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第二章
二話[探し物は何ですか?]
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このふざけた霊の名はデリラ。
誘拐された貴族の娘であった。
首の傷までの長さの赤い髪。
歳は10代後半だろうか、今の士郎と変わらない。
親の指示で嫁ぎ先が決まっていたそうだが、デリラには町に革職人の恋人がおり、その恋人と駆け落ちをする。
ザリスの町までふたりで逃げてきたが、面子を潰された婚約相手の貴族に捕まり、報復にこの辺りで首を刎ねられた。
だがデリラは幸せだったのだと言う。
逃げてからの数ヶ月間、恋人と共に暮らせた時間は恵まれた貴族の生活より、幸せだったと言うのだ。
「じゃ何が心残りなのよ」
『指輪がないの! 首を切られ地面に落ちた時に見た自分の体、その指にしてたはずの指輪がなかったの! 何よりも大事な彼との思い出…… いつ無くしたのかは覚えてないけど、目の前に倒れた私の体は指輪をしてなかったのよ!』
オイオイ、その指輪を探せと?
また漠然とした探し物が増えそうだ……
「それで、死んだのはいつよ」
『ついさっきよ!』
はい嘘!
また記憶がないパターンか……
何年も前なら探しようがないぞ。
取り敢えず近くを見渡すが、ある訳が無い。
「無いね! 拾われてるかも知れないし無理だ。似たのじゃダメなの?」
『ダメよ! 彼から貰ったあの指輪じゃなきゃ死んでも死にきれないわ!』
だろうね、こうしてココに居るし!
お手上げだろこんなの…… ん?
「彼氏は? 彼氏も誘拐された時殺されたの?」
『連れ去られたのは私だけだったけど…… 覚えてないわ』
まぁ無理だろうけど一応、街道を探しながら町まで行ってみるか…… 彼氏が生きてるかも知れないし……
そうデリラを説得し、最悪彼氏にもう一度指輪を渡す様に頼むつもりだった士郎。
生きてればいいのだが……
いきなり変な同伴者が増えた士郎。
下を見ながら町を目指して歩き始める。
しばらく下を見ながら進むと、突然目の前に転がる赤毛の首!
『あった?』
「ギャァーーーーー!」
後ろでは前が見えず右往左往する体。
「やめろそれ! マジで怖いわ!」
『だってずっと下見てるから……』
「探してんでしょ!!」
嫌だ…… 断る事は出来ないのだろうか。
ひとりで騒ぐ士郎を、すれ違う冒険者が優しい目で頑張れ!っと通り過ぎて行く。
辛い……
流石に歩き疲れた夕方。
見晴らしのいい赤い夕陽が遠くの山に隠れると、一気に薄暗くなって行く草原。
夕陽と交代した様に夜空は今にも降り出しそうな星が、キラキラと輝いていた。
星に照らされた真っ直ぐな道の周りには、野営を始めた人達の焚き火の明かりが、点々と灯り始める。
士郎も休もうと道を少し離れ、ザマリで購入した麻の敷物を敷き、上に寝床となる動物の毛皮を広げる。
鬼熊と言う魔獣の毛皮だ。
収納スキルから薪を取り出し、火のついた松明を取り出して火を移す。
火のついた松明も収納しておけば、そのまま火が着いたまま取り出せる。
『まぁ、便利なスキルを持っているのね』
「ギャァーーーー!」
首を脇に置いて正座する、首の無い汚れたドレスのデリラ。
「いい加減にしろ! 夢に出るわ!」
『あら、行儀良く置いたつもりなのだけれど』
「首だけで喋るな!」
『人とおしゃべりするのも久しぶりなんだもの、貴方の反応が嬉しくて』
「ほらみろ死んだのがついさっきなら、そんな久しぶりなんて感覚おかしいだろ」
『確かにそうね…… じゃ昨日かしら?』
飽きた子供がボールを上に回し投げては受け止める様に、首で遊びながら考えるデリラ。
士郎は夕食も食べず、毛布をすっぽりかぶり無視して寝る……
誘拐された貴族の娘であった。
首の傷までの長さの赤い髪。
歳は10代後半だろうか、今の士郎と変わらない。
親の指示で嫁ぎ先が決まっていたそうだが、デリラには町に革職人の恋人がおり、その恋人と駆け落ちをする。
ザリスの町までふたりで逃げてきたが、面子を潰された婚約相手の貴族に捕まり、報復にこの辺りで首を刎ねられた。
だがデリラは幸せだったのだと言う。
逃げてからの数ヶ月間、恋人と共に暮らせた時間は恵まれた貴族の生活より、幸せだったと言うのだ。
「じゃ何が心残りなのよ」
『指輪がないの! 首を切られ地面に落ちた時に見た自分の体、その指にしてたはずの指輪がなかったの! 何よりも大事な彼との思い出…… いつ無くしたのかは覚えてないけど、目の前に倒れた私の体は指輪をしてなかったのよ!』
オイオイ、その指輪を探せと?
