上 下
113 / 194
第六章

八話【失踪】

しおりを挟む
2枚の円盤を従え、血に染まる戦鎚を肩に担ぐホルスタインが、惣一郎に追い付く。

「旦那様、私の出番がこの円盤に、ほとんど取られるのですが!」

「あはは、便利だろ!」

惣一郎を旦那様と呼ぶホルスタインは、大きさといい、弁慶を思わせる。

筋肉質では無いが、胸の大きさは弁慶より上だ。

それよりも気になる王の首輪。

魔獣が作った物には見えなかった。

「ご主人様、スワロがサボってる見たいだから、行って来るね!」

確かにまだ、ライノルフが中央に残っている……

「ああ……」

返事も待たず、閃光が残像を残す。

「なぁ、ホルスタイン。これなんだと思う?」

「コレって…… 魔導具の隷属の首輪に似てますね…… 契約と違い簡易で縛れるそうですが、効果も一時的になると聞きます」

操られていたって事か?

首輪を拾い、王を収納する惣一郎が、ベンゾウの後を追いかけ、歩きだす。



外壁の近くまで戻る惣一郎。

立っているライノルフはもういなかった。

そしてギネアも……

「おい! どうしたギネア! やられたのか!」

傍らに立つベンゾウが、

「ご主人様…… スワロがいない」

っと呟く。

頭が回らない。

ホルスタインがギネアを起こし、怪我の具合を確かめる。

「気を失ってる様です!」

「ベンゾウ来た時にはこの人、倒れてたよ」

「何があったんだ……」

外壁を見上げる惣一郎。

見下ろす町の傭兵達も、疲労を浮かべ何かあったのかと、不思議そうな顔を向ける。

サーチ!

…………… クソっ、こんな時に!

大型の蟲が向かって来る。

スワロは何処だ!

外壁に登り、周りを見渡すベンゾウ。

惣一郎も上空高く飛び、サーチの範囲を広げる!

何処だスワロ……

すると外壁の上の男が森を指差し、大声を上げる!

「蟲だ! 蟲が来るぞ!」

「旦那!」

遅れて戻って来たタイガも、蟲が来ることを指を刺し、伝える。

正直それどころじゃ無い。

ここで惣一郎は、キッドもいない事に気付く。

何があった……

王の首輪を握りしめる。



森の中を木を薙ぎ倒し、迫る大きな白とピンクのカマキリ。

腹部が広がり花びらの様な形で擬態する、惣一郎でも知るカマキリだが、デカい!

擬態する意味など無い、巨大なハナカマキリは、10mをゆうに越す大きさで、惣一郎達が倒したライノルフを地面からハサミで掬い上げると、抱え込む様に食べ始める。

滴る血で赤く染まるハサミで次から次へと、凄い勢いで食べていく。

その大きさと食欲に、言葉を失う惣一郎達。

バキバキと噛み砕く音だけが、森に響いていた。







しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...