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第四章

十六話【ケンズール】

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会議から数日。

ミネアがコールを覚えるまでは、ギネアも村の事を手伝っていた。

キューテッド達3人も、ミネアの妹のセリーナと奴隷契約を結び拘束を解かれ、畑仕事を手伝う。

オークションで購入した者達に惣一郎が契約解除を申し出たが、みんなが断った。

奴隷じゃ無いと村に居れないと思ったのだろうか、居ても問題ないと惣一郎が言っても、村にいていいという繋がりが欲しいそうだ。

惣一郎が思う奴隷のイメージとは違う様だ。

会議も惣一郎が思っていた物とは違う終わり方だったが、なんとなく村の在り方は伝わった様で、日々生活しやすい様に変わっていく。

惣一郎に言われるまで遠慮がちだった村人が、率先して住み良くして行く。

畑に井戸は出来なかったが、2段目の中庭に大きな大衆浴場が作られ始めていた。

木の上の大きな木製のタンクに、惣一郎が定期的にウォーターの魔法で水を補充しなければならないが、そこから村全体にパイプが通り、ライフラインも充実していく。

ゆくゆくは雨水も取り込める様、改良していく予定だ。


畑は惣一郎が購入した地球産の肥料などを混ぜ耕すと、ドラミの魔法であっという間に育つが、最初の成長を促すだけで、2度目の実りは通常通り待たなければならない。

それでもジャガイモなどの野菜は何度も収穫を繰り返し出来ると思っていたが、土が痩せるので収穫後はまた手間暇がかかる。

それでもサイクルは十分早い。

果樹園もすぐに実をつけるが、2回目の収穫には時間が必要との事。

奥に牧場も出来初め、傭兵改め騎士団のメンバーも力仕事に引っ張りだこになっている。

徐々に発展していく村に、惣一郎も楽しみながら手伝っていたが、

「惣一郎! また近くに蟲が来てんで」

「またか! 今行く」

っと、直ぐに呼び出される。

スワロと蟲を倒しながら、村は徐々に長閑な街ケンズールまで戻りつつあった。



「旦那、明日には街に着くのじゃろ?」

スワロとお茶を啜る惣一郎に、ドワーフのチンとキンが話しかけて来る。

「ああ、急げば直ぐに着くが、どうした?」

「蟲を解体するナイフが欲しいんじゃが」

「あの緑に光るナイフか?」

「ああ、旦那のナイフもとんでもなく切れるんじゃが、蟲にはやっぱ専用の解体ナイフがいるんじゃ」

惣一郎も気になっていた緑のナイフであった。

サクサクと硬い蟲の外殻を切り分けていた、あのナイフについて詳しく聞く。

魔石を砕き、ゴル鋼と呼ばれる金属と混ぜ鍛える事で、常に魔力が内から外に流れるナイフが出来るそうだ。

薄いガラスの様な緑の刃は、魔力が巡り回っていると言う。

「へ~ 常に鋭利に研ぎ澄まされた魔力の刃だったのか、あれ」

「ああ、高額じゃが一本ありゃ研がなくてもいいし、消耗もせんから便利なんじゃ」

「そんな切れ味の良いナイフがあるのに、蟲を倒せない意味が分からん」

「いや、ナイフサイズが限界なんじゃ、あんな短いナイフで蟲を刺しても、やられるだけじゃ。それに大きくすれば持ち手の魔力があっという間に空になる」

そう言う事か……

「なるほど魔導具の類いなのね、作れないのか?」

「魔石があってもゴル鋼を扱える職人も少ないし、専用の炉もいるしの~」

「なるほど…… 分かった。手に入れて来るよ」




翌日、朝からスワロとジルのふたりを連れて、ケンズールの街に戻った惣一郎。

高い岩山に囲まれた、緑豊かな長閑な街。

大きな街の中心地には、露店が並び朝から賑わいを見せていた。

「おお、チーズかこれ!」

「ケンズールは酪農が盛んな街ですので、乳やバター、チーズなども肉と同じぐらい有名です」

そう言うとジルが試食用のチーズを一欠片、惣一郎の口に運ぶ。

冷たい笑顔のスワロ。

「うん、美味い! チーズだわ」

「ええ、チーズです」

クスクスっと笑うジルに対抗してか、スワロも他のチーズを惣一郎の口に押し込む。

「くさ!」

「それは、好みが……」

「スワロお前…… 自分で食ってから勧めろよ」

「ま、まぁ、良いではないか! 経験だ」

笑って誤魔化すスワロ。

その経験は自分でして欲しい……

「まぁどの道丁度いい! シープの注文の牛は、ここで手に入りそうだな」

「主人、コレも美味そうだぞ!」

それウジが動いてますが……





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