また漠然とした探し物が増えそうだ……
「それで、死んだのはいつよ」
『ついさっきよ!』
はい嘘!
また記憶がないパターンか……
何年も前なら探しようがないぞ。
取り敢えず近くを見渡すが、ある訳が無い。
「無いね! 拾われてるかも知れないし無理だ。似たのじゃダメなの?」
『ダメよ! 彼から貰ったあの指輪じゃなきゃ死んでも死にきれないわ!』
だろうね、こうしてココに居るし!
お手上げだろこんなの…… ん?
「彼氏は? 彼氏も誘拐された時殺されたの?」
『連れ去られたのは私だけだったけど…… 覚えてないわ』
まぁ無理だろうけど一応、街道を探しながら町まで行ってみるか…… 彼氏が生きてるかも知れないし……
そうデリラを説得し、最悪彼氏にもう一度指輪を渡す様に頼むつもりだった士郎。
生きてればいいのだが……
いきなり変な同伴者が増えた士郎。
下を見ながら町を目指して歩き始める。
しばらく下を見ながら進むと、突然目の前に転がる赤毛の首!
『あった?』
「ギャァーーーーー!」
後ろでは前が見えず右往左往する体。
「やめろそれ! マジで怖いわ!」
『だってずっと下見てるから……』
「探してんでしょ!!」
嫌だ…… 断る事は出来ないのだろうか。
ひとりで騒ぐ士郎を、すれ違う冒険者が優しい目で頑張れ!っと通り過ぎて行く。
辛い……
流石に歩き疲れた夕方。
見晴らしのいい赤い夕陽が遠くの山に隠れると、一気に薄暗くなって行く草原。
夕陽と交代した様に夜空は今にも降り出しそうな星が、キラキラと輝いていた。
星に照らされた真っ直ぐな道の周りには、野営を始めた人達の焚き火の明かりが、点々と灯り始める。
士郎も休もうと道を少し離れ、ザマリで購入した麻の敷物を敷き、上に寝床となる動物の毛皮を広げる。
鬼熊と言う魔獣の毛皮だ。
収納スキルから薪を取り出し、火のついた松明を取り出して火を移す。
火のついた松明も収納しておけば、そのまま火が着いたまま取り出せる。
『まぁ、便利なスキルを持っているのね』
「ギャァーーーー!」
首を脇に置いて正座する、首の無い汚れたドレスのデリラ。
「いい加減にしろ! 夢に出るわ!」
『あら、行儀良く置いたつもりなのだけれど』
「首だけで喋るな!」
『人とおしゃべりするのも久しぶりなんだもの、貴方の反応が嬉しくて』
「ほらみろ死んだのがついさっきなら、そんな久しぶりなんて感覚おかしいだろ」
『確かにそうね…… じゃ昨日かしら?』
飽きた子供がボールを上に回し投げては受け止める様に、首で遊びながら考えるデリラ。
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