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第六章

一話【ギネア情報部隊】

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「積込みは終わったのか?」

蟻の背に大量の蟲の素材を積み込む男達に、ギネアが声をかける。

ドワーフのカンが「慎重に運ばんか!」っと、声を荒げる。

貯まった素材を売りに、ユースエル街に戻ってきた惣一郎達が、ギネア達の出発に合わせ、街に素材を売りに行く事になったのだ。

岩の様な大男[イワオ]が軽々と、大きな荷物を蟻の背に重ねる。

無口な謎の多いイワオ。

蟻は自分の何十倍もの荷を背負い、キッドの後を付いて歩き始める。

「準備出来たか?」

大きなフードを付けた白いローブ姿の惣一郎。

ギネアやキッドも同じ白いローブを着ていた。

「ああ、取り敢えずコレで向かう。いっぺんに売る量じゃないからな」

蟻の背負う荷を見ながら、ギネアが答える。

素材を売りながら、蟲の情報を集めに向かう事になったグループのリーダーは、薙刀を持つ鱗族の戦士、ギネアが務める。

同行するメンバーは、

キッド(ナルシストボクサー)

タイガ(棍を持つ、虎の獣人)

ホルスタイン(大きな戦鎚を背負う、大柄な牛の獣人女性)

の4人であった。

みんな、白いローブ姿であった。

彼ら情報部隊は、ユースエルで素材を売った後、北から東へ回る経路で進む。

連絡係はギネアと契約を結び村に残るミネアの妹、エルフのセリーナである。

そのセリーナも惣一郎と出発を見送る。

「では2、3日したら、一度戻ってくる」

「お気をつけて」

「じゃ、行くか!」

転移屋まで惣一郎も同行する。

街の外れの林から現れる一行。

ベンゾウとスワロは今回、朝食に蕎麦かカレーで揉め、部屋を半壊させた罰として、留守番する事になる。

大人と思っていたスワロが、ベンゾウの挑発に乗った結果、惣一郎を怒らせたのだ。

スワロにベンゾウの悪い要素まで移ったのだろうか……

「そだ、ほれ!」

キッドに砂鉄の入った防刃グローブを投げ渡す惣一郎。

「コレは……」

「キッドの武器だ。今着てるインナーと合わせれば、ジャニーと張り合えるだろう」

日々訓練に真面目に取り込むが、騎士団序列最下位からまだ抜け出せないキッドに、惣一郎が用意した物であった。

「おお、ありがたい!」

「真面目にやってるみたいだしな。キッドの蟲を使役するスキルには期待してるんだ」

「ああ、任せてくれ! 騎士団が騎乗する蟲に俺が最高の物を用意しよう!」

「無茶はするなよ、蟻みたいに大群でいる事が多いんだ。手に余る場合は直ぐに呼ぶんだぞ」

「わかった」

すると先頭を歩くギネアが、

「我々の任務は情報収集だ。目的を見誤るなよキッド!」

っと、振り返る。

訓練の中、キッドはギネアに学ぶ事が多いと感じ、今回付いて行くと自ら志願したのである。

「うっす! 隊長」




素材屋で荷を減らす、白いローブの一行。

高額な為、一箇所で全て売るのはやはり難しい様だ。

「コレだけで村人全員一年は贅沢できるぞ……」

「まぁ、あって困るもんじゃ無いし、奴隷解放にも金はかかるだろうからな。多い分はミネアに渡しておいてくれ。足らない時もミネアに相談する様に」

「ああ、わかった」

後は転移屋だな……



転移屋に着く惣一郎は、店員に幻腕を見せる。

「おお、勇者様! ご利用ですか?」

「ああ、ちょっと相談があるんだが」

惣一郎は、各地に被害を出す蟲の情報を集める為に、仲間を先行させたい旨を話す。

「なるほど、こちらの方々も勇者様同様、利用したいと言うのですね」

「ああ、封鎖された転移屋で足止めされたりしたら困るんだ。スムーズに利用できる様にしたい。勿論、有料でも構わないから、俺が居なくても利用できる様な、パスの様な物がないか相談なんだが……」

「勇者様のお仲間からお金を取るなんて出来ませんよ! 勿論直ぐにでも情報を回し利用できる様に手を打ちましょう。それまではこの職員用のカードをご提示下さい」

「すまん、助かるよ! 今後、別行動の仲間が増えると思うから、コレは前払いと思ってくれ」

惣一郎はカウンターに魔石を山積みにする。

驚き遠慮する店員に「商売は商売だ!」っと、転移屋全体での支援に感謝をする。



「では、2、3日で一旦戻る。種も早く試してみたいからな」

「ああ、頼んだぞ」

「では惣一郎様、行ってきます」

見送る惣一郎。

蟻も通れる大きな扉を潜り、奥の部屋に消えるギネア達。

カウンターの魔石に、まだ驚く猫の店員。

出発したギネア達から応援要請が来るのは、その2日後であった……







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