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第七章
十六話【迎え撃つ準備】
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町の食堂で食べ終えた惣一郎が、支払いをしていると、突然鐘が鳴り響く!
「おっ、早かったな」
「まだ距離あるで、ビビりすぎやろ」
「逃げる時間が必要なんだろ。転移屋は?」
「ああ、ドアは塞いどいたで」
「なんか悪い事してるよな……」
「そんなん言うてる場合ちゃうやろ! 余計な被害を出さん為や思うとき! つか、いつまで食うとんねん!」
テーブルの残りを口一杯に頬張るベンゾウ。
溜め息を吐く惣一郎が、杖をかざし空へと浮かんで行く。
逃げ始める町の人達の中から、
「オイあれ! まさか」
っと、声が聞こえ始める。
白いローブをなびかせ、杖の上に立つ惣一郎がそのまま外壁の岩壁に飛んで行く。
追い掛ける銀色の閃光。
「勇者だ、この町にも勇者様が来てくれたぞ!」
声は鐘の音をかき消す様に、町を包む歓声に代わる!
岩壁を越え、森に向かう惣一郎。
鐘の音もいつの間にか聞こえなくなり、人々が勇者が飛んでいった方角を見つめ、静まり返る町。
しばらくすると、岩壁の上に戻って来る惣一郎とベンゾウ。
惣一郎は倒した蟲の死骸をアイテムボックスから取り出し、下に投げ捨てる。
二匹の巨大なカブトムシ。
大きな音を立て落ちた動かない蟲に、人々から歓声が上がると、惣一郎達の姿は消えていた。
転移屋前でドラミと合流した惣一郎。
「惣一郎、さっきギネアから連絡が入ったそうや。なんでも大陸に向かう手助けをしてくれる翼族達と、偶然出会したそうや」
「えっ、もう? で協力はしてくれるのか?」
「ああ、夜にでも紹介するそうや」
「ブラギノールさんには悪いが、まだ完全に信用する訳には行かないんだ。会うのはユグポンの外って伝えてくれ。俺はこのまま転移屋から移動するから」
「セリーナにはそう伝えとくわ」
そう言うと、近くの植え込みに消えるドラミ。
惣一郎はその植え込みから種を拾い上げるとベンゾウと転移屋の中に入っていく。
町の人達は蟲の死骸がある外壁近くに集まりだし、転移屋は静かであった。
「誰か居ないか?」
カウンターで呼び掛ける惣一郎。
奥から2匹の服を着た猫が歩いて来る。
「申し訳ない、ドアが開かなくて今利用は出来ない状況でして……」
不思議そうな顔のネコと道具箱を手にしたネコが、白いローブ姿のふたりを見て驚く。
惣一郎は幻腕を出し、
「ドアはもう開くと思う。すまんが急ぎ人の少ない場所に転移したいんだが」
なるべく巻き込みたくない惣一郎の配慮だ。
きっと魔女が追ってくるだろう。
「人気の少ない…… なら二つ先の[ビルナット]か?」
っと、もうひとりのネコを見る。
「ああ、あそこならまだ人も少ないだろう」
数ヶ月前に蟲の被害に遭った町だそうだが、逃げた人達もその大半が戻っておらず、最近やっと転移屋が繋がったばかりだと言う。
「ああ、そこまで頼む!」
追ってを迎え撃つ気の惣一郎には都合のいい場所であった。
案内されるまま二度の転移を繰り返し、ビルナットと言う、爪痕が残る町に着く。
「ようこそビルナットへ」
天幕が張られ、壁の崩れた場所から夕陽が射し込む店舗であった。
惣一郎は幻腕を出し、店員のネコに事情を話す。
「今住民はどのくらいいるんだ?」
「えっ、はい。まだ10人ちょっとぐらいだと思いますが…… 町の西側の被害が酷く、ほとんどが駆けつけた傭兵の方々でして」
「わかった。みんなを集めて直ぐに避難できる様にしておいてくれ。もし俺を追ってくる様な奴が来たら、西側に向かったと言って構わないから」
「わかりました……」
惣一郎は町の西側、やっつけ補強の外壁近くに向かい、ユグポンを出す。
「おっ、早かったな」
「まだ距離あるで、ビビりすぎやろ」
「逃げる時間が必要なんだろ。転移屋は?」
「ああ、ドアは塞いどいたで」
「なんか悪い事してるよな……」
「そんなん言うてる場合ちゃうやろ! 余計な被害を出さん為や思うとき! つか、いつまで食うとんねん!」
テーブルの残りを口一杯に頬張るベンゾウ。
溜め息を吐く惣一郎が、杖をかざし空へと浮かんで行く。
逃げ始める町の人達の中から、
「オイあれ! まさか」
っと、声が聞こえ始める。
白いローブをなびかせ、杖の上に立つ惣一郎がそのまま外壁の岩壁に飛んで行く。
追い掛ける銀色の閃光。
「勇者だ、この町にも勇者様が来てくれたぞ!」
声は鐘の音をかき消す様に、町を包む歓声に代わる!
