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第12話 ホワイトフォックス&ブラックラビット
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雫さんに呼ばれて彼女の元へと向かうと、隣に輝刃がいることに気づく。
「なぜお前が」
「それはこっちのセリフよ」
「二人とも間違ってないから大丈夫よ。私たちのチームは新人二人編入だから」
雫さんは説明を入れてくれると、俺達に優しくほほ笑んだ。
「一応自己紹介をしておくわね。私は牛若雫。悠悟君の従妹でもあるの。チームのとりまとめは私が行うから困ったことがあったら私に言ってね」
俺は周囲を見渡し、雫さんしかいないことに気づく。
「あの……雫さん、もしかして俺たちのチームって俺と龍宮寺の三人ですか?」
「ううん、違うわ。後二人、正確には後三人なんだけど、任務で遅れてるの」
「そうなんですか」
「多分もう帰って来るんじゃないかしら?」
雫さんの言葉通り、講堂の扉が開き二人の女生徒が入って来る。任務帰りからか、二人は制服ではなく戦闘用の服を纏っていた。
一人は白銀の髪に獣の耳が頭から伸び、側頭部に白狐の面をつけている。
服装は青のミニ丈の巫女装束で、肩が露出しており巫女というより花魁のようにも見える。
目尻に赤い化粧をしており、その瞳は冷淡で色を感じさせない。
もう一人は、褐色の肌に真っ白いレオタードのような戦術強化スーツ。腰に一振りの刀を差した女性侍。
頭はミリタリー用のフルフェイスのヘルムを被り、顔を伺うことはできない。
一見痴女にも見えるが、このスーツは出雲が誇る最新の強化兵装で、これの使用が許可されるのはAランクレイヴンより更に上の教官クラスだけだ。
強力な戦闘力を誇るが、そのあまりにも軽量化を追求しすぎてぴっちりとしたバニーガールのようなスーツは、実力もそうだがよっぽどのスタイルがないと着こなせない。
そう、バニーガール侍は雫さんと並ぶほどの巨乳でスタイルが良かった。
元はGアメリアの強化スーツだったらしいが、出雲が改修。なんでも小型、軽量化する癖が出てしまった結果である。
女子レイヴンたちからはすこぶる不評だが、男子レイヴンからは大好評だ。
二人の女子学生のただならぬ雰囲気に、周囲の生徒たちもどよめきを見せている。
「オイ、あれ式鬼の犬神と軍神白兎じゃ……」
「牛若、犬神、白兎……四天王のうち三人集めるって、出雲は戦争でもやるつもりか……?」
異様な雰囲気を纏う二人の美女が俺たちの前に立つ。
二人を一言で表すなら白い狐と黒い兎。
戦いに疎い俺でもわかる。この人たちは強い。隙のない立ち居振る舞い、身に纏うプレッシャーに足が小さく震える。
猿渡の筋肉先輩やヤンキー先輩を見て勘違いしがちだが、これが本物のレイヴン。
特にA級ともなれば、このプレッシャーが普通。
隣を見れば輝刃も同じように脚が小刻みに震えていた。
「この子たちがウチの新人。小鳥遊悠悟君と、龍宮寺輝刃ちゃん」
雫さんが俺たちの紹介をしてくれると、真っ白い雪のような肌に氷のような瞳をした巫女の女性が口を開く。
「わっちは術式掃討兵科、犬神葵」
青巫女の犬神さんは短く言葉を切ると、キセルのようなものを口にくわえる。
切れ長の瞳がこちらをチラリと見やるが、すぐに興味を失ったように視線を戻し、キセルに火をつけた。
うん、多分この人は怒らせると怖い氷タイプだ。
今度は強化スーツの女性が答える。
「強襲機動兵科、御剣白兎」
白兎さんが喋った瞬間氷柱を背中に押し当てられたような、ゾワっとした感覚が全身を駆け巡る。
あっ、この人やばい。喋っただけなのに震えが止まんねぇや。
小刻みに震えていた足が、砕けそうなくらい震え始めた。
これは多分動物の本能的な恐れだ。目の前を猛獣が通りかかったら足がすくんで動けなくなるのと同じで、出会った時点で負けを悟っている。
ダメだ心臓を掴まれてるみたいで、息苦しさすら感じてきた。そう思っていると、雫さんがどこから取り出したのか、ハリセンでパーンっと二人の頭をはたいた。
「葵ちゃん、白兎ちゃん、任務帰りだからって、そんな殺気全開で自己紹介なんかしちゃダメよ。悠君も輝刃ちゃんも怯えちゃってるじゃない」
雫さんは笑顔ながらこめかみに怒筋が浮かんでいる。
「ちょっと試しただけじゃろう」
「雫……怒ると怖い」
二人は頭をおさえる。
「あと白兎ちゃんはそのヘルメットとりましょうね」
さっきまでの動けば殺す。動かなくても殺すといった、眉間に銃口をつきつけられたような空気が一気に霧散する。
白兎さんは強化スーツのヘルムをとると、中からボリュームのある長い髪がふわりと揺れる。
息を飲む整った美しい顔立ち。ヘルメットにレオタードスーツって、変態(×)じゃなくて、凄い装備をしているなと思ったが、中身は犬神さんと同じくクール系美女。
しかし彼女の目は閉じられていて、ヘルムを外した後も開けられることがない。
「白兎ちゃんは目に強い魔力があって無暗に目を開けられないの」
「なるほど」
確か魔眼という、目を見ただけで無差別に術をかけてしまう恐ろしいものがあると聞いたことがある。出雲ではあまり魔眼は聞かず、瞳術と呼ばれることが多いが意味はほぼ同じだ。
「ちなみに瞳を見ちゃうとどうなるの?」
「強い人は精神力で跳ね返しちゃうんだけど、ユウ君みたいな耐性がない人が見ちゃうと多分止まっちゃう」
「どういうこと?」
「体がね、石になったみたいにカチーンっと止まっちゃうの」
「時間停止って奴?」
だとしたら面白くない? リアルだるまさんが転んだである。
「呼吸も心臓も止まっちゃうけどね」
そんな可愛いものじゃなかった。
「……それやばない?」
「うん、死んじゃうわね」
白兎さんが目を開けただけで大量殺人できるとかやばすぎる。
そんなの引き金のいらない銃が目に仕込まれているのと同じだ。
「なぜお前が」
「それはこっちのセリフよ」
「二人とも間違ってないから大丈夫よ。私たちのチームは新人二人編入だから」
雫さんは説明を入れてくれると、俺達に優しくほほ笑んだ。
「一応自己紹介をしておくわね。私は牛若雫。悠悟君の従妹でもあるの。チームのとりまとめは私が行うから困ったことがあったら私に言ってね」
俺は周囲を見渡し、雫さんしかいないことに気づく。
「あの……雫さん、もしかして俺たちのチームって俺と龍宮寺の三人ですか?」
「ううん、違うわ。後二人、正確には後三人なんだけど、任務で遅れてるの」
「そうなんですか」
「多分もう帰って来るんじゃないかしら?」
雫さんの言葉通り、講堂の扉が開き二人の女生徒が入って来る。任務帰りからか、二人は制服ではなく戦闘用の服を纏っていた。
一人は白銀の髪に獣の耳が頭から伸び、側頭部に白狐の面をつけている。
服装は青のミニ丈の巫女装束で、肩が露出しており巫女というより花魁のようにも見える。
目尻に赤い化粧をしており、その瞳は冷淡で色を感じさせない。
もう一人は、褐色の肌に真っ白いレオタードのような戦術強化スーツ。腰に一振りの刀を差した女性侍。
頭はミリタリー用のフルフェイスのヘルムを被り、顔を伺うことはできない。
一見痴女にも見えるが、このスーツは出雲が誇る最新の強化兵装で、これの使用が許可されるのはAランクレイヴンより更に上の教官クラスだけだ。
強力な戦闘力を誇るが、そのあまりにも軽量化を追求しすぎてぴっちりとしたバニーガールのようなスーツは、実力もそうだがよっぽどのスタイルがないと着こなせない。
そう、バニーガール侍は雫さんと並ぶほどの巨乳でスタイルが良かった。
元はGアメリアの強化スーツだったらしいが、出雲が改修。なんでも小型、軽量化する癖が出てしまった結果である。
女子レイヴンたちからはすこぶる不評だが、男子レイヴンからは大好評だ。
二人の女子学生のただならぬ雰囲気に、周囲の生徒たちもどよめきを見せている。
「オイ、あれ式鬼の犬神と軍神白兎じゃ……」
「牛若、犬神、白兎……四天王のうち三人集めるって、出雲は戦争でもやるつもりか……?」
異様な雰囲気を纏う二人の美女が俺たちの前に立つ。
二人を一言で表すなら白い狐と黒い兎。
戦いに疎い俺でもわかる。この人たちは強い。隙のない立ち居振る舞い、身に纏うプレッシャーに足が小さく震える。
猿渡の筋肉先輩やヤンキー先輩を見て勘違いしがちだが、これが本物のレイヴン。
特にA級ともなれば、このプレッシャーが普通。
隣を見れば輝刃も同じように脚が小刻みに震えていた。
「この子たちがウチの新人。小鳥遊悠悟君と、龍宮寺輝刃ちゃん」
雫さんが俺たちの紹介をしてくれると、真っ白い雪のような肌に氷のような瞳をした巫女の女性が口を開く。
「わっちは術式掃討兵科、犬神葵」
青巫女の犬神さんは短く言葉を切ると、キセルのようなものを口にくわえる。
切れ長の瞳がこちらをチラリと見やるが、すぐに興味を失ったように視線を戻し、キセルに火をつけた。
うん、多分この人は怒らせると怖い氷タイプだ。
今度は強化スーツの女性が答える。
「強襲機動兵科、御剣白兎」
白兎さんが喋った瞬間氷柱を背中に押し当てられたような、ゾワっとした感覚が全身を駆け巡る。
あっ、この人やばい。喋っただけなのに震えが止まんねぇや。
小刻みに震えていた足が、砕けそうなくらい震え始めた。
これは多分動物の本能的な恐れだ。目の前を猛獣が通りかかったら足がすくんで動けなくなるのと同じで、出会った時点で負けを悟っている。
ダメだ心臓を掴まれてるみたいで、息苦しさすら感じてきた。そう思っていると、雫さんがどこから取り出したのか、ハリセンでパーンっと二人の頭をはたいた。
「葵ちゃん、白兎ちゃん、任務帰りだからって、そんな殺気全開で自己紹介なんかしちゃダメよ。悠君も輝刃ちゃんも怯えちゃってるじゃない」
雫さんは笑顔ながらこめかみに怒筋が浮かんでいる。
「ちょっと試しただけじゃろう」
「雫……怒ると怖い」
二人は頭をおさえる。
「あと白兎ちゃんはそのヘルメットとりましょうね」
さっきまでの動けば殺す。動かなくても殺すといった、眉間に銃口をつきつけられたような空気が一気に霧散する。
白兎さんは強化スーツのヘルムをとると、中からボリュームのある長い髪がふわりと揺れる。
息を飲む整った美しい顔立ち。ヘルメットにレオタードスーツって、変態(×)じゃなくて、凄い装備をしているなと思ったが、中身は犬神さんと同じくクール系美女。
しかし彼女の目は閉じられていて、ヘルムを外した後も開けられることがない。
「白兎ちゃんは目に強い魔力があって無暗に目を開けられないの」
「なるほど」
確か魔眼という、目を見ただけで無差別に術をかけてしまう恐ろしいものがあると聞いたことがある。出雲ではあまり魔眼は聞かず、瞳術と呼ばれることが多いが意味はほぼ同じだ。
「ちなみに瞳を見ちゃうとどうなるの?」
「強い人は精神力で跳ね返しちゃうんだけど、ユウ君みたいな耐性がない人が見ちゃうと多分止まっちゃう」
「どういうこと?」
「体がね、石になったみたいにカチーンっと止まっちゃうの」
「時間停止って奴?」
だとしたら面白くない? リアルだるまさんが転んだである。
「呼吸も心臓も止まっちゃうけどね」
そんな可愛いものじゃなかった。
「……それやばない?」
「うん、死んじゃうわね」
白兎さんが目を開けただけで大量殺人できるとかやばすぎる。
そんなの引き金のいらない銃が目に仕込まれているのと同じだ。
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