118 / 194
第六章
十三話【それぞれの使命】
しおりを挟む
暗い夜の中、町の外壁の上でひとり惣一郎は、サーチを張り続けていた。
スワロが自力で逃げ出した時、すぐに強制転移で逃れる様に。
スワロ……
首輪をされていると奴隷契約が上書きされ、強制転移も惣一郎との魔力も使えないだろう。
まさかそんな魔導具があるとは……
チート過ぎる力に、慢心していた自分を責める。
冷たい風が吹く外壁の上で、冷静にならねばと頭を冷やす惣一郎だった。
翌朝、皆を中庭の食堂に集め、朝食を摂りながら惣一郎は、
「これからババの言っていた、魔女時代の生き残りの蟲を倒しに向う」
「スワロ様は!」
「現状、見事に敵の策に嵌り、居場所も目的も分からない。奴ら魔女崇拝者の言う使命がもし、魔女の復活を意味し、また蟲を使って戦争を起こす物だとしたら、その時代を生きた生き残りに近付く可能性がある」
「そうかも知れませんが……」
「確かに薄い賭けだ。だが他に動き様が無い。これ以上、後手に回る訳にもいかないしな!」
「じっとしてる訳にもいかないですしね!」
「ギネア、それとホルスタインとタイガは、この町を拠点に魔女崇拝者を洗ってくれ!」
「分かりました」
「ゴゴ、騎士団を連れ、他の街からも情報を集めてくれ! 特にキッドがいたケンズールの街を」
「了解致しました」
「ドラミは、森から情報を集めてくれ。それらしい一行がいないか、木とのネットワークを使って調べてくれ」
「ねっとわく? 何やねんそれ! まぁええ、任せとき! 近くの森を行き来する奴を見逃さへんで!」
「ミネアは皆んなからの情報をまとめて、俺に報告してくれ」
「承知しました。ですが、惣一郎様、まさかおふたりで蟲を倒しに?」
「ああ、余裕だ。相手が蟲ならなベンゾウ!」
「うん! 余裕」
「惣一郎様、私達もお手伝いします! 元奴隷商の私達なら、それなりに情報の伝手もありますので」
「ありがとうキューテッド。では村はここに置いていくから、ミネアに後のことは任せる」
「お任せ下さい!」
慌ただしく食事を終える者から席を立ち、動き出す。
惣一郎も焼き鮭に箸を刺す……
繁華街を訪れる惣一郎は、傾いた看板を見て、背中を丸め転移屋に向かう。
白いローブ姿のふたりに、数人が気付き物陰に隠れる。
転移屋から数カ所街を経由して、ユースエル街に戻って来た惣一郎。
朝から賑わう歓楽街を抜け、街を出ると惣一郎は、ババに貰った簡易な地図を頼りに、南に飛び始める。
理喪棍に腰を乗せ転移を繰り返し、夕方にはこの前倒した蟲の巣にたどり着く。
ババの地図はここからだった。
「えっと、ババの村があったのが南だから…… 遺跡は向こうの方角かな?」
「ご主人様、暗くなるよ! お尻痛いし」
確かに、暗くなるか……
惣一郎は崖の上に久々にテントを出して、中に入る。
中はスワロと旅してた頃のままだった。
「ねぇご主人様。スワロ大丈夫かな~」
「ああ、きっとすぐに会えるさ……」
スワロが自力で逃げ出した時、すぐに強制転移で逃れる様に。
スワロ……
首輪をされていると奴隷契約が上書きされ、強制転移も惣一郎との魔力も使えないだろう。
まさかそんな魔導具があるとは……
チート過ぎる力に、慢心していた自分を責める。
冷たい風が吹く外壁の上で、冷静にならねばと頭を冷やす惣一郎だった。
翌朝、皆を中庭の食堂に集め、朝食を摂りながら惣一郎は、
「これからババの言っていた、魔女時代の生き残りの蟲を倒しに向う」
「スワロ様は!」
「現状、見事に敵の策に嵌り、居場所も目的も分からない。奴ら魔女崇拝者の言う使命がもし、魔女の復活を意味し、また蟲を使って戦争を起こす物だとしたら、その時代を生きた生き残りに近付く可能性がある」
「そうかも知れませんが……」
「確かに薄い賭けだ。だが他に動き様が無い。これ以上、後手に回る訳にもいかないしな!」
「じっとしてる訳にもいかないですしね!」
「ギネア、それとホルスタインとタイガは、この町を拠点に魔女崇拝者を洗ってくれ!」
「分かりました」
「ゴゴ、騎士団を連れ、他の街からも情報を集めてくれ! 特にキッドがいたケンズールの街を」
「了解致しました」
「ドラミは、森から情報を集めてくれ。それらしい一行がいないか、木とのネットワークを使って調べてくれ」
「ねっとわく? 何やねんそれ! まぁええ、任せとき! 近くの森を行き来する奴を見逃さへんで!」
「ミネアは皆んなからの情報をまとめて、俺に報告してくれ」
「承知しました。ですが、惣一郎様、まさかおふたりで蟲を倒しに?」
「ああ、余裕だ。相手が蟲ならなベンゾウ!」
「うん! 余裕」
「惣一郎様、私達もお手伝いします! 元奴隷商の私達なら、それなりに情報の伝手もありますので」
「ありがとうキューテッド。では村はここに置いていくから、ミネアに後のことは任せる」
「お任せ下さい!」
慌ただしく食事を終える者から席を立ち、動き出す。
惣一郎も焼き鮭に箸を刺す……
繁華街を訪れる惣一郎は、傾いた看板を見て、背中を丸め転移屋に向かう。
白いローブ姿のふたりに、数人が気付き物陰に隠れる。
転移屋から数カ所街を経由して、ユースエル街に戻って来た惣一郎。
朝から賑わう歓楽街を抜け、街を出ると惣一郎は、ババに貰った簡易な地図を頼りに、南に飛び始める。
理喪棍に腰を乗せ転移を繰り返し、夕方にはこの前倒した蟲の巣にたどり着く。
ババの地図はここからだった。
「えっと、ババの村があったのが南だから…… 遺跡は向こうの方角かな?」
「ご主人様、暗くなるよ! お尻痛いし」
確かに、暗くなるか……
惣一郎は崖の上に久々にテントを出して、中に入る。
中はスワロと旅してた頃のままだった。
「ねぇご主人様。スワロ大丈夫かな~」
「ああ、きっとすぐに会えるさ……」
12
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜
福寿草真
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】
何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。
魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!?
これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。
スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる