167 / 194
第八章
二十話【魔女の足】
しおりを挟む
鼻を赤くし、涙を堪える弁慶。
「すまん…… 旦那様がくれた侃護斧が……」
地面に落ちた二つの侃護斧を見下ろし、肩を震わせる。
勇者の置き土産である戦斧も、世界を渡った武器なのだろう。
異世界の硬い金属から作った武器と、武器として世界を渡った差が出たのかも知れない。
惣一郎はそのぐらいに考えていたが、弁慶にとっては、惣一郎に貰った最高の武器として、負けるとは思っても見なかったのだろう……
その武器を扱う自分の所為だと、自分を責めていた。
「弁慶、これは武器の差だ。弁慶じゃ無く俺の武器が負けたんだ。自分を責め…」
「ご主人様~」
なんだよ!
弁慶が投げ置いた勇者の戦斧を、かがみ込んで見ているベンゾウが話しかける。
「これ國家みたいに中身入ってるよ」
赤い地面に横たわる大きな戦斧。
ベンゾウの言う中身が惣一郎にはピンと来ないが、近付くと存在感が他とは違う気もする。
そこにツナマヨが、
「いつまで落ち込んでいる! まだ敵陣だぞ」
確かにそんな場合では無いかも知れない。
「戦いの中武器を失えば、敵の武器を奪い戦うまでだ。思い入れがあるのは分かるが、気を引き締めろ!」
ツナマヨの一喝で、鼻を啜る弁慶。
侃護斧を拾いポーチに仕舞う。
「そうだな… すまん!」
後で直せるかドワーフ達に相談してみるか……
そう思いながら惣一郎が、地面の戦斧を拾おうと手を伸ばす。
重!
地面との隙間に指すら入らない!
幻腕を出し両手で持ち上げようと踏ん張るが、全く上がらなかった。
ケラケラケラ。
しゃがんだまま笑うベンゾウ。
その背後から手を伸ばす弁慶が、戦斧を軽く拾い上げる。
マジか……
「ん、どうした旦那様?」
「いや…… なんでも無い。似合うぞ、ソレ!」
少し照れながら赤い鼻の弁慶が戦斧を振り回す。
「少し軽いが、これで我慢するか!」
軽いんだ……
惣一郎はゲルドマ達の遺体を収納し、また出す。
魔女の目は落ちなかった。
「コイツらは操られて無い様だな……」
ひとり確認する惣一郎を置き去りに、ツナマヨ達が先に進み始めていた。
広い空洞の奥に見える扉を目指し。
その頃、ユグポンの中で待機するミネアが驚きの表情で、床に置かれた御神体を見ていた。
「ミ、ミネアさん、コレは……」
ブラギノールも驚きながら、ミネアに話しかける。
布に巻かれた御神体から、飛び出す様に生えている右脚。
「生えたのかしら……」
小さい包みから飛び出す干からびた足。
子供の足より小さく蟲の様な脚であった。
「すまん…… 旦那様がくれた侃護斧が……」
地面に落ちた二つの侃護斧を見下ろし、肩を震わせる。
勇者の置き土産である戦斧も、世界を渡った武器なのだろう。
異世界の硬い金属から作った武器と、武器として世界を渡った差が出たのかも知れない。
惣一郎はそのぐらいに考えていたが、弁慶にとっては、惣一郎に貰った最高の武器として、負けるとは思っても見なかったのだろう……
その武器を扱う自分の所為だと、自分を責めていた。
「弁慶、これは武器の差だ。弁慶じゃ無く俺の武器が負けたんだ。自分を責め…」
「ご主人様~」
なんだよ!
弁慶が投げ置いた勇者の戦斧を、かがみ込んで見ているベンゾウが話しかける。
「これ國家みたいに中身入ってるよ」
赤い地面に横たわる大きな戦斧。
ベンゾウの言う中身が惣一郎にはピンと来ないが、近付くと存在感が他とは違う気もする。
そこにツナマヨが、
「いつまで落ち込んでいる! まだ敵陣だぞ」
確かにそんな場合では無いかも知れない。
「戦いの中武器を失えば、敵の武器を奪い戦うまでだ。思い入れがあるのは分かるが、気を引き締めろ!」
ツナマヨの一喝で、鼻を啜る弁慶。
侃護斧を拾いポーチに仕舞う。
「そうだな… すまん!」
後で直せるかドワーフ達に相談してみるか……
そう思いながら惣一郎が、地面の戦斧を拾おうと手を伸ばす。
重!
地面との隙間に指すら入らない!
幻腕を出し両手で持ち上げようと踏ん張るが、全く上がらなかった。
ケラケラケラ。
しゃがんだまま笑うベンゾウ。
その背後から手を伸ばす弁慶が、戦斧を軽く拾い上げる。
マジか……
「ん、どうした旦那様?」
「いや…… なんでも無い。似合うぞ、ソレ!」
少し照れながら赤い鼻の弁慶が戦斧を振り回す。
「少し軽いが、これで我慢するか!」
軽いんだ……
惣一郎はゲルドマ達の遺体を収納し、また出す。
魔女の目は落ちなかった。
「コイツらは操られて無い様だな……」
ひとり確認する惣一郎を置き去りに、ツナマヨ達が先に進み始めていた。
広い空洞の奥に見える扉を目指し。
その頃、ユグポンの中で待機するミネアが驚きの表情で、床に置かれた御神体を見ていた。
「ミ、ミネアさん、コレは……」
ブラギノールも驚きながら、ミネアに話しかける。
布に巻かれた御神体から、飛び出す様に生えている右脚。
「生えたのかしら……」
小さい包みから飛び出す干からびた足。
子供の足より小さく蟲の様な脚であった。
12
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる