95 / 194
第五章
十三話【茶番劇】
しおりを挟む
「続けるか?」
ゴゴの声に、地面で天を仰ぐキッドがゆっくりと立ち上がる。
「へっ、俺とした事が勢い余って転ぶとは、運がいいなあんた」
アホや……
ドラミの顔が恐怖に固まる。
次に現れたのは両手に鎌を持つ鱗族、ドラゴン。
こちらも惣一郎の出した[仙台守鍛造鉈鎌]をドワーフにより2本を鎖で繋いだ物だった。
鎌にはカバーがかけられたままだった。
「惚れた女の前でこれ以上醜態を晒す訳にはいかねぇ! 悪いが本気でいくぜ」
背中の紋様が光り、シャドウを始めるキッド。
明らかに風を切る音が変わる。
表情が読め無いドラゴンが、ジャラっと鎌を構える!
軽快なステップで近付くキッド。
ジャブで距離を測るキッドの手数が増えていくと、拳が何本にも見える!
だが、ピット器官を備えるドラゴンに目眩しは通用し無い!
ヘビに見られるピット器官は赤外線で熱を捉える!
それを持つドラゴンには、残像と本物の微妙な熱の差が読み取れる!
あっさり拳に引っ掛けられた鉈鎌に軌道を逸らされ姿勢を崩すと、首に別の鎌がかけられ、前のめりに地面に頭を落とす。
「そこまで!」
「もういいよ! がっかりだ」
地面に両手を着くキッドが、顔を上げる。
「もう少し使えると思ったけど、がっかりしたよ。君めちゃくちゃ弱いね」
「なっ! 待て今のは」
「ゴゴ! ドラゴンの騎士の序列は?」
「はっ、はい。7人中6位です」
「はぁ、これじゃ訓練にもならないよ、それなのにその自信は何処から来るのよ? 恥ずかしく無いの?」
「いや、今日は調子が……」
「言い訳ばっか! それでよくスワロに惚れただなんて言えるね~ この騎士達全員でも敵わない相手よ」
「そ、それは……」
「多少でも強ければ、騎士の見習いとしてチャンスをあげようかと思ったんだけど、これじゃぁねぇ」
「まっ待ってくれ! まだ本気を出してないだけなんだ!」
「いやいや、蟲相手にそれ言えんの? 死んだら終わりよ?」
「い、いや……」
「そんな奴と、誰が一緒に命かけるのよ!」
「………」
そこにゴゴが、話しに割って入る。
「惣一郎様、確かに性格に問題があるが、タイガの初撃を躱した反応速度、ドラゴンに見せた素早い動きは、鍛えれば使えるかも知れません」
「その性格が一番の問題なのよ! 女を前にいい所見せようと格好つける奴は仲間を危険に晒すし、負けも認められない奴は、自分を伸ばす事も出来ないでしょ? 鍛えるだけ無駄なのよ」
「ック………」
「えっと次は…… そうだ。分かりました。では村の外に……」
「待ってくれ! なんでもする! 雑用でもなんでもするから鍛えてくれ! 必ずこの騎士で一番になって見せる!」
「村には女性が多い、お前の存在が輪を乱す!」
「序列一位になるまで、女とは絶対に話さない! だから、頼む!」
ドラミはさらに驚愕する!
『アホや… ほんまもんのアホや! まんまと惣一郎の策に嵌りよった!』
「「 ……… 」」
「あっ、次俺だ。 ゴホン! じゃこの村の序列最下位からでも構わないと言うのだな!」
「ああ、もう言い訳はしない。必ず這い上がって見せる!」
「ではゴゴ! 面倒を見てやれ。絶対服従だ。次に言い訳をしたり弱音を吐いたら即、村を追放しろ」
「仰せのままに!」
惣一郎に頭を下げるゴゴ。
真似て地面に頭をつけるキッド。
去っていく惣一郎にベンゾウが、
「ご主人様、茶番は終わった?」
っと、お菓子を食べながら抱きつく。
コイツ……
ゴゴの声に、地面で天を仰ぐキッドがゆっくりと立ち上がる。
「へっ、俺とした事が勢い余って転ぶとは、運がいいなあんた」
アホや……
ドラミの顔が恐怖に固まる。
次に現れたのは両手に鎌を持つ鱗族、ドラゴン。
こちらも惣一郎の出した[仙台守鍛造鉈鎌]をドワーフにより2本を鎖で繋いだ物だった。
鎌にはカバーがかけられたままだった。
「惚れた女の前でこれ以上醜態を晒す訳にはいかねぇ! 悪いが本気でいくぜ」
背中の紋様が光り、シャドウを始めるキッド。
明らかに風を切る音が変わる。
表情が読め無いドラゴンが、ジャラっと鎌を構える!
軽快なステップで近付くキッド。
ジャブで距離を測るキッドの手数が増えていくと、拳が何本にも見える!
だが、ピット器官を備えるドラゴンに目眩しは通用し無い!
ヘビに見られるピット器官は赤外線で熱を捉える!
それを持つドラゴンには、残像と本物の微妙な熱の差が読み取れる!
あっさり拳に引っ掛けられた鉈鎌に軌道を逸らされ姿勢を崩すと、首に別の鎌がかけられ、前のめりに地面に頭を落とす。
「そこまで!」
「もういいよ! がっかりだ」
地面に両手を着くキッドが、顔を上げる。
「もう少し使えると思ったけど、がっかりしたよ。君めちゃくちゃ弱いね」
「なっ! 待て今のは」
「ゴゴ! ドラゴンの騎士の序列は?」
「はっ、はい。7人中6位です」
「はぁ、これじゃ訓練にもならないよ、それなのにその自信は何処から来るのよ? 恥ずかしく無いの?」
「いや、今日は調子が……」
「言い訳ばっか! それでよくスワロに惚れただなんて言えるね~ この騎士達全員でも敵わない相手よ」
「そ、それは……」
「多少でも強ければ、騎士の見習いとしてチャンスをあげようかと思ったんだけど、これじゃぁねぇ」
「まっ待ってくれ! まだ本気を出してないだけなんだ!」
「いやいや、蟲相手にそれ言えんの? 死んだら終わりよ?」
「い、いや……」
「そんな奴と、誰が一緒に命かけるのよ!」
「………」
そこにゴゴが、話しに割って入る。
「惣一郎様、確かに性格に問題があるが、タイガの初撃を躱した反応速度、ドラゴンに見せた素早い動きは、鍛えれば使えるかも知れません」
「その性格が一番の問題なのよ! 女を前にいい所見せようと格好つける奴は仲間を危険に晒すし、負けも認められない奴は、自分を伸ばす事も出来ないでしょ? 鍛えるだけ無駄なのよ」
「ック………」
「えっと次は…… そうだ。分かりました。では村の外に……」
「待ってくれ! なんでもする! 雑用でもなんでもするから鍛えてくれ! 必ずこの騎士で一番になって見せる!」
「村には女性が多い、お前の存在が輪を乱す!」
「序列一位になるまで、女とは絶対に話さない! だから、頼む!」
ドラミはさらに驚愕する!
『アホや… ほんまもんのアホや! まんまと惣一郎の策に嵌りよった!』
「「 ……… 」」
「あっ、次俺だ。 ゴホン! じゃこの村の序列最下位からでも構わないと言うのだな!」
「ああ、もう言い訳はしない。必ず這い上がって見せる!」
「ではゴゴ! 面倒を見てやれ。絶対服従だ。次に言い訳をしたり弱音を吐いたら即、村を追放しろ」
「仰せのままに!」
惣一郎に頭を下げるゴゴ。
真似て地面に頭をつけるキッド。
去っていく惣一郎にベンゾウが、
「ご主人様、茶番は終わった?」
っと、お菓子を食べながら抱きつく。
コイツ……
13
お気に入りに追加
261
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる