上 下
16 / 20

16話

しおりを挟む
 今回は、王都に行くのに車ではないため丸一日かかる。そして僕はそんなに馬車に乗っていたくないと思った。何故なら・・・・

「大丈夫ですか?リョータさん?」
「うぅ・・・・・全・・・・然・・・・大丈・・・・夫じゃ・・・・ない・・・」
「いざとなったら、車で王都まで行きましょう。そうすれば酔いも覚めるはずです。」
「僕は・・・こんな・・状態で・・・・車・・・を運転するつもり・・・はないよ。」
「何故ですか?」
「だって・・・事故起こすかも・・・しれないし・・・・」
「そうですか・・・・では、私たちは歩いて王都まで向かいましょう!」
「それは、いい案だ・・・・」

 と言うことで歩くことになったのはいいが、周りがうるさかった。

「「「勇者よ!どうか馬車にお戻りください!歩くのは我々だけで十分です!」」」

 僕は馬車に乗っていると酔うから歩いた方がいいよと言うが

「「「それだったら我らがおぶって行きます!」」」

 それは、さすがに引いた。ティアラになんでこんなにも面倒を見ようとしているか聞いてみる。

「おそらくですが、勇者は一部地域によっては信仰の対象にもなっていますから、その影響だと思いますよ。」

 確かに先代勇者は話を聞いてる限りでは立派だと思うが、別にそれを僕にあてはめなくてもいいんじゃないだろうか?信仰の対象は先代の勇者なのだし。
 そんなこんなで、馬車から降りたときは周りがうるさかったが、しばらくすると、そういう声もなくなった。
 生まれて初めての野営は向こうで、テントを用意してくれたので助かった。
 食事は堅いパンに干し肉に漬物だった。堅いパンはまずかったが漬物は良く味が染みこんでいておいしかった。これだったら、いくらか漬物買ってそれで小腹がすいたときにでも食べればよさそうだ。
 そして、期間もあけずに王都に着き、その中央に向かっていった。何故かパレードのような感じになっていて、王都に住んでいる多くの人たちが、道の脇でこちらを見て声をかけてくる。
 そして、精神的に疲れた僕はさっさと王城に入って王様に謁見してさっさと宿屋の布団の中に入って寝たいと考えるのだった。

「それでは、こちらでお待ちください。」
「はい・・・」
「別の意味で大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ。こんなにも精神的に疲れたのにこれから王様に会わなきゃいけないんだよ?これは疲れるとしか言えないよ・・・」
「頑張ってください!」
「うん・・・・」

 待っていろと言われた場所で紅茶などを飲んで疲れをいやしていると、お呼びがかかった。

「準備ができましたので、こちらへ。」

 後をついていくと、立派な門と言ってもいいような扉が目の前にあった。僕は唾をのみこんだ。いったいどんな王様なのだろう?と思いながら、扉が開くのを待った。
 待っている間に突然僕の体が光出し何事かと思いステータスを慌てて見てみると、勇者はそのままでスキルの場所に礼節9があった。何故急に習得したのだろうと疑問に思うがまぁいいか、と言うことでほっといた。
 そしてついに扉が開いた。
 玉座に座っていたのは、優しそうな顔をしたおじいさんだった。僕は先ほど覚えた礼節スキルを使い、印象をよくしようとした。

「今日はよく来てくれたな。アズマ・リョータよ。」
「いえいえ、邪神が復活するなどと言うような物騒な話を聞けば、来たくなくても誰でもきますよ。」
「そうか、その説明は必要ないか。」
「いえ、邪神がどのようなものか私は知りませんのでお教えいただけると嬉しいです。」
「うむ。邪神は世界を滅ぼそうと思っているやつでな、ここから東にある魔族の国で復活するという信託を授かったのだ。それで勇者召喚をしたのだが本来四人いるはずなのだが、三人しか召喚できなかったのじゃ、それで国内を探せば勇者として覚醒したものがいるではないかと言うことで連れてきたしだいじゃ。」
「そうですか・・・?、今召喚とおっしゃいましたか?」
「あぁ言ったが?」
「そのものは地球と異世界の日本と言う場所から召喚されたわけではないですよね?」

 隣でティアラが驚いたような顔をしてこちらを見ていたが、すぐに視線を王様へと戻した。そういえばティアラって何かあるごとに驚いているよな~。

「何故わかったのじゃ?」
「いえ・・・・気にしないでください。」
「ふむ、まぁよかろう。それで邪神討伐の件は受けてくれるかね?」
「わかりました。」
「それじゃ、今いる勇者の所へ行くかの。コーダ伯爵の娘はどうする?」
「私はリョータさんのチームメンバーですからついていきます!」
「そうか、頑張るのじゃぞ。」
「はい!」
「っと、そこの者勇者たちは今どちらに?」
「はっ、現在城の練習場にて訓練中です!」
「そうか、こちらじゃついてまいれ。」

 謁見の間は城の最上階にあって勇者たちが寝泊まりをしている場所が、二階にあった。そこから一階におり中庭にある練習場に向かった。

「はぁあ!」
「まだまだ甘いですよ。真奈様。」

 そこで訓練していた勇者たちを見て言葉が出なかった。そこには、僕の幼馴染である三人、如月真奈、如月真矢、佐藤健司がいたからだった。

「リョータ殿どうなされた?」
「真奈・・・・真矢・・・・健司・・・・」
「む!?リョータ殿はこの世界の住人ではなかったのかね!?」
「えぇ・・・・そうですよ。」

 そう心がこもってないような声で言う。僕はもう会えないと思っていたはずの三人とまた会うことができたのだから。これほど嬉しいことはなかった。だが、もし神がこちらの世界にきた時に僕の記憶を消されていたら悲しいなと考えていたら、
ティアラが服をクイと引っ張ってきた。

「どうしたの?ティアラ?」
「リョータさんは元の世界に帰ったりしません・・・・よね?」
「あぁ、今のところは帰るつもりはないよ。安心して。」
「よかったです。」

 そう言って、視線を元に戻すとまだ訓練している幼馴染たちがいた。そこに王様が堂々と入って行くと、兵士が敬礼をした。

「どうだね?」
「はっ、まだまだ甘いところがありますが二日前に比べるとかなり上達してきております!」
「そうか、今日は新しく仲間を紹介したいと思う!」
「仲間ですか?もしかして、勇者として覚醒した人が見つかったんですか?」
「一体どんな人だろうね?真奈お姉ちゃん。」
「確かに気になるわね!」
「その人は今どちらに?」
「うむ。どうやらまだ出てくるのを渋っておるようじゃ。ほれ入って来い。」

 うーん。どういう風に最初しゃべればいいのだろうか?やっぱり、久しぶり!って声をかけながら入って行くべきか?悩むな・・・・

「あの?リョータさん?呼ばれてるみたいですが?」
「うーむ・・・・・」

「どうしたんだろうね?何かあったのかな?」
「渋っているって言ってたから、人見知りとかじゃないの?真矢はどう思う?」
「私!?うーんただ単にあんまり顔とかを合わせとかないのかも?」
「初対面なのに?」
「うーん・・・・じゃあ!私が引きずってくるよ!」
「あ、ちょっと真奈お姉ちゃん!?」

「ちょっと!いつまで待たせるつもり・・・よ?」
「あ・・・・やあ・・・・真奈元気にしてたか?」
「亮太?本当に亮太なの?」
「うん。正真正銘、東亮太だよ。」
「りょーーーーーーたーーーーーー!」

「今!真奈の声がしなかった!?」
「しかも、亮太って・・・・もしかして!」
「ああ!たぶんそうだよ!」

 私たちはそう言って真奈が行った方に走っていく。

「「亮太(君)!」」
「やあ、二人とも元気にしてたか?と言うよりみんなちょっと成長してない?」
「何言ってんだ!お前が失踪してから、もうすぐ一年だぞ!」
「僕がこっちに来てからまだ十日だから、地球とこの世界は時間軸がずれてるのか?」
「ゴッホン、それよりリョータ殿の腕前を拝見したいのだが・・・・よろしいか?」
「まぁ、いいですけど。それで相手は誰ですか?」
「我が国の騎士団長が相手をしてくれる。」
「紹介された、クライン・ヘツォカルトです。どうかお手柔らかに。」
「一応名乗った方がいいかな?僕は東亮太とりあえず、よろしくお願いします。ほら真奈離れて危ないよ?」
「うぅ・・・・もっと亮太と一緒にいたいよ~」

 そう言いながらだが、ちゃんと離れてくれた。

 僕は練習用の剣を渡され、構えた。クラインさんも構え合図を待つばかりになった。そして・・・・

「両者準備はいいな?それでは始め!」

 その掛け声とともにものすごい突風が吹き荒れた。え!今のはクラインじゃない!ということは魔法か?だが魔力の余波見られないと言うことは・・・・・リョータ殿の力か!?
 一瞬にして試合は終わった。クラインさんの剣が斬られたからだ。みんな唖然としている。
 僕は審判の方を向き剣を担いで見せた。

「しょ、勝者アズマリョータ!」

「今、亮太が何やったか見えた?」
「見えなかった・・・」
「・・・・・・・」
「真奈?」
「亮太!すごーい!」

 そう言って、真奈が亮太に向かって駆け出してダイブする。

「うわ!どうした真奈?」
「りょーた~えへへへ。」

 僕は幸せそうにしている真奈を見て、今はこのままにしておこうと思い、少し頭を撫でた。これからの生活を今まで以上に楽しみにしながら。
_____________________________________ちょっと修正しました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

猫カフェを異世界で開くことにした

茜カナコ
ファンタジー
猫カフェを異世界で開くことにしたシンジ。猫様達のため、今日も奮闘中です。

あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~

最十 レイ
ファンタジー
「お前の『氏名・使命』を貰う」 力を得た代償に己の名前とすべき事を奪われ、転生を果たした名も無き男。 自分は誰なのか? 自分のすべき事は何だったのか? 苦悩する……なんて事はなく、忘れているのをいいことに持前のポジティブさと破天荒さと卑怯さで、時に楽しく、時に女の子にちょっかいをだしながら、思いのまま生きようとする。 そんな性格だから、ちょっと女の子に騙されたり、ちょっと監獄に送られたり、脱獄しようとしてまた捕まったり、挙句の果てに死刑にされそうになったり⁈ 身体は変形と再生を繰り返し、死さえも失った男は、生まれ持った拳でシリアスをぶっ飛ばし、己が信念のもとにキメるところはきっちりキメて突き進む。 そんな『自由』でなければ勝ち取れない、名も無き男の生き様が今始まる! ※この作品はカクヨムでも投稿中です。

原初の魔女と雇われ閣下

野中
ファンタジー
五年前交通事故で家族を亡くし、淡々と日々を過ごしていた主人公は、事故から半年後、墓場で弱り切った狼と出会う。 異界の公爵という彼の、異界に残った身体に、成り行きから時折宿ることになった主人公。 サラリーマンの仕事の傍ら、悪くなっていく異界の状況を少しでも良くしようと奮闘する。 最終的に公爵が魂だけで異界へ渡る原因となった災厄を取り除いたが、そのために異界の閣下として生きることになった。 友人であった身体の本来の持ち主の代わりに、彼を追い詰めた出来事の真相を探るため、動き始めるが。

龍帝皇女の護衛役

右島 芒
ファンタジー
最年少で『特技武官』になった少年「兵頭勇吾」は学園に通いながらある任務に就いていた。 それは一人の少女を護る事。しかしただの護衛任務ではなかった。

転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻
ファンタジー
高校1年生の私、相良葵は、ある日、異世界に転生した。待っていたのは、婚約破棄という厳しい現実。ところが、王宮を追放されかけた私に、世界を救えという極秘任務が与えられ…。

年代記『中つ国の四つの宝玉にまつわる物語』

天愚巽五
ファンタジー
一つの太陽と二つの月がある星で、大きな内海に流れる二つの大河と七つの山脈に挟まれた『中つ国』に興り滅んでいった諸民族と四つの宝玉(クリスタル)にまつわる長い長い物語。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

やくもあやかし物語

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
やくもが越してきたのは、お母さんの実家。お父さんは居ないけど、そこの事情は察してください。 お母さんの実家も周囲の家も百坪はあろうかというお屋敷が多い。 家は一丁目で、通う中学校は三丁目。途中の二丁目には百メートルほどの坂道が合って、下っていくと二百メートルほどの遠回りになる。 途中のお屋敷の庭を通してもらえれば近道になるんだけど、人もお屋敷も苦手なやくもは坂道を遠回りしていくしかないんだけどね……。

処理中です...