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第八章

十二話【迷走】

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魔女は長年考えた末、この世界に自分を倒せる存在を呼ぶ為に戦う選択をする。

もう一度、混沌とした世界を作る事に。

そうすれば均衡を保つ為に、世界が勇者を召喚すると考えたのだ。

「こうして動けない魔女の、気の遠くなる様な静かな戦いが始まったのだ。まず動けない魔女の手足となり動く仲間を集める為に…」

「ちょ、待て待て!」

「なんだ主人よ! ここからが良い所なのだぞ」

「いやいや、矛盾してんだろ! 死ぬ為に戦うとか、硬いのにネズミに齧られたとか」

「「「「 確かに 」」」」

「最もらしく話してるけど、その女の子に聞かされた話なんだろ?」

「まぁ… そうなのだが……」

「奴らが蟲であり、襲って来るなら倒すだけだ。スワロも取り戻したしな」

「要はその御神体を潰せば良いんだろ?」

っと、弁慶が侃護斧を片手に前に出る。

確かにスワロの話では、それで終いか?

「ミネア、御神体は?」

「えっ、ここに…… あれ?」

すると早々と話に飽きたベンゾウが地面に転がり、足の上で御神体を転がしていた。

「何してんのよ……」

「話が難しい過ぎるんだもん! それにコレ中身ないよ」

「中身?」

「スワロの話じゃ中に魔女が封印されてる勇者の体なんでしょ?」

「ちゃんと聞いてたんじゃん!」

「でも中身いないよ」

國家と國千代みたいな事だろうか?

どう言う事か、スワロに注目が集まる。

「えっ? いや、私は知らんぞ、聞いただけだし、キッドに隠せと渡されただけだし」

「まぁ、スワロの話は参考にならん言う事やな」

「だが無視も出来ん!」

「蟲だけにね!」

「茶々を入れるなベンゾウ!」

「兎に角、大陸にユグポンの種はあるんだし、奴らのアジトを叩いて、終わりにしよう。キッドも置いて来ちゃったしな」

「旦那様、キッドを助けるのか?」

「まぁ、また仲間にってのは無理でも、アイツにも理由があったんだろ。スワロを逃がしてくれたし敵じゃないのだろ」

連れ去ったのもキッドなのだが、放って置くのも後味が悪い。

惣一郎は翌朝、一気にグルミターナのアジトへ乗り込むと、今日はゆっくり休む様に皆に言い、ベンゾウが足で転がす御神体をアイテムボックスに収納しようとする。

ところが、御神体は収納出来ずに地面に転がる。

うそ…… 生きてるのか?

何が真実かわからなくなる惣一郎だったが、奴らにとって大事な物なら、まだ使い道があるかも知れないと思う。

惣一郎はドラミに、村人を近付けさせない様に注意し、保管を頼む。


惣一郎はトトリ達にアジトの大体の場所を聞き出すと、奇襲をかける為に近くまで、夜のうちにひとりで種を持って向かうと言い出す。

ベンゾウが反対したが、終わらせようといつに無く真剣な惣一郎に、渋々従う。




迷彩柄のポンチョを羽織り、暗い大陸に出る惣一郎。

何かあれば直ぐに出られる様に、村で待機しているベンゾウ達。

ここからは上位種が相手の戦闘を想定し、主力メンバーのみが、待機している。

種を仕舞うと、サーチを広げる。

蟲の気配は確かに多い。

だが、スワロを追って集落近くまで追手が来てるかもと思ったが、蟲以外の気配はない様だ。

暗い森の中をひとり木の高さで飛ぶ惣一郎。

暗い森でも関係なく、惣一郎のサーチは複雑な森の中を勢い良く飛ぶ事が出来た。

しばらく暗く深い森を進むと、森の中を点々と数人の気配を感じ取る。

追手だろうか?

音も無く飛ぶ惣一郎が、近くの二人組の上に出る。

様子を伺う惣一郎。

暗い森で目立つ松明を持ち、急いで何処かを目指している様だ。

「一体どう言う事だ!」

「分からん! だが間違いはない様だ」

慌てる様子の二人組の男は、松明の灯りを頼りに結構なスピードで森の中を進んでいる。

よく見ると足が、蟲の様な異形の物であった。

惣一郎も上空を、男達に速度を合わせ進みながら話を聞いていた。

「分からん! 今朝方消えた女神様がなぜビルナットに」

おっと… もうバレている様だな……






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