな事を考えていた。
その後もゴブリンや、猪のギュノ、ガラスの様な透明の角をした鹿[バイソリズー]等を、ベンゾウさんが瞬殺し、森でまた夜を迎える。
テントを出し、煮込みうどんを作り、食事を終えるとベッドの中で惣一郎は考えていた。
この世界の魔物、オークやゴブリン、スライムなどの名前は前から本やアニメで知っていたが、グルピーやギュノ、ベルフ、バイソリズーなんて聞いた事も無い事に疑問を感じていた。
知らなかっただけなのだろうか?
ベルフなんて見た感じ、狼男やワーウルフとか聞き覚えありそうな名前でもいいと思うんだが……
異世界に来た時に貰ったスキル、言語理解のバグなのか?
考えてるうちに眠りにつく。
集中力の続かない男……
32
お気に入りに追加
1,858
あなたにおすすめの小説
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる