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第17話 小鳥の初任務Ⅰ
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俺たちは現在出雲から下校し、高速装甲車【古鷹】を走らせ任務地へと向かっていた。
機械工作科の俺がドライバーを担当し、後部席に輝刃たちが乗り込んでいる。
ワゴン型の装甲車には、様々な装備が搭載されており、既に白兎さんたちは戦闘服に着替えていた。
後部席で雫さんが電子タブレット片手に、車内で作戦概要を報せてくれる。
「本作戦はコレイトン市内に侵入したビッグモンスター【キングホーン】の討伐です。二日前にコレイトン市北部にあるモリオント山よりキングホーンが出現。対象はそのまま南下し、市内を破壊しながら中心部コレイトン闘技場に陣取っているとのことです。この闘技場は重要文化遺産に指定されている建造物で、建築物への被害は最小限にとどめてほしいとコレイトン市長より要望がありました」
俺はキングホーンってどんなモンスターだろうかと思い、レイヴンズ・ファイルを開く。
『キングホーン、雄牛型BM。体長は約18メートルから22メートル。普段は温厚だが、発情期に入ると非常に獰猛な性格へと変化する。頭頂部のツノはダイヤモンドより硬質で、振り回しているだけで甚大な被害が出る』
レイヴンズ・ファイルに映し出されたキングホーンの画像は、見た目バカでかい闘牛で、比較に使用された人間がミニチュアに思えてしまう。
こんな巨獣が暴れ出したら確実に街が崩壊する。
「ユウ君たちは初めてのビッグモンスターね?」
「はい」
「危ないから少し離れた位置で見ていてね」
「あの、あたしも作戦に使ってもらえませんか?」
輝刃がそう言うと、雫さんは困った表情を浮かべる。
「う~ん、多分出番ないかも……」
「あたしだってやってみせます! 足手まといならいつでも切り捨ててもらって構いません!」
「そういう意味じゃないんだけどね……」
「まぁまぁ功を焦るなよ龍宮寺。初戦なんだからゆっくりと先輩の――」
「黙れ変態石マニア」
「やるかテメェ!」
「なによ!」
ハンドルをほったらかして輝刃と取っ組みあいになりかける。
「静かにしなんし!」
犬神先輩に怒られ、俺達は縮こまる。
「「すみません」」
「……龍宮寺のせいで犬神さんから怒りのナンシーが出ただろ」
「小鳥遊君のせいでしょ」
犬神さんの目が再び鋭くなったので、俺達は黙った。
それから日が沈み始めるくらいまで車を走らせると、破壊されたコレイトン市に到着する。
この街は観光産業が盛んで、石造りの古い建物が並ぶ。闘技場含め歴史ある美しい街なのだが、景観保存を優先させている為、防衛壁などが設置されておらずモンスターなどの襲撃に弱い。
一応セキュリティ会社を一社外注で使っているようだが、主に人間専門の警備会社の為、ビッグモンスターは対象外。
市長は文化遺産を守る為、到着の早いレイヴンに出動を要請。一番近い出雲から急遽俺たちが派遣されたというのが、今回の任務の経緯だ。
舗装されていない道路を進むと、窓の外に絵画世界のような美しい街並みが続く。
赤や黄色のレンガ屋根なんかは見た目美しく、市長が防衛壁の建設を嫌がる気持ちがわかる。
しかしその結果、街はキングホーンの通り道兼休憩場となり、今や市内に人影は見えなくなっていた。
避難勧告が出た寂しい街を進んでいくと、急に車両が大きく揺れた。
「キャッ。何!?」
「道に出来たデカい凹みみたいなのを踏んだ」
「キングホーンの足跡ね」
雫さんに言われ装甲車から外を確認すると、巨大なUの字型の足跡が、市街中心部へ向かって点々とつけられている。
「これ、足跡なんですか?」
規格外の足跡に、輝刃の顔が若干引きつる。
「ビッグモンスターだからね」
ビッグモンスターとは体長が10メートルを超える危険種のことを言う。
更にその中で分類があり、防御力に優れるゴーレムや金属種を要塞級、鳥や牛など獣の形をしているものを獣撃級、圧倒的力を持つドラゴン種を伝承級、それらに分類されない種を特殊級という。
これらのビッグモンスターは訓練場にいたモンスターとは別格の強さを誇る、ボス級モンスター。
突然街に現れて対処しなければ長期間居座ることもある、質の悪い台風のようなものだ。
実際伝承級のビッグモンスターが現れた場合、軍もお手上げだし装備の揃ったレイヴンが近くにいなければ、勝手に帰ってくれるまで見守る以外ない。恐らく帰った後に残っているものなど灰以外何もない思うが。
俺たちは装甲車を走らせ市街中心部へと入ると、巨大なコロシアムが見えてきた。
この闘技場では、剣闘士たちが命がけの戦いを行い観衆たちを沸かせていたとか。しかしそれも何百年も昔の話で、古びた闘技場は風化が始まっており、外壁のところどころが朽ち落ちている。
闘技場前に車両を止め、俺達は車を降りる。
破壊された壁から中を覗くと、デカい闘牛キングホーンが丸くなって眠っているのが見えた。
真っ黒い毛並みにトナカイのようなバカでかいツノ。フシュルルルという寝息が遠くにいても聞こえてくる。
「あれがビッグモンスター……。通常のモンスターとはケタ違いなデカさだ」
「ウチは戦力が高いから多分ビッグモンスター討伐の任務が多くなると思うから気をつけてね」
なるほど、やはり常勝チームにはそれにふさわしい任務が与えられるってわけか。
俺が振り返ると、そこには漆黒の戦術強化兵装を身に纏った雫さんの姿があった。
ぴっちりとしたレオタード水着のような装備に、両手両足は機械的な装甲。腰に挿した二本の小太刀(正式名称77式近接小刀)と太ももに巻かれたクナイ。口にはマフラーを巻いていて、白兎さんがSF侍なら雫さんはSF忍者という感じだ。
雫さんの兵科は諜報支援。強行偵察を得意とするアサシン。出雲では忍びとも呼ばれる影の兵科だ。
戦闘服の雫さんを見て、輝刃がドンっと俺の腹を腕で突く。
「やばくない?」
「あぁ、雫さんはエリート忍者だからな。刀剣、忍術を使いこなす密偵のエキスパートだ」
「いや、そうじゃなくて……」
「なんだ」
「……見た目よ」
「お前……俺がせっかく言わないようにしてたのに」
爆乳の雫さんがボディースーツなんか着たら性的になるに決まっている。
スーツに肉が押し込められ形がダイレクトにわかってしまい、直視するのもはばかられる。
こんな格好で隠密するというのだ、正直笑わせないでほしいというくらい目立っている。
もし俺が悪代官なら「えっ? あれ敵じゃない?」と3秒で気づくと思う。
そこにヘルムを被った白兎さんが車両から降りて、雫さんと並ぶ。
バニー侍と爆乳忍者。あーダメダメ。お子さんには見せられない絵面になってます。
機械工作科の俺がドライバーを担当し、後部席に輝刃たちが乗り込んでいる。
ワゴン型の装甲車には、様々な装備が搭載されており、既に白兎さんたちは戦闘服に着替えていた。
後部席で雫さんが電子タブレット片手に、車内で作戦概要を報せてくれる。
「本作戦はコレイトン市内に侵入したビッグモンスター【キングホーン】の討伐です。二日前にコレイトン市北部にあるモリオント山よりキングホーンが出現。対象はそのまま南下し、市内を破壊しながら中心部コレイトン闘技場に陣取っているとのことです。この闘技場は重要文化遺産に指定されている建造物で、建築物への被害は最小限にとどめてほしいとコレイトン市長より要望がありました」
俺はキングホーンってどんなモンスターだろうかと思い、レイヴンズ・ファイルを開く。
『キングホーン、雄牛型BM。体長は約18メートルから22メートル。普段は温厚だが、発情期に入ると非常に獰猛な性格へと変化する。頭頂部のツノはダイヤモンドより硬質で、振り回しているだけで甚大な被害が出る』
レイヴンズ・ファイルに映し出されたキングホーンの画像は、見た目バカでかい闘牛で、比較に使用された人間がミニチュアに思えてしまう。
こんな巨獣が暴れ出したら確実に街が崩壊する。
「ユウ君たちは初めてのビッグモンスターね?」
「はい」
「危ないから少し離れた位置で見ていてね」
「あの、あたしも作戦に使ってもらえませんか?」
輝刃がそう言うと、雫さんは困った表情を浮かべる。
「う~ん、多分出番ないかも……」
「あたしだってやってみせます! 足手まといならいつでも切り捨ててもらって構いません!」
「そういう意味じゃないんだけどね……」
「まぁまぁ功を焦るなよ龍宮寺。初戦なんだからゆっくりと先輩の――」
「黙れ変態石マニア」
「やるかテメェ!」
「なによ!」
ハンドルをほったらかして輝刃と取っ組みあいになりかける。
「静かにしなんし!」
犬神先輩に怒られ、俺達は縮こまる。
「「すみません」」
「……龍宮寺のせいで犬神さんから怒りのナンシーが出ただろ」
「小鳥遊君のせいでしょ」
犬神さんの目が再び鋭くなったので、俺達は黙った。
それから日が沈み始めるくらいまで車を走らせると、破壊されたコレイトン市に到着する。
この街は観光産業が盛んで、石造りの古い建物が並ぶ。闘技場含め歴史ある美しい街なのだが、景観保存を優先させている為、防衛壁などが設置されておらずモンスターなどの襲撃に弱い。
一応セキュリティ会社を一社外注で使っているようだが、主に人間専門の警備会社の為、ビッグモンスターは対象外。
市長は文化遺産を守る為、到着の早いレイヴンに出動を要請。一番近い出雲から急遽俺たちが派遣されたというのが、今回の任務の経緯だ。
舗装されていない道路を進むと、窓の外に絵画世界のような美しい街並みが続く。
赤や黄色のレンガ屋根なんかは見た目美しく、市長が防衛壁の建設を嫌がる気持ちがわかる。
しかしその結果、街はキングホーンの通り道兼休憩場となり、今や市内に人影は見えなくなっていた。
避難勧告が出た寂しい街を進んでいくと、急に車両が大きく揺れた。
「キャッ。何!?」
「道に出来たデカい凹みみたいなのを踏んだ」
「キングホーンの足跡ね」
雫さんに言われ装甲車から外を確認すると、巨大なUの字型の足跡が、市街中心部へ向かって点々とつけられている。
「これ、足跡なんですか?」
規格外の足跡に、輝刃の顔が若干引きつる。
「ビッグモンスターだからね」
ビッグモンスターとは体長が10メートルを超える危険種のことを言う。
更にその中で分類があり、防御力に優れるゴーレムや金属種を要塞級、鳥や牛など獣の形をしているものを獣撃級、圧倒的力を持つドラゴン種を伝承級、それらに分類されない種を特殊級という。
これらのビッグモンスターは訓練場にいたモンスターとは別格の強さを誇る、ボス級モンスター。
突然街に現れて対処しなければ長期間居座ることもある、質の悪い台風のようなものだ。
実際伝承級のビッグモンスターが現れた場合、軍もお手上げだし装備の揃ったレイヴンが近くにいなければ、勝手に帰ってくれるまで見守る以外ない。恐らく帰った後に残っているものなど灰以外何もない思うが。
俺たちは装甲車を走らせ市街中心部へと入ると、巨大なコロシアムが見えてきた。
この闘技場では、剣闘士たちが命がけの戦いを行い観衆たちを沸かせていたとか。しかしそれも何百年も昔の話で、古びた闘技場は風化が始まっており、外壁のところどころが朽ち落ちている。
闘技場前に車両を止め、俺達は車を降りる。
破壊された壁から中を覗くと、デカい闘牛キングホーンが丸くなって眠っているのが見えた。
真っ黒い毛並みにトナカイのようなバカでかいツノ。フシュルルルという寝息が遠くにいても聞こえてくる。
「あれがビッグモンスター……。通常のモンスターとはケタ違いなデカさだ」
「ウチは戦力が高いから多分ビッグモンスター討伐の任務が多くなると思うから気をつけてね」
なるほど、やはり常勝チームにはそれにふさわしい任務が与えられるってわけか。
俺が振り返ると、そこには漆黒の戦術強化兵装を身に纏った雫さんの姿があった。
ぴっちりとしたレオタード水着のような装備に、両手両足は機械的な装甲。腰に挿した二本の小太刀(正式名称77式近接小刀)と太ももに巻かれたクナイ。口にはマフラーを巻いていて、白兎さんがSF侍なら雫さんはSF忍者という感じだ。
雫さんの兵科は諜報支援。強行偵察を得意とするアサシン。出雲では忍びとも呼ばれる影の兵科だ。
戦闘服の雫さんを見て、輝刃がドンっと俺の腹を腕で突く。
「やばくない?」
「あぁ、雫さんはエリート忍者だからな。刀剣、忍術を使いこなす密偵のエキスパートだ」
「いや、そうじゃなくて……」
「なんだ」
「……見た目よ」
「お前……俺がせっかく言わないようにしてたのに」
爆乳の雫さんがボディースーツなんか着たら性的になるに決まっている。
スーツに肉が押し込められ形がダイレクトにわかってしまい、直視するのもはばかられる。
こんな格好で隠密するというのだ、正直笑わせないでほしいというくらい目立っている。
もし俺が悪代官なら「えっ? あれ敵じゃない?」と3秒で気づくと思う。
そこにヘルムを被った白兎さんが車両から降りて、雫さんと並ぶ。
バニー侍と爆乳忍者。あーダメダメ。お子さんには見せられない絵面になってます。
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