岩壁を越え、森に向かう惣一郎。
鐘の音もいつの間にか聞こえなくなり、人々が勇者が飛んでいった方角を見つめ、静まり返る町。
しばらくすると、岩壁の上に戻って来る惣一郎とベンゾウ。
惣一郎は倒した蟲の死骸をアイテムボックスから取り出し、下に投げ捨てる。
二匹の巨大なカブトムシ。
大きな音を立て落ちた動かない蟲に、人々から歓声が上がると、惣一郎達の姿は消えていた。
転移屋前でドラミと合流した惣一郎。
「惣一郎、さっきギネアから連絡が入ったそうや。なんでも大陸に向かう手助けをしてくれる翼族達と、偶然出会したそうや」
「えっ、もう? で協力はしてくれるのか?」
「ああ、夜にでも紹介するそうや」
「ブラギノールさんには悪いが、まだ完全に信用する訳には行かないんだ。会うのはユグポンの外って伝えてくれ。俺はこのまま転移屋から移動するから」
「セリーナにはそう伝えとくわ」
そう言うと、近くの植え込みに消えるドラミ。
惣一郎はその植え込みから種を拾い上げるとベンゾウと転移屋の中に入っていく。
町の人達は蟲の死骸がある外壁近くに集まりだし、転移屋は静かであった。
「誰か居ないか?」
カウンターで呼び掛ける惣一郎。
奥から2匹の服を着た猫が歩いて来る。
「申し訳ない、ドアが開かなくて今利用は出来ない状況でして……」
不思議そうな顔のネコと道具箱を手にしたネコが、白いローブ姿のふたりを見て驚く。
惣一郎は幻腕を出し、
「ドアはもう開くと思う。すまんが急ぎ人の少ない場所に転移したいんだが」
なるべく巻き込みたくない惣一郎の配慮だ。
きっと魔女が追ってくるだろう。
「人気の少ない…… なら二つ先の[ビルナット]か?」
っと、もうひとりのネコを見る。
「ああ、あそこならまだ人も少ないだろう」
数ヶ月前に蟲の被害に遭った町だそうだが、逃げた人達もその大半が戻っておらず、最近やっと転移屋が繋がったばかりだと言う。
「ああ、そこまで頼む!」
追ってを迎え撃つ気の惣一郎には都合のいい場所であった。
案内されるまま二度の転移を繰り返し、ビルナットと言う、爪痕が残る町に着く。
「ようこそビルナットへ」
天幕が張られ、壁の崩れた場所から夕陽が射し込む店舗であった。
惣一郎は幻腕を出し、店員のネコに事情を話す。
「今住民はどのくらいいるんだ?」
「えっ、はい。まだ10人ちょっとぐらいだと思いますが…… 町の西側の被害が酷く、ほとんどが駆けつけた傭兵の方々でして」
「わかった。みんなを集めて直ぐに避難できる様にしておいてくれ。もし俺を追ってくる様な奴が来たら、西側に向かったと言って構わないから」
「わかりました……」
惣一郎は町の西側、やっつけ補強の外壁近くに向かい、ユグポンを出す。
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