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第四章

十話【囚われたリザードマン】

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抱きしめるスワロの手が力強く惣一郎の顔を引き寄せると、唇を重ねてくる。

抵抗する事なく受け入れる惣一郎。

そのまま流れで横になっていくと、

「なんや朝っぱらから、ウチも混ぜたらんか!」

っとドラミがふたりに覆い被さって来る。

焦る惣一郎にスワロは優しく、

「では3人で楽しもうか!」

っと、おどけた笑みを浮かべる。

オーラは消えていた。

正直ちょっと怖かった惣一郎は、救われた思いで、

「待て待て、昼間っから! もっとやる事があるだろう!」

っと、慌てて抜け出し取り繕う。

「つれないの~」

ドラミの言葉にスワロは笑っていた。

独占したい訳ではないのだろう……

そこにまた、ゴゴが下から声をかけてくる。

「勇者様!」

「せや、ゴゴが探しとったわ!」

早く言えよ……

一階に降りる惣一郎。

玄関でゴゴが「勇者様、例のリザードマンが目を覚まし、話しがしたいそうです」っと話を続ける。

そうだった、忘れていた!

ゴゴの案内で3番目の木に出来た部屋の一室に案内される。

スワロも惣一郎と同じ白いローブで付いてくる。

傭兵団予定の者が住む、この3番の木の一階部分に、牢屋ほど物々しくは無いが個室を作り、外から鍵がかかるその部屋に、リザードマンとジジがいた。

「目が覚めたか、すまんな無理矢理連れて来てしまって」

「あんたが勇者か?」

「まぁ、そういう事に… で? なんで街に無理矢理侵入したんだ?」

「仲間が囚われたので助けに行ったんだが、見つからなくってな、あの街に居ると思ったんだが、何処にも居なかった」

「ん? 広い街をあの短時間で、探したのか?」

「ああ、仲間が近くに居れば、このオーブが反応するのだ。だが、侵入し直ぐに街に居ないと分かったので隠れていたのだ。街から逃げ出すチャンスを待ってな」

手のひらに収まるサイズの、小さな赤いガラス玉であった。

「仲間はなんで捕えられたんだ?」

「決まってるだろ、奴隷にする為に! 仲間はまだ幼い獣人の子だ。故郷をなくし路頭に迷っていたあの子を俺が助け、一緒に旅をしていたんだが、目を離した隙に攫われてしまい追いかけて来たのだが……」

惣一郎はリザードマンの話にゴゴを見るが、ゴゴも首を横に振る。

知らない話の様だ。

「他にあてはあるのか?」

「近くの街と踏んで、奴隷商が多く有名なトリグルと思い来たんだが、ここじゃ無い様だ…… 他が思いつかん」

「そのオーブじゃ、近くまで行かないと分からないのか?」

「ああ、オーブに刻まれたあの子…[ココ]の魔力に反応するのだが、範囲は俺の魔力でも約800mが限界だ」

ゴゴの話ではこのリザードマン、魔剣士とこの世界でも珍しい個人で依頼を請負う傭兵の様で、剣に刻まれた陣で幾つもの魔法を使いこなすと言う。

魔力には自信があったのだろう。

魔剣士ね~ 槍で襲って来たが……

「ふ~ん。貸してみ!」

オーブを借り、馬鹿みたいに魔力を注ぐ惣一郎。

赤いオーブから南南東に赤い光の細い線が現れる。

口を開け驚き、声を失うリザードマン。

「向こうに居るみたいだな?」

リザードマンにオーブを返すも、光の線は失われなかった。

「す、すまん! 頼む行かせてくれ!」

「それはいいが……」

「大丈夫だ。なんとか街から逃げ出して見せる!トリグルの南南東じゃ[ココ]はまだ森にいるんだ。急がなくては」

「いや、ここ、トリグルじゃないのよ」

「へ?」

惣一郎はゴゴに説明を任せ、部屋を出る。

追いかけていく前に飯でも食って行けと食事を作りに。

1番目の中庭は、すっかりみんなの食堂になっていた。

屋根だけが大きく広がり、長いテーブルが並んでいる屋外。

奥には厨房まで出来ている。

幾つもの窯が並び大きな鍋が置かれ、大きなキッチンテーブルには、果物や野菜が並び、異世界の包丁が並んでいる。

惣一郎の地球産の包丁は、この世界の物とは比べ物にもならず、数本ドワーフが興味から持っていってしまい、何本か抜けていた。

今ではメイド達が常に、目を光らせている。

「旦那様、お食事ですか?」

「いや、例のリザードマンが目を覚ました。ここを出る前に何か食べさせてやってくれ」

「畏まりました!」

両手でスカートを軽く捲り、すっかりその気になっているメイドのマーガレットとテルミナ。

すっかりテルミナも、姉のミネア以外の大人のマーガレットに懐いていた。

「主人よ!」

スワロがお茶を淹れ、テーブルに誘う。

コイツの情緒が少し不安な惣一郎は、立ったままお茶に手を伸ばす。



ゴゴ達に連れられ現れたリザードマン。

「勇者よ、色々世話になった様だ」

「ああ、取り敢えず飯を食って行けよ! 体力付けないとな」

「すまぬ…… 俺は[ギネア]と言う」

「惣一郎だ」

リザードマンのギネアは腹が減っていたのだろう、出された物を勢い良く、美味い!っと食べていく。






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