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第六章

十三話【それぞれの使命】

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暗い夜の中、町の外壁の上でひとり惣一郎は、サーチを張り続けていた。

スワロが自力で逃げ出した時、すぐに強制転移で逃れる様に。

スワロ……

首輪をされていると奴隷契約が上書きされ、強制転移も惣一郎との魔力も使えないだろう。

まさかそんな魔導具があるとは……

チート過ぎる力に、慢心していた自分を責める。

冷たい風が吹く外壁の上で、冷静にならねばと頭を冷やす惣一郎だった。



翌朝、皆を中庭の食堂に集め、朝食を摂りながら惣一郎は、

「これからババの言っていた、魔女時代の生き残りの蟲を倒しに向う」

「スワロ様は!」

「現状、見事に敵の策に嵌り、居場所も目的も分からない。奴ら魔女崇拝者の言う使命がもし、魔女の復活を意味し、また蟲を使って戦争を起こす物だとしたら、その時代を生きた生き残りに近付く可能性がある」

「そうかも知れませんが……」

「確かに薄い賭けだ。だが他に動き様が無い。これ以上、後手に回る訳にもいかないしな!」

「じっとしてる訳にもいかないですしね!」

「ギネア、それとホルスタインとタイガは、この町を拠点に魔女崇拝者を洗ってくれ!」

「分かりました」

「ゴゴ、騎士団を連れ、他の街からも情報を集めてくれ! 特にキッドがいたケンズールの街を」

「了解致しました」

「ドラミは、森から情報を集めてくれ。それらしい一行がいないか、木とのネットワークを使って調べてくれ」

「ねっとわく? 何やねんそれ! まぁええ、任せとき! 近くの森を行き来する奴を見逃さへんで!」

「ミネアは皆んなからの情報をまとめて、俺に報告してくれ」

「承知しました。ですが、惣一郎様、まさかおふたりで蟲を倒しに?」

「ああ、余裕だ。相手が蟲ならなベンゾウ!」

「うん! 余裕」

「惣一郎様、私達もお手伝いします! 元奴隷商の私達なら、それなりに情報の伝手もありますので」

「ありがとうキューテッド。では村はここに置いていくから、ミネアに後のことは任せる」

「お任せ下さい!」

慌ただしく食事を終える者から席を立ち、動き出す。

惣一郎も焼き鮭に箸を刺す……





繁華街を訪れる惣一郎は、傾いた看板を見て、背中を丸め転移屋に向かう。

白いローブ姿のふたりに、数人が気付き物陰に隠れる。

転移屋から数カ所街を経由して、ユースエル街に戻って来た惣一郎。

朝から賑わう歓楽街を抜け、街を出ると惣一郎は、ババに貰った簡易な地図を頼りに、南に飛び始める。

理喪棍に腰を乗せ転移を繰り返し、夕方にはこの前倒した蟲の巣にたどり着く。

ババの地図はここからだった。

「えっと、ババの村があったのが南だから…… 遺跡は向こうの方角かな?」

「ご主人様、暗くなるよ! お尻痛いし」

確かに、暗くなるか……

惣一郎は崖の上に久々にテントを出して、中に入る。

中はスワロと旅してた頃のままだった。

「ねぇご主人様。スワロ大丈夫かな~」

「ああ、きっとすぐに会えるさ……」






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