128 / 194
第七章
三話【腑に落ちない過去】
しおりを挟む
「どうでした? 美味しかったでしょ、ここの料理は!」
「ええ……」
正直何食ったか覚えてない。
「ではまた明日。寝る前にこれ飲んでゆっくりおやすみ下さい。乱れた魔力を整えてくれる薬です!」
「あ、ありがとうございます」
良い人だ、良い人なんだが……
食堂を出ると惣一郎はカウンターで、火の付いた蝋燭を受け取り暗い部屋に戻ると、植木鉢に種を置き村へと帰る。
中庭の食堂には戻ったゴゴ達が、遅めの夕食を食べていた。
「おかえりなさい惣一郎様」
「ただいま。どうだった?」
「それがその、腑に落ちない情報がありまして」
箸を置くゴゴが、難しい顔をする。
なんだろう?
「キッドについて運良く、詳しく知る者に会えたのですが……」
「それで」
「キッドは幼い頃、魔女崇拝者に家族を殺されているそうなのです」
ん? どういう事……
「何でもキッドの両親が、その魔女崇拝者の集まる組織[グルミターナ]のメンバーだったらしく、姉とキッド自身も凄惨な幼少期を過ごしていたそうなのです。ですがある日急に、組織から裏切り者扱いされた両親とキッドの姉が酷い殺され方をされたと…… 話してくれた人は幼いキッドの面倒を見ていた方でして、嘘は無いかと……」
グルミターナ……
「キッドがその過去を隠し、その組織に復讐を考えてるのかも知れないな」
「ええ、ですがそれなら何故、勇者である惣一郎様じゃなく、スワロ様を攫ってまで向こうについたのか」
「或いは、キッドの首に傷がある……」
「はい! すでに復讐に失敗し、魔女に傀儡されている可能性も……」
これも答えは直ぐに出ないか……
「わかった。取り敢えず傀儡の線が消えない以上、話を聞いた者も怪しくなってくる。ゴゴとエルネンドは、しばらく村で過ごせ!」
「わかりました。入口はすでにジジ達が、別の街に移動してますので」
その日はキッドの過去以外、有力な情報はなかったが……
「それとガリンバ! クチャクチャ音を立てて飯を食うな! マナーだろ!」
「ひぃー」
「何や荒れとるやないか、惣一郎」
暗い中庭から現れた、黒髪の少女。
「ドラミか、食事のマナーは大事だろ。折角の料理も美味さ半減だ!」
「そんな事より約束や、覚えてるやろ?」
そんな事って……
「ああ、ユグポンに魔力だろ?」
「せや、行くで!」
「何処に?」
「アホ! その辺であの魔力垂れ流してみぃ、みんな寝てられんわドアホ! 部屋用意したからついてき」
それで昼間いなかったのか……
惣一郎は言われるがまま、ドラミの後をついて行く。
すると畑の手前に石碑が置かれているのが見えた。
「あれは……」
「ドラゴンのや。みんな忘れたくないんやろ」
日は浅くとも村のみんなの気持ちに、嬉しくなる惣一郎が手を合わす。
「何処だドラミ、ちょっとやる気出てきたぞ」
「ええ心掛けや! こっちや」
ジル達が住む木の横に根っこがうねり出し、ドアが見える。
中は何も無い真っ暗な空間だった。
「ほな、ここで頼むで! いっぱいになったらノックするから、可能な限り毎晩でも顔出したってな」
言うだけで言って出て行くドラミ。
ドアが閉まると部屋は真っ暗であった。
ユグポンの為だ、気合い入れて頑張るか!
理喪棍を持ち、集中する惣一郎。
惣一郎の体から闇が魔力を引きずり出す感覚を覚える。
ユグポンは腹を空かしていたのだろうか?
全力で魔力を放出すると、3分そこらでノックが聞こえる。
放出をやめ、部屋から出る惣一郎。
外にドラミはいなかった。
放置かよ!
風呂でも入るか……
「ええ……」
正直何食ったか覚えてない。
「ではまた明日。寝る前にこれ飲んでゆっくりおやすみ下さい。乱れた魔力を整えてくれる薬です!」
「あ、ありがとうございます」
良い人だ、良い人なんだが……
食堂を出ると惣一郎はカウンターで、火の付いた蝋燭を受け取り暗い部屋に戻ると、植木鉢に種を置き村へと帰る。
中庭の食堂には戻ったゴゴ達が、遅めの夕食を食べていた。
「おかえりなさい惣一郎様」
「ただいま。どうだった?」
「それがその、腑に落ちない情報がありまして」
箸を置くゴゴが、難しい顔をする。
なんだろう?
「キッドについて運良く、詳しく知る者に会えたのですが……」
「それで」
「キッドは幼い頃、魔女崇拝者に家族を殺されているそうなのです」
ん? どういう事……
「何でもキッドの両親が、その魔女崇拝者の集まる組織[グルミターナ]のメンバーだったらしく、姉とキッド自身も凄惨な幼少期を過ごしていたそうなのです。ですがある日急に、組織から裏切り者扱いされた両親とキッドの姉が酷い殺され方をされたと…… 話してくれた人は幼いキッドの面倒を見ていた方でして、嘘は無いかと……」
グルミターナ……
「キッドがその過去を隠し、その組織に復讐を考えてるのかも知れないな」
「ええ、ですがそれなら何故、勇者である惣一郎様じゃなく、スワロ様を攫ってまで向こうについたのか」
「或いは、キッドの首に傷がある……」
「はい! すでに復讐に失敗し、魔女に傀儡されている可能性も……」
これも答えは直ぐに出ないか……
「わかった。取り敢えず傀儡の線が消えない以上、話を聞いた者も怪しくなってくる。ゴゴとエルネンドは、しばらく村で過ごせ!」
「わかりました。入口はすでにジジ達が、別の街に移動してますので」
その日はキッドの過去以外、有力な情報はなかったが……
「それとガリンバ! クチャクチャ音を立てて飯を食うな! マナーだろ!」
「ひぃー」
「何や荒れとるやないか、惣一郎」
暗い中庭から現れた、黒髪の少女。
「ドラミか、食事のマナーは大事だろ。折角の料理も美味さ半減だ!」
「そんな事より約束や、覚えてるやろ?」
そんな事って……
「ああ、ユグポンに魔力だろ?」
「せや、行くで!」
「何処に?」
「アホ! その辺であの魔力垂れ流してみぃ、みんな寝てられんわドアホ! 部屋用意したからついてき」
それで昼間いなかったのか……
惣一郎は言われるがまま、ドラミの後をついて行く。
すると畑の手前に石碑が置かれているのが見えた。
「あれは……」
「ドラゴンのや。みんな忘れたくないんやろ」
日は浅くとも村のみんなの気持ちに、嬉しくなる惣一郎が手を合わす。
「何処だドラミ、ちょっとやる気出てきたぞ」
「ええ心掛けや! こっちや」
ジル達が住む木の横に根っこがうねり出し、ドアが見える。
中は何も無い真っ暗な空間だった。
「ほな、ここで頼むで! いっぱいになったらノックするから、可能な限り毎晩でも顔出したってな」
言うだけで言って出て行くドラミ。
ドアが閉まると部屋は真っ暗であった。
ユグポンの為だ、気合い入れて頑張るか!
理喪棍を持ち、集中する惣一郎。
惣一郎の体から闇が魔力を引きずり出す感覚を覚える。
ユグポンは腹を空かしていたのだろうか?
全力で魔力を放出すると、3分そこらでノックが聞こえる。
放出をやめ、部屋から出る惣一郎。
外にドラミはいなかった。
放置かよ!
風呂でも入るか……
13
お気に入りに追加
261
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる