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第三章

十四話[蘇る記憶]

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翌日、町の外れにある工場に行くというゴジャッペから家の鍵を預かり、見送った後、クルドが働いていたという飯屋へと向かう。

朝早くにも関わらず、朝食を食べに来る客で賑わう店内。

『ここだ…… ここです! 僕が働いていた店です』

間違いない様です……

空いてる席に座ると、すぐさま元気な娘が注文をとりに来る。

「いらっしゃい! お客さんも朝食でいいかい?」

メニューがない…… お任せの様です。

「ええ、2つお願いします」

「あいよ!」

4人席にハナとふたりで座る士郎。

すぐに当たり前の様に空いてる席に座る老人が、大声で朝食ひとつを注文する。

相席食堂です。

「よく来るんですか?」

「ん? ああ毎朝さ」

「ここで昔働いていたクルドって人、ご存知ですか?」

「ああ、いたねぇ前に亡くなった…… 知り合いなのかい?」

「ええ、少し…… 何か彼について知ってる事あれば聞かせて欲しいのですが。ここの払いはしますので」

「おや、いいのかい? 悪いね。もう32年ぐらい前かな、確か娘が結婚した年だから覚えてるよ。彼の料理は絶品でねぇ。今より繁盛してたのさ。こんな事言うと怒られちゃうけどね。フォフォフォ」

そこに丁度士郎とハナの朝食が運ばれてくる。

薄切りの肉の香草焼きとたっぷりのサラダが一皿に盛られ、パンとスープが付いていた。

「彼には恋人がいてねぇ、彼女も良く夜に食べに来てたよ」

「へぇ」 しかし美味いな!

『そうです…… [アルジェリカ]……』

思い出して来たかな?

そして老人の朝食も運ばれてくる。

「では遠慮なく! うん美味い。毎朝違う朝食でほんとにいい店さ」

「それで、その彼女は?」

「さぁそこまではねぇ。私も今は朝しか来ないしねぇ。でも彼の話を思い出すと食べたくなっちゃうねぇ、もう一度あの料理を。おっと怒られちゃうね! フォッフォフォ」

『シロウさん。僕は彼女にアルジェリカとの待ち合わせに行けなかった事が心残りだったんです』

それだけ? まぁ思う気持ちは人それぞれか…… クルドにとって彼女を待たせてるって事が心残りだったのだろう。

ふむ、今回はその彼女を探し出せば解決しそうだな…… しかし美味い。

すると和やかな朝の空気を読めない輩が、店の奥で騒ぎ出していた。

「ふざけんな! 客だぞ」

「すいません朝はお酒をお出ししてないんです」

「こっちは依頼で遠くから今朝着いたばかりなんだ! いいから出せよ!」

冒険者だろうか、朝食の風景に似合わない格好の2人組が、酒を出せと騒いでいる。

元気だった娘は委縮し、コックだろう店主が冒険者に頭を下げていた。

食事もそこそこに帰り出す人もいる。

「早く出せよ!」 ガシャン!

テーブルをひっくり返す音で静まり返る店内……っと思って視線を向けると、騒いでいた冒険者がテーブルごと見えない何かに押し潰されていた。

杖を構え佇むハナ。

「折角の料理が台無しですよ。頭を冷やし出直しなさい!」

はい、台無しです……

「テメー! 魔導師か」

簡単に剣を抜くもう1人の冒険者。

「ちょ何してんのハナ!」

「テメーが保護者か! ガキの面倒ぐ…」

ガシャン!

すると交代で最初の冒険者が起き上がる!

「やろ! やっと動ける!」

剣を抜く。ガシャン!

1人づつしか押さえられないのね……

「ちょ! これ以上は店の迷惑だ。外に出よう、外に!」

今なら被害はテーブルと料理だけだ……



店の前の通りに出ると、あっという間に
人集りができ、士郎とハナ、それに冒険者の2人を取り囲んでいた。

「ハナ、手だすの早すぎるよ……」

「ですが料理が……」

剣を構え睨む冒険者の2人。

ダメージはほぼない様です。

「ふざけやがって!」

「恥かかせやがって、ぶっ殺してやる!」

物騒な……

「どう見てもそちらが悪いですよ。無理な事押し付けて。冒険者だからって偉くないんだから謝って終わりにしませんか?」

振り上がる剣に冒険者の腹に減り込む黒い球。

すでに士郎は左腰の刀を握っていた。

そのまま悶絶し蹲る1人目。

「な、何しやがった!」

「その剣を振り上げたら同じ目に遭いますよ」

「や、ヤロー!」

ドコッ!

素直に同じ目に遭う2人目。

蹲る2人に、どこからか拍手が鳴り始まり、士郎は歓声の的となる。

恥ずかしい……





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