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第五章

二十一話【変化】

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「ハクの圧縮スキルをか?」

「ああ、さっきベンゾウ殿と契約をした時に、急に理解した気がしてな、他にも色々と魔法が使える気がするんだ。集中すると、こう…… 頭の中に陣が思い浮かんで来る感じだ」

何それチートじゃん!

「でも、ハクのは魔法じゃ無くスキルだぞ?」

「仕組みは一緒なのだ…… なんて言うか…… 分からん、やってみよう!」

不思議な話だったが、惣一郎には分からなくもなかった。

惣一郎自身、さっきの契約から明らかに、自分に変化があった覚えがある。

上手く説明が出来ないが……

「ベンゾウもね、凄いんだよ! 魔力だけじゃなくって、なんかこう…… んと……」

やはり3人と繋がった事で、みんなに変化があった様だ。

「わかったスワロ! 試して見よう。入り口まで飛ぶぞ」

「いや主人よ、ここでいい」

杖を構えるスワロの前に風が集まりだし、小さな圧縮された空気の球が出来て行く。

驚く惣一郎は直ぐに蜂用のスプレーを大量に出し、穴を開け始める。

吹き出す中身が、その球に吸われていく。

白く色を変える球体は、バスケットボール程の大きさになり、回っている。

するとスワロが杖で操作し、球体が洞窟の中へとふわふわ浮いて行く。

「なるほど、動かせるのか……」

「主人よ、サーチを!」

「えっ、ああ。えっとそのまま前に降って……」

「いや主人よ、私にも見える!」

マジか……

「着いた! 行くぞ」

やや遅れて洞窟の入り口から突風が吹き出す!

「おお~ 苦しんでるね~」

あら、ベンゾウにも見えるのね!

だが苦しんではいるが、倒れる蟲はいない。

突風が止むと入口に瞬間移動する3人。

「来るぞ!」

ふたりが並べる程の大きさの洞窟の奥から、カサカサと慌ただしい音が響いてくる。

「じゃ、今度はベンゾウね!」

銀髪をなびかせ、前に出るベンゾウ。

その両手から吹き出す様に青白い炎が現れると、燃える手の中に、2本の白い小刀が握られていた。

「えっ、それって……」

「聖なる魔力…… 主人の魔力だ!」

おいおい、浄化されないだろうな…… 國家達。

壁に張り付きながら、泡を吐く人型の黒い蜂が、重力を無視して迫って来る。

ゆっくりと前に出るベンゾウが、ふわっと消える。

すでに残像だった。

ユラユラと奥に青白い光が続くと、向かって来る全ての蜂は、首が落とされ、惣一郎の前に転がる。

「えっと…… 俺にも見えるんだが…… アイツの動きが……」

微笑むスワロが惣一郎の背中をそっと押す。

死骸の山の中を、回収しながら奥へと進んで行くと、広がる空洞に出る。

村ほどの大きな空間に、天井からぶら下がる巨大な蜂の巣。

その大きな巣を眺め、立っているベンゾウ。

「上位種を雑魚扱いかよ! 凄いな…」

周りに広がる死骸を目に惣一郎が呟く。

「ご主人様、あの中にまだ5匹いる」

惣一郎もサーチで気付いていた。

しかも1匹は、特別大きい。

巣の中で毒の影響が少なかったのか、お元気そうで……

するとスワロからまたも、青白い炎が吹き出し、杖を向けるだけで、白い稲妻が巣へと走る!

お前もかよ!っと、慌てて耳を塞ぐ惣一郎!

だが、いつもの爆音はなかった。

弾ける様に崩れ、燃え上がる蜂の巣。

その青い炎の中から、立ち上がる4匹の蟲。

後ろには、大きな腹部を引きずる人型では無い大きな蜂の姿が見えた。

その脚には、人だろう残骸が抱え込まれていた。

食事中だったのか?

しかも、お怒りの様です。

盾を2枚出し、タングステンの槍を何本も宙に浮かせる惣一郎。

ベンゾウはすでに、左の2匹と交戦中。

ベンゾウの速さについて行ける蜂に驚き、気を引き締める惣一郎。

その一瞬!

杖を構えるスワロめがけ、勢いよく迫る1匹に、惣一郎が盾を飛ばし壁に押し付ける!

同時に、残りの1匹がその惣一郎に迫る!

スワロが光剣を出し、壁に押し付けられた蜂を串刺しにすると、槍が降る中をすり抜けながら迫る蜂を、幻腕で殴りつける!

顎を砕き、よろける蜂の首が落ちる。

その後ろには、ベンゾウが立っている。

向こうの2匹も頭を失い、倒れていた。

キシャーーーーーー!

巨大な腹部が重く、身動き出来ない大きな蜂。

残りはこの女王蜂だけだった。






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