異世界に飛ばされた俺は霊感が強いだけ！

第二章

十五話［凱旋］

先に捕らえた宙にぶら下がる2人を回収し、荷車で蔓に巻かれ身動き出来ない元軍人は5人になった。

馬に乗り荷車を引くセリジュは、まだ少し辛そうだった。

少し後を士郎と少女が並んで歩く。

「だから知らないよ！」

「ですが先ほどまで居たではないですか」

「俺に聞かれても、ハナが解任したんでしょ！」

「あれは言葉のあやです……　ハナってなんですか？」

「ダージュリが外では身分は隠せって言うから、姫って呼べないでしょ！　まぁ呼ぶ気も無いけど」

「それがなぜハナなのですか？」

「ディハナなんたらって長い名前じゃなかった？　長いからハナでいいでしょ」

「ディハナテュルク・ディアリスです！　このぐらい覚えて下さい！」

「やだよ、面倒くさい」

「ハナ……　まぁハナも悪くないかも知れませんね」

「だろ！　可愛い名前だしね！」

「子供扱いしないで下さい！」

してねぇじゃん！！


少し離れた木の上で、ふたりの背中を見守るエルフの戦士がいた。

『大丈夫そうだな……　頼んだぞシロウ！』

淡い光に包まれながら、長かった役目を終える……




一睡もしてない士郎に疲れが見え始めた頃、ようやくギルドに到着した。

町の入り口から荷車に拘束された5人の元ギリタ軍の残党を見て、人集りがギルドまでついて来ていた。

騒ぎからギルドの中からも職員や居合わせた冒険者が出て来る。

「ギルマス呼んで……」

セリジュも限界だったのだろう、到着後すぐに馬の背で項垂れる様に気を失う。

職員に治療室に運ばれて行くセリジュ。

冒険者達は職員の指示で拘束された5人を牢へと連行して行く。

「お手柄だシロウ！」

ギルマスのラルグが遅れて現れると、士郎の横に立つ少女に目が止まる。

「まさか捕らえられていた被害者か？」

「いや、違います。えっと……　森で出会って意気投合したみたいな」

「関係者ではないんだな？」

「ええ、元はセリジュさんの知り合いでして、ほら今治療中なので俺が……」

「そ、そうか。まぁいい。余程疲れた様だし報告は明日にして今日は休むと良い」

「助かります……」

士郎はハナを連れ、宿屋へと向かい歩き始める。



宿に着く士郎が主人に部屋を頼むと、今朝方王都から団体が来たらしく、もう一部屋しか空いてないと言われる。

「ベッドで寝れれば何処でも良いです……」

「すいませんねぇ～」

通された部屋はベッドしか無い狭い元物置部屋であった。

ハナを見て「まぁしょうがないか」っとベッドに雪崩れ込もうと近付く。

「待ちなさい！　その汚い格好のまま寝るつもりですか？」

へっ？

察した士郎は収納から敷物を出してベッドの横の空いたスペースに広げると床に寝転ぶ。

「ベッド使って良いよ……　おやすみ」

「そうではありません！」

「えっ、なに……」

「その杖をお貸しください！」

訳も分からず考えるのも面倒くさい士郎は、言われるがまま刀をハナに手渡してしまう。

すると少女の顔色が変わる。

「な、なんですかこれは……」

返事はない。

眠りに落ちる士郎に向けて、ハナが魔法を唱える。

クリーン！

身綺麗になった士郎……　爆睡中。

ハナは自分にもクリーンの魔法をかけ、その効果に驚く。

「す、凄い杖ですね……」