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第14話 それぞれのチーム
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それにしても雫さん、白兎さん、犬神さん、輝刃と並ぶと壮観だな……。バランスをとったチーム分けと言っていたが、本当にバランスとれてるか?
「小鳥遊君が雑魚だから、それで帳尻合わせてるのよ」
「俺そこまで足手まといかよ」
いや、足手まといか。自分で言うのもなんだが雑魚である自覚はある。だとしてもスタープレイヤーが揃いすぎだろう。
それに対して雫さんがチーム編成の経緯を教えてくれる。
「えっとね、本当は学園長が将来有望な龍宮寺さんを早めにAランクまで上げてくれって言われたんだけど、私が悠君をチームに入れてくれなきゃやりませんって言って押切っちゃった♡」
テヘッと笑う雫さん。
なんという忖度。
「小鳥遊君と牛若先輩って本当にただの従妹関係?」
「雫さんはな…………俺に甘い」
「なに溜め作ってんのよ、わかるわよそんなの。これじゃ贔屓じゃない」
「それを言えば、このチームはお前を育てるために結成されたドリームチームなんだろ? お互い様だ」
学長から忖度された輝刃と雫さんから忖度された俺。お互い人の事を言えた義理ではない。
雫さんは「それじゃあ自己紹介も終わったことだし」と切り出す。
「一応今日は歓迎会ってことになってるんだけど、その前にお引越ししないとね」
「引っ越し?」
「聞いてない? 新人の入ったチームはしばらく共同生活をするから。荷物をまとめて来てね」
「「はあっ!?」」
輝刃と声がハモる。やめろよ仲良しみたいじゃないか。
俺達は慌てて話を聞く。
「共同生活って、このチームで同じ部屋で暮らすってことだよね?」
「ええ、そうなの。楽しみね」
「あ、あの牛若先輩。さすがに共同生活は問題があるのでは……」
「あら? 他のチームもやってるわよ?」
俺はチラリと猿渡の方を見やる。奴は筋骨隆々な先輩に担がれて拉致(×)、歓迎(○)されていた。
どうやら向こうも共同生活が始まるらしい。
そういえば戦国先輩が、新入りは共同生活で雑用やらされるって言ってたな……。
「心配しなくても大丈夫よ。五人用の部屋を用意してあるから。あっ、個室とかはないから注意してね」
それはタコ部屋と呼ぶのではないでしょうか。
「あ、あのそうじゃなくて、小鳥遊君がいるんですよ!」
輝刃は俺を指さす。ぶっちゃけそこである。
俺は別に共同生活と言われても問題ないが、女性だけのチーム部屋に男が混じるとなると、普通は嫌がるだろう。
「だからどうした」
一番そういう男女のなんやかんやに厳しそうな犬神さんが、腕組みしつつ呆れたように息を吐く。
「だからって……」
「我々はこれよりチームとなった。にもかかわらずチームメイトの得手不得手を知らないでは任務遂行に支障をきたすであろう。共同生活は仲間の情報を知る訓練のようなものじゃ。今回の新人男子は雫の弟一人だが、場合によっては更に増えることもあろう」
「悠君以外入れる気ないけど」
雫さんが何かボソリと呟いた気がする。
「生娘のような羞恥心は捨てろ。ライセンスをとった時点で主らはレイヴンとなったのだ」
「は、はい……」
複雑な表情を浮かべる輝刃の肩を犬神さんがポンと叩く。
「龍宮寺、逆の発想でよく考えなんし。男の生体をよく観察できるチャンスだと。男の身体構造を理解し、どこに攻撃を打ち込めば最大打点を見込めるか、よく見ておくがいい」
犬神さんが目を光らせながら俺の下半身を見ている気がする。
輝刃は頑張ります! と拳を握る。頑張らなくていい。男の弱点なんてほぼ共通である。
「まぁまぁ恥ずかしいのは最初だけだからね」
と言いつつ声を弾ませる雫さん。大義名分を得て一緒にいられるのが嬉しいのだろう。
軍神白兎さんは相変わらず無感情な感じで、住む場所にすら興味がなさそうだ。
輝刃は先輩方に押し切られ、渋々引っ越しを決める。
