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第六章

七話【魔獣ごとき】

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セリーナがギネアにコールを送る事、数分。

中庭の第ニ第三の大木の間に作られた扉から、ホルスタインが現れる。

「旦那様!」

待ち構えていた惣一郎は、ホルスタインの後ろ見える景色が、町中である事に驚く。

凄い…… やっぱ便利だ!

「行くぞベンゾウ、スワロ!」

入り口が繋がるとその方向にだけ、村から見える窓の景色も変わる。

ホルスタインの後を追い、ドアを潜る惣一郎達。

長閑な町の風景には人の姿が見えず、ホルスタインが「こっちです!」っと外壁の方へ走りだす。

3m程の外壁の上で、必死に魔獣の侵入を阻止しようと戦う町の傭兵に混じり、ギネア達も戦っていた!

瞬間移動でその上空に出る惣一郎が杖にぶら下がり、空中から見たものは、狼男の大群であった。

外壁に体当たりする者や、森の木を利用し、上から侵入を図る者。

森を埋め尽くす大群の奥に、一際大きな狼男の姿も見えた!

「ベルフ…… いや、ライノルフの大群か!」

壁を越え、ライノルフを素手で殴りつけるキッドの姿も見えた!

外壁の上で薙刀を振り回すギネアの元に、降りる惣一郎。

ベンゾウとスワロも同時に追い付く!

「ギネア!」

「惣一郎様! 済まん、数が多く手こずっておる!」

「みたいだな、俺たちで先行して数を減らす! このまま町に入れるな!」

「わかった!」

「スワロ! ベンゾウ! 少し離れて応戦するぞ! スワロは下のキッドの後ろに! ベンゾウは右だ」

コクンと頷くベンゾウ。

両手に青い炎が吹き出し、握られた2本の小刀を手に、残像を残し消える!

バタバタと倒れていくライノルフ!

外壁を飛び降り、下で戦うキッドの後ろで杖を構え、スワロも青い炎を漂わせ集中する!

惣一郎は瞬間移動で左に無数の槍を降らせながら、大型のライノルフめがけ歩きだす!

槍を躱し近付く狼男は、幻腕で殴られ宙を舞う!

中央のスワロが目の前の大群にめがけ、白い雷光を走らせると、動きを止め倒れるライノルフが煙を上らせる!

一撃で数十体のライノルフを仕留めるスワロの魔法!

本領発揮だ!

その奥に走る銀の閃光!

スワロの魔法に負けない速度で、狼男を斬り刻んで行く!

たった3人で何百という大群を相手に前線を切り開いて行く姿に、驚くギネア達!

町の戦士達の手も止まる……

「な、何者なんだ……」

傭兵のこぼした声に、負けてられぬと壁を飛び降りるギネア!

「タイガとホルスタインは左右に! 町の者は外壁を守れ!」

大声で指示を飛ばすギネアが、スワロの前で薙刀を構える!

「キッド、前進だ!」





地面に棍を突き、大きな跳躍を見せるタイガ!

銀の閃光に追い付けないと気付くと、大木に登ろうとするライノルフの脇に、棍を深くめり込ませる!

「あんなのに援護なんて必要ないだろ!」




惣一郎に追い付くホルスタイン!

大きな戦鎚でライノルフを叩き潰すと、背後から狼の爪が襲い掛かる!

だが、狼男の上半身は前を見たままホルスタインの足元に落ちる。

ホルスタインの周りを飛ぶ円盤。

「ここは任せるぞ!」

っと、円盤とホルスタインを置き去りに、消える惣一郎!

戦況が変わり焦る大型のライノルフの前に、瞬間移動する!

「お前が王だな!」

だが、惣一郎は王の首に付けられた首輪に、違和感を覚え、先制攻撃を王に許す!

腰を曲げ地面を這う様に突進して来る王から、5本の爪が線を描く!

空間をも切り裂きそうな5本の線は、透明な盾に遮られ、惣一郎に届かない!

その右脇腹に空いた隙に、幻腕が減り込む!

ガブッ!

息を漏らし苦悶する狼の王が、直ぐ様後ろに飛ぶと、追いかける様に槍が地面に刺さっていく!

5本では王に届かない!

歩き寄る惣一郎!

空を覆い尽くす無数の槍!

その空を見上げる王は、自分の未来を悟った様に目から光が失われる。

次の瞬間、ゴロンっと王の首が前に落ちる。

失われた頭部の影に立つ、銀髪の乙女……

乙女と言うにはとうがたつ、そのベンゾウは光悦の表情を浮かべていた。

「横取りすんなよ!」

「ベンゾウのが早かったね!」

うっとりした表情のベンゾウ。

幼さの残るベンゾウだったが、妖艶に笑うその姿は、昔のベンゾウとは違う様だ……








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