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第五章

十八話【物乞い】

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森に広がる無数の死骸。

中にはまだ脚を動かすものもおり、タイガ達がトドメを刺して歩く。

ハクにキュアをかける惣一郎。

「あんなスキル持ってたんだな。助かったよ」

「いえ、ただ空気を集めるだけの役に立たないスキルだったのですが……」

杖を眺め、驚きを隠せないハク。

「主人の毒と相性がいい様だな!」

しゃがみ込み、ホッとするスワロ。

ベンゾウもトドメを刺しに、走り回っている。

惣一郎に貰ったマスクを広げ、ゴゴが、

「これで毒を防げるのですか?」

っと、信用してない様子。

「ああ、みんなに渡しておいてくれ」

そう言うと惣一郎は油ぎった死骸を見て、収納したく無いな~とも言ってもいれず、回収を始める。


「あの数の蟲を、一撃だぞ…… なんて毒だ」

「ああ、主人の毒は、凄まじいぞ!」

「私の役にも立たなかったスキルが、まさかこんな形でお役に立てるとは……」





数百匹にも及ぶ、ゴキブリの死骸を回収した惣一郎が、今度は蜂用のスプレーをみんなに持たせる。

「目的の巣に着くのは夜になるだろう。だがすでに奴らのテリトリーに入っている。いつ現れてもおかしくないから、その時は慌てずにこのスプレーを使うんだぞ」

「さっきのと絵が違いますね」

「ああ、蟲の種類によって違うんだ。効かないのもいるから十分注意しろ」

改めて説明すると、巣を目指し歩き始める。

流石に朝食を摂る気にはならなかった……




歩きながら惣一郎はハクに、

「あの圧縮はどこまで出来るんだ?」

っと、質問していた。

「あんな威力で使えたのはあれが初めてで、さっきのが限界かと」

「十分使えるよ! 後でマジックバッグを買って、ハクに殺虫剤を渡しておくよ」

「あんな高価な物を! こ、光栄です!」

高いのよね~ こっちのマジックバッグは。

するとポケットから声が聞こえて来る。

「聞いとったで! ウチに任せとき」

「盗み聞きすんなよ」

「アホ惣一郎! ウチの考え聞いたら、そんな事言えんようになるで!」

「で、どうすんのよ」

「まだ内緒や!」

なんだかな……




しばらく森を進むと「ご主人様」っと、抱きつくベンゾウさん。

「ご主人様、先にまたなんかいるよ!」

「へ? ちょ、ストップ!」

先を歩くゴゴ達が振り向く。

今度は何よ……

サーチを広範囲に広げる惣一郎。

蟲の気配は無い。

「あれ? コレって……」

以前にも感じた事がある反応は、先の木から感じ取れた。

「なぁ、他所のツリーハウスに話しかけるのってマナー違反か?」

首を傾げる一同。

「さぁ…… 分かる者がおりますせんので」

「分かるのですか? ツリーハウスが」

「なんとも出鱈目だな、旦那は……」

間違いなく生体反応の様な物を感じる惣一郎。

ベンゾウにも分かるのだろうか?

すると向こうから目の前に現れる!

木から現れたのは、年配の女性。

白髪に痩せ細った体は60を超える老婆だった。

「旅の方、突然申し訳ない! 何か食べ物を分けて貰えないだろうか」

震える細い腕を出し、物乞いを始める老婆。

その見た目から、何日も食べて無いのは直ぐに分かった。

「子供達も居るのです! どうか、どうかパン一切れでも…」

そのまま意識を失う老婆に、木の中から何人もの子供が慌てて飛び出して来る。







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