俺たちは一旦自室に戻り、荷物をまとめて指定された部屋へとやって来た。
すると筋肉先輩たちに簀巻きにされた猿渡が俺の前を通っていく。
「助けて! 助けて!」
「フハハハ、なかなかイキが良い! これから長いのだ、じっくり語り合おうぞ!」
「お前の出生から今までの生き様、全て我らが刻んでやろう!」
「ほんと何もないんです。僕ほんと薄っぺらい人間なんです!」
すぐ隣の部屋に猿渡が連行されていった。
見なかったことにしよう。
気を取り直して部屋の中へ入ると、キッチン、シャワー室はあるもののテレビモニターが一台とベッドが5台並ぶ縦長の部屋。
五人用のビジネスホテルとでも言えばいいのだろうか。軽く食事が出来て、後は寝るだけの部屋という感じ。
「二段ベッドじゃないだけマシか……」
この時点でプライベートなんて欠けらもないことを悟る。
恐らくこの部屋において個人スペースはベッドの上のみだ。
遅れてやってきた輝刃も、部屋を見てそれを理解したらしく、眉を歪めて俺を睨む。
「変なことするなよ」
「あたしのセリフよ!!」
☆
歓迎会の夜が明けて翌日――
教室で俺たちはそれぞれの机に突っ伏していた。一応チーム分けはされたが、任務があるまでは学園待機なので、しばらくはいつもどおりの学園生活が続く。
顔色の悪い戦国先輩はなんとか俺と猿渡を見渡し、話を始める。
「とりあえず、チームでの初日……どうでゴザったか?」
「酷い……っす」
「やばい……」
「もうちょっと具体的に報告するでゴザル」
「じゃあオレから……」
猿渡は自身のチーム状況を告げる。
「兄者たちは基本いい人。面倒見も良く、戦闘能力も高くて頼りになります」
「たった一日で先輩の呼び方が兄者に代わってる時点でやばさを感じる」
「ただ酒を飲むとやばい」
「暴れるとか?」
「違う。……脱ぐんだ。すぐ全裸になる」
「それは酷いけど、予想通りすぎる」
「初めて男からのセクハラを感じた」
「悪気はないんだろ?」
「まぁ単純な酒癖だな。あぁちなみに兄者は全員20だから」
「嘘だろ、全員30くらいの貫禄あっただろ」
「一応学生だからな」
「男子校的なノリでそのまま大きくなった感じでゴザルな」
「歓迎会が終わったあとは全員で風呂入って川の字になって寝た」
「なんだそれ兄貴が3人増えたみたいじゃん」
「意外とよいのではないでゴザルか?」
「……朝に掃除と洗濯をすることになってるんだが、先輩のフンドシ洗ってる時死にたくなるぞ」
「洗濯機使えよ」
「臭いが移るから使用禁止にされた」
「それどうやって洗ってるでゴザルか?」
「洗濯板」
「そういやランドリーでなんか洗ってたな。戦国先輩はどうなんですか?」
「拙者でゴザルか」
「戦国先輩は当たりっすよね? 確か女性ばかりのチームで」
「えっ?」
「いや、えじゃなくて」
「んっ?」
「いや、聞こえてるでしょ」
至近距離ですっとぼける戦国先輩。どうやら何かあったらしい。
「拙者の話はよくない?」
「ダメですよ。ちゃんと話して下さい」
「そうっすよ。多少イラついても我慢しますから」
俺たちがそう言うと、戦国先輩はフフッと意味深な笑みを浮かべる。
「拙者のチームの先輩、全員男でゴザった」
「「……………」」
俺と猿渡に落雷のような衝撃が走る。
「とてもメイクの上手い、本当に見分けがつかないくらい美しい……男でゴザった」
戦国先輩の目から綺麗な涙がポロリとこぼれる。
「嘘でしょ? どう見ても女の人でしたよ?」
「歓迎会が終わった後、拙者まさかの先輩のベッドにお呼ばれしたでゴザル。その時は本気で男になるつもりでお邪魔したが……ついていたでゴザル。立派な刀が……」
「侍……でしたか……」
こういう時ほんとどういう顔していいかわからない。俺と猿渡が絞り出した言葉は――
「「お悔やみ申し上げます」」
「しかも……剣豪だったでゴザル……」
「「心中お察しします」」
「でも段々隣で寝ている先輩を見ていると、ムラムラしてくるでゴザル……」
「はやまっちゃダメっすよ。戦国先輩なんか足軽みたいなもんなんですから、軽く斬り殺されますよ」
