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第六章

二話【祭ごと】

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見送った惣一郎が村に帰ると、ベンゾウとスワロが正座し、まだドラミに説教を受けていた。

見上げると、惣一郎の住むキッチンの一部に大穴が空いており、ドワーフ達が髭を撫でながら悩んでいる。

「ただいま、直りそうか?」

「あっ、おかえりご主人様!」

「だぁコラ! まだ説教の途中や! つかスワロお前、目瞑って反省しとる様で寝てるやろ!」

「………………………おっ、おかえり主人よ!」

寝てたな……

「お前ら、ユグポンの一部は再生を待たな治らへんのやぞ! 髭面のチビが作ったもんとはちゃうねんど!」

チビって……

「まぁそう、目くじらを立てるなドラミ殿。ベンゾウ殿も反省している」

「ど、ど、どこがやアホ!」

惣一郎に抱きつくベンゾウ。

姿勢良く正座をするスワロが、スッと立ち上がり、膝の埃を払いながら、

「さっ、主人よ、疲れたであろう。お茶でも淹れよう!」

っと、惣一郎に抱きつくベンゾウの腕を掴む。

「なに、スワロ? またやられたい?」

「ほぉ、やられた覚えは無いが、ベンゾウ殿。主人は疲れているのだ。いい加減、降りたらどうだ?」

「ベンゾウ、グラビティーの魔法で軽くなってるもん。ご主人様重く無いよね~」

いや確かに、重さは感じないが……

「主人の重荷になってると言っているのだ」

黒い魔力が吹き出すスワロ。

「ええ加減にせ! まだ説教の最中や言うとるやろ!」

「ベンゾウ、スワロ! ドラミの言う通りだ。いい加減にしろ!」

オロオロするミネア。

「お前ら急にどうしたんだ、あんなに仲が良かったのに」

「主人よ、正妻はどっちなのだ?」

はい?

「ベンゾウでしょ! スワロ前にコイチの村で愛人って言ってた!」

「昔の話だ! 今主人を思う気持ちはベンゾウ殿にも負けん!」

「アホ、惣一郎の性はウチのもんや!」

「気持ちなら私も……」

赤くなるミネア。

ややこしくなってきた……

「待て待て、正妻って、お前ら奴隷じゃん」

「ご主人様ベンゾウ奴隷だけど、奥さんでしょ!」

「愛の奴隷だ!」

「せや、正式に決めようやないか! 誰が本当の惣一郎の女か!」

「「「「 おおおお~ 」」」」

変な方向に盛り上がり出した村人。

奥の畑からも集まりだす女性陣。

会場作りに走りだすドワーフ達。

ゴゴとジジはニヤニヤと腕を組み、傍観者気取りであった。

モテ期は素直に嬉しいが、違う……

コレじゃない……

異世界に来るまでモテた事がない惣一郎は、戸惑いながらも、この状況は俺を景品に、盛り上がってるだけだと勘を働かせるのである……







「では第一回、惣一郎様の嫁は誰だ! 勇者惣一郎の正妻決定戦を始めます!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

惣一郎の勘は当たっていた……

「司会進行は、わたくしローズが務めさせて頂きます!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

盛り上がる中庭の食堂で、忙しなく酒や食べ物を並べるメイド達。

子供達は意味も分からず、お菓子を片手に声を上げる。

簡易に作られたステージの様な台の上で、豪華ぽいだけの椅子に座らされる惣一郎。

メイド服のまま、調理器具のおたまを握り、ノリノリのローズ。

激しく動くたびに、胸が溢れそうなエルフが、

「では、候補者を紹介します! まずは我らがメイド長、ミネア!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

村が出来てからみんな良く働き、住み良くしてくれたが、娯楽に飢えてた様だ……

「次に、名乗りを挙げたのは、意外にも隠れて淡い恋心を抱く、ジル!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

ジルは畑や果樹園を仕切り、村に恵みをもたらせてくれた功労者だ。

「そして、姉の恋心に待ったをかけた、まだ幼い見た目のエルフ、マチリナ!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

おいおい、実年齢は知らんが見た目で犯罪じゃ無いか……

「そして大穴、品の無い性格に隠された、真っ直ぐな愛の持ち主、ドラミ!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

品が無いって言われてますが……

「次が本命か、異世界から招かれた勇者の中の勇者、銀髪の獣人、ベンゾウ!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

ローズ、お前…… どっかで司会の仕事でもやってたのか?

「そして最後、運命の出会いを果たした、漆黒の魔女、ど本命のスワロ!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

スワロも打ち解けて来たな~ 魔女と要らぬ恐れを持たれていたが……

「以上、6名による惣一郎様の正妻争奪戦の開催を、ここに宣言します!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

「なお、今回名乗りを挙げ無かった者も多く存在しておりますが、その者達は愛人でいいとの事! ほとんどの村の女性を代表して私からも宣言します! 惣一郎様、いつでもお声がけを!」

「「「「「 おおおおお~ 」」」」」

アホばっかなのか……







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