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第一章
三話[霊からの依頼]
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暗い森の中、木の根に腰を掛け青白く光る冒険者と話し込む士郎。
襲われないと信じたからか、死んでいるロイドを質問攻めにしていた。
「なるほど、死霊系の魔物はいないんですね!」
『そりゃ死んだら魔物だってそれまでさ』
「色々と参考になりましたよ! いきなりこんな森に送られて、不安で不安で!」
『別の世界か…… そんな事もあるんだな。それでかな、君となら話が出来るって何となく思えたんだ』
「やっぱ普通は見えない感じですか?」
『生きてた時もそんな話しは聞いたこともなかったね』
見た目はグロいが、話してみると良い人なのが分かるし、暗い森でひとりでいるよりは多少はいいか…… いいのか?
「しかしそこまで危険な森じゃ、早く出ないとな……」
『出れるのか?』
「え? 南に行けば村があると……」
『トルトの村か! 頼む連れてってくれないか! 帰らなきゃいけないんだ!』
「ひとりで行けなかったんですか?」
『ああ、帰り方が分からないんだ』
何のこっちゃ理解出来ない士郎だったが、理解できない事ばかりだったので、聞き返すのをやめた。
ラノベじゃお供は普通、可愛いヒロインなのになぁ~ 霊って……
現実の異世界か……
暗い森を警戒しながら、ロイドが示す南に歩き続けるふたり?
「へぇダンジョンあるんですか~」
『ああ海を渡ればな。シロウの世界にもダンジョンがあったのか?』
「いえ、本に出てくる架空の話しです」
『本に出るなら何処かにあったって事だろ?』
「いや空想って言うか… まぁ兎に角魔法を使ってみたいって話しですよ!」
『魔法も知ってるのに無い世界か…… さっぱり分からんな』
あはは。
魔物の危険も忘れ運がいいのか話をしながら歩みを進めるふたり。
暗い森でも士郎にしか見えない青白い光りが、足元を照らしてくれていた。
寝ずに歩き続ける士郎に疲れが見えて来た頃、霧に反射した光りが森を薄らと明るくしていた。
『見えた! 森を出れるぞ!』
返事する元気も無く前を見る士郎にも、森の終わりが見えて来た。
泥の入った靴を脱ぎ、靴で木を叩きながら呟く士郎。
「やっとか……」
靴を履くと少しペースが早くなる。
森を抜けると草原が広がり、森の中とは比べ物にならない、明るい世界が広がっていた。
『そうだ。あの丘を越えた先だ!』
表情は相変わらず変わらないロイド。
だが言葉は喜びに満ちていた。
気が焦っているのが分かるが、ロイドは士郎の前を歩かない。
疲れて棒になった足をあげ、進み始める士郎に、もう質問する元気もなかった。
村に着いたらどうするかも考えられなかった。
丘まで来ると下に村が見えた。
小さな村だが、数軒の家から煙も見える。
朝食の時間なのだろう。
その朝食ありつける保証もないのに、空腹の士郎のペースも上がる。
村の入り口で力尽き、地面に腰を落とす士郎。
「着いた~」
汚れた大きなスーツ姿の黒髪の少年に、驚いた門番の男が駆け寄る。
「ちょ! おめぇどうしたんだひとりで!」
中世を思わせる金属の鎧を半端に着る大柄な男には、ロイドは見えていない。
「す、すいません。森で迷子になりまして。ようやくここまで……」
珍しい黒髪に汚れているが上等な服を見て察したのか門番は、
「まさか飛ばされたのか? 捨て人か?」
何それ……
襲われないと信じたからか、死んでいるロイドを質問攻めにしていた。
「なるほど、死霊系の魔物はいないんですね!」
『そりゃ死んだら魔物だってそれまでさ』
「色々と参考になりましたよ! いきなりこんな森に送られて、不安で不安で!」
『別の世界か…… そんな事もあるんだな。それでかな、君となら話が出来るって何となく思えたんだ』
「やっぱ普通は見えない感じですか?」
『生きてた時もそんな話しは聞いたこともなかったね』
見た目はグロいが、話してみると良い人なのが分かるし、暗い森でひとりでいるよりは多少はいいか…… いいのか?
「しかしそこまで危険な森じゃ、早く出ないとな……」
『出れるのか?』
「え? 南に行けば村があると……」
『トルトの村か! 頼む連れてってくれないか! 帰らなきゃいけないんだ!』
「ひとりで行けなかったんですか?」
『ああ、帰り方が分からないんだ』
何のこっちゃ理解出来ない士郎だったが、理解できない事ばかりだったので、聞き返すのをやめた。
ラノベじゃお供は普通、可愛いヒロインなのになぁ~ 霊って……
現実の異世界か……
暗い森を警戒しながら、ロイドが示す南に歩き続けるふたり?
「へぇダンジョンあるんですか~」
『ああ海を渡ればな。シロウの世界にもダンジョンがあったのか?』
「いえ、本に出てくる架空の話しです」
『本に出るなら何処かにあったって事だろ?』
「いや空想って言うか… まぁ兎に角魔法を使ってみたいって話しですよ!」
『魔法も知ってるのに無い世界か…… さっぱり分からんな』
あはは。
魔物の危険も忘れ運がいいのか話をしながら歩みを進めるふたり。
暗い森でも士郎にしか見えない青白い光りが、足元を照らしてくれていた。
寝ずに歩き続ける士郎に疲れが見えて来た頃、霧に反射した光りが森を薄らと明るくしていた。
『見えた! 森を出れるぞ!』
返事する元気も無く前を見る士郎にも、森の終わりが見えて来た。
泥の入った靴を脱ぎ、靴で木を叩きながら呟く士郎。
「やっとか……」
靴を履くと少しペースが早くなる。
森を抜けると草原が広がり、森の中とは比べ物にならない、明るい世界が広がっていた。
『そうだ。あの丘を越えた先だ!』
表情は相変わらず変わらないロイド。
だが言葉は喜びに満ちていた。
気が焦っているのが分かるが、ロイドは士郎の前を歩かない。
疲れて棒になった足をあげ、進み始める士郎に、もう質問する元気もなかった。
村に着いたらどうするかも考えられなかった。
丘まで来ると下に村が見えた。
小さな村だが、数軒の家から煙も見える。
朝食の時間なのだろう。
その朝食ありつける保証もないのに、空腹の士郎のペースも上がる。
村の入り口で力尽き、地面に腰を落とす士郎。
「着いた~」
汚れた大きなスーツ姿の黒髪の少年に、驚いた門番の男が駆け寄る。
「ちょ! おめぇどうしたんだひとりで!」
中世を思わせる金属の鎧を半端に着る大柄な男には、ロイドは見えていない。
「す、すいません。森で迷子になりまして。ようやくここまで……」
珍しい黒髪に汚れているが上等な服を見て察したのか門番は、
「まさか飛ばされたのか? 捨て人か?」
何それ……
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