「皆大変だな」
俺がそう言うとギロリと睨まれた。
「「で、お前はどうなんだよ」」
「いや、俺も皆と同じく掃除と洗濯してるよ」
「小鳥遊君が雑魚だから、それで帳尻合わせてるのよ」
「俺そこまで足手まといかよ」
いや、足手まといか。自分で言うのもなんだが雑魚である自覚はある。だとしてもスタープレイヤーが揃いすぎだろう。
それに対して雫さんがチーム編成の経緯を教えてくれる。
「えっとね、本当は学園長が将来有望な龍宮寺さんを早めにAランクまで上げてくれって言われたんだけど、私が悠君をチームに入れてくれなきゃやりませんって言って押切っちゃった♡」
テヘッと笑う雫さん。
なんという忖度。
「小鳥遊君と牛若先輩って本当にただの従妹関係?」
「雫さんはな…………俺に甘い」
「なに溜め作ってんのよ、わかるわよそんなの。これじゃ贔屓じゃない」
「それを言えば、このチームはお前を育てるために結成されたドリームチームなんだろ? お互い様だ」
学長から忖度された輝刃と雫さんから忖度された俺。お互い人の事を言えた義理ではない。
雫さんは「それじゃあ自己紹介も終わったことだし」と切り出す。
「一応今日は歓迎会ってことになってるんだけど、その前にお引越ししないとね」
「引っ越し?」
「聞いてない? 新人の入ったチームはしばらく共同生活をするから。荷物をまとめて来てね」
「「はあっ!?」」
輝刃と声がハモる。やめろよ仲良しみたいじゃないか。
俺達は慌てて話を聞く。
「共同生活って、このチームで同じ部屋で暮らすってことだよね?」
「ええ、そうなの。楽しみね」
「あ、あの牛若先輩。さすがに共同生活は問題があるのでは……」
「あら? 他のチームもやってるわよ?」
俺はチラリと猿渡の方を見やる。奴は筋骨隆々な先輩に担がれて拉致(×)、歓迎(○)されていた。
どうやら向こうも共同生活が始まるらしい。
そういえば戦国先輩が、新入りは共同生活で雑用やらされるって言ってたな……。
「心配しなくても大丈夫よ。五人用の部屋を用意してあるから。あっ、個室とかはないから注意してね」
それはタコ部屋と呼ぶのではないでしょうか。
「あ、あのそうじゃなくて、小鳥遊君がいるんですよ!」
輝刃は俺を指さす。ぶっちゃけそこである。
俺は別に共同生活と言われても問題ないが、女性だけのチーム部屋に男が混じるとなると、普通は嫌がるだろう。
「だからどうした」
一番そういう男女のなんやかんやに厳しそうな犬神さんが、腕組みしつつ呆れたように息を吐く。
「だからって……」
「我々はこれよりチームとなった。にもかかわらずチームメイトの得手不得手を知らないでは任務遂行に支障をきたすであろう。共同生活は仲間の情報を知る訓練のようなものじゃ。今回の新人男子は雫の弟一人だが、場合によっては更に増えることもあろう」
「悠君以外入れる気ないけど」
雫さんが何かボソリと呟いた気がする。
「生娘のような羞恥心は捨てろ。ライセンスをとった時点で主らはレイヴンとなったのだ」
「は、はい……」
複雑な表情を浮かべる輝刃の肩を犬神さんがポンと叩く。
「龍宮寺、逆の発想でよく考えなんし。男の生体をよく観察できるチャンスだと。男の身体構造を理解し、どこに攻撃を打ち込めば最大打点を見込めるか、よく見ておくがいい」
犬神さんが目を光らせながら俺の下半身を見ている気がする。
輝刃は頑張ります! と拳を握る。頑張らなくていい。男の弱点なんてほぼ共通である。
「まぁまぁ恥ずかしいのは最初だけだからね」
と言いつつ声を弾ませる雫さん。大義名分を得て一緒にいられるのが嬉しいのだろう。
軍神白兎さんは相変わらず無感情な感じで、住む場所にすら興味がなさそうだ。
輝刃は先輩方に押し切られ、渋々引っ越しを決める。
俺たちは一旦自室に戻り、荷物をまとめて指定された部屋へとやって来た。
すると筋肉先輩たちに簀巻きにされた猿渡が俺の前を通っていく。
「助けて! 助けて!」
「フハハハ、なかなかイキが良い! これから長いのだ、じっくり語り合おうぞ!」
「お前の出生から今までの生き様、全て我らが刻んでやろう!」
「ほんと何もないんです。僕ほんと薄っぺらい人間なんです!」
すぐ隣の部屋に猿渡が連行されていった。
見なかったことにしよう。
気を取り直して部屋の中へ入ると、キッチン、シャワー室はあるもののテレビモニターが一台とベッドが5台並ぶ縦長の部屋。
五人用のビジネスホテルとでも言えばいいのだろうか。軽く食事が出来て、後は寝るだけの部屋という感じ。
「二段ベッドじゃないだけマシか……」
この時点でプライベートなんて欠けらもないことを悟る。
恐らくこの部屋において個人スペースはベッドの上のみだ。
遅れてやってきた輝刃も、部屋を見てそれを理解したらしく、眉を歪めて俺を睨む。
「変なことするなよ」
「あたしのセリフよ!!」
☆
歓迎会の夜が明けて翌日――
教室で俺たちはそれぞれの机に突っ伏していた。一応チーム分けはされたが、任務があるまでは学園待機なので、しばらくはいつもどおりの学園生活が続く。
顔色の悪い戦国先輩はなんとか俺と猿渡を見渡し、話を始める。
「とりあえず、チームでの初日……どうでゴザったか?」
「酷い……っす」
「やばい……」
「もうちょっと具体的に報告するでゴザル」
「じゃあオレから……」
猿渡は自身のチーム状況を告げる。
「兄者たちは基本いい人。面倒見も良く、戦闘能力も高くて頼りになります」
「たった一日で先輩の呼び方が兄者に代わってる時点でやばさを感じる」
「ただ酒を飲むとやばい」
「暴れるとか?」
「違う。……脱ぐんだ。すぐ全裸になる」
「それは酷いけど、予想通りすぎる」
「初めて男からのセクハラを感じた」
「悪気はないんだろ?」
「まぁ単純な酒癖だな。あぁちなみに兄者は全員20だから」
「嘘だろ、全員30くらいの貫禄あっただろ」
「一応学生だからな」
「男子校的なノリでそのまま大きくなった感じでゴザルな」
「歓迎会が終わったあとは全員で風呂入って川の字になって寝た」
「なんだそれ兄貴が3人増えたみたいじゃん」
「意外とよいのではないでゴザルか?」
「……朝に掃除と洗濯をすることになってるんだが、先輩のフンドシ洗ってる時死にたくなるぞ」
「洗濯機使えよ」
「臭いが移るから使用禁止にされた」
「それどうやって洗ってるでゴザルか?」
「洗濯板」
「そういやランドリーでなんか洗ってたな。戦国先輩はどうなんですか?」
「拙者でゴザルか」
「戦国先輩は当たりっすよね? 確か女性ばかりのチームで」
「えっ?」
「いや、えじゃなくて」
「んっ?」
「いや、聞こえてるでしょ」
至近距離ですっとぼける戦国先輩。どうやら何かあったらしい。
「拙者の話はよくない?」
「ダメですよ。ちゃんと話して下さい」
「そうっすよ。多少イラついても我慢しますから」
俺たちがそう言うと、戦国先輩はフフッと意味深な笑みを浮かべる。
「拙者のチームの先輩、全員男でゴザった」
「「……………」」
俺と猿渡に落雷のような衝撃が走る。
「とてもメイクの上手い、本当に見分けがつかないくらい美しい……男でゴザった」
戦国先輩の目から綺麗な涙がポロリとこぼれる。
「嘘でしょ? どう見ても女の人でしたよ?」
「歓迎会が終わった後、拙者まさかの先輩のベッドにお呼ばれしたでゴザル。その時は本気で男になるつもりでお邪魔したが……ついていたでゴザル。立派な刀が……」
「侍……でしたか……」
こういう時ほんとどういう顔していいかわからない。俺と猿渡が絞り出した言葉は――
「「お悔やみ申し上げます」」
「しかも……剣豪だったでゴザル……」
「「心中お察しします」」
「でも段々隣で寝ている先輩を見ていると、ムラムラしてくるでゴザル……」
「はやまっちゃダメっすよ。戦国先輩なんか足軽みたいなもんなんですから、軽く斬り殺されますよ」
「皆大変だな」
俺がそう言うとギロリと睨まれた。
「「で、お前はどうなんだよ」」
「いや、俺も皆と同じく掃除と洗濯してるよ」
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