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110.パレードはおしまい

天空の魔女 リプルとペブル

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110.パレードはおしまい

 やがて動物たちのパレードは、王宮の前へと到着した。
 すると、転ぶように動物たちの前へと走り出てきた人物がいた。
 あのガンガル村の動物園の園長を一回り小さくしたようなおじさんだった。

「皆さん、動物たちをここまで連れてきてくださって本当にありがとうございます。私、園長の弟の副園長でございます。動物は、私がこちらで引き取りますです。はい」

 副園長は、ライオンにむかって手を上から下へと下ろしてみせた。
 するとライオンは、膝を折ってかがんだ。
 イザベスは優雅にライオンから降りると
 「まぁまぁな乗り心地でしたわ。ほめてあげます」
 と、ライオンのたてがみをなでた。
 
 ライオンはまんざらでもなさそうに「ガオーッ」と、ひと声吠えると、イザベスに背を向けあるきだした。
「そこ、右に曲がるんだよ。王宮の隣にある市民広場へ行くんだよ。はい」
 副園長がライオンの背にむかってそう声をかけた。

 マーサは、シマウマの背をやさしくなでて、
「乗せてくれてありがとう」
 と礼を言った。
 シマウマはブルブルと顔を小さくゆすぶると、マーサのおでこにチョンと鼻をつけた。
 そして、ライオンの後を軽快な足取りでついていく。

 ロッドもクロヒョウからひらりと飛び降りた。
 クロヒョウは、何事もなかったかのように、ゆっくりと長い尾をゆらして歩み去っていった。
 
 動物たちが歩いていくのをみたダチョウは、バサバサと羽根をはためかせながら、ライオンの去ったほうに走りだそうとした。
「ちょ、ちょっと待って。私もここで降ろしてよ」

 あわててペブルが騒いだので、その声に驚いたダチョウは急に立ち止まった。
 ペブルは勢い余って、前の方に投げ出された。
「痛ったあ。ひどいわ。降ろしてって言ったのよ。落としてじゃない」

 地面に打ち付けた腕をさすりながらペブルは文句を言った。
 ダチョウは、騒ぐペブルには見向きもしない。
 
 昨日まであんなにペブルになついていたダチョウだったが、副園長の顔をみたとたん、ペブルに興味を無くしたようだった。
 いまも知らん顔をして、羽根をバサバサさせながら動物たちの列を追っていった。

「ダ・チョウ~、忘れないよ。君のタマゴで作ったカステラ」
 ペブルが去りゆくダチョウの背に向かって叫ぶ。

「あーあ、行っちゃったね」
 リプルが動物たちの姿を見送りながら、残念そうにつぶやく。
 ジールが
「みんなで会いに行こうよ。移動動物園にいけば会えるよ」

 リプルは胸が弾むのを感じた。次の約束があるって、なんてステキなことなんだろう。
 
 動物たちと入れ替わるかのように、地上からは軽快な石畳をかける音が、上空からは、するどく空を切るような羽音が聞こえてきた。使い魔たちが、主を迎えにきたのだ。

「ジール、ご無事で何より」
 銀狼のファングが前足を折り、うやうやしく頭を下げる。

「ロッド、意外に手間取ったな」
 ウィングは、目をキラリと光らせつつロッドの肩に止まった。
 ウイングは、周囲を油断なく目を巡らせると、
「しかし、まぁ全員元気そうで何よりだ。ロッド、さぞかし守りがいがあったろうな」
 と、使い主をおもんばかった。

「あっ、ああ。まぁな。守りがいあったよ。特にペブルのヤツは」
「ふつつかなペブルですが、これからも、よろしくお願いします」
 リプルが、少しふざけて頭をさげた。

「ふつつかで、無鉄砲なペブルのことは、まかせろ」
 ロッドが斧の持ち手に手をかけ、騎士の誓いをしたところで、話題の主がキレた。

「ちょっと、さっきから聞いてたら、なんでロッドってば私のこと、ふつつかとか、トラブルメイカーとか、厄介者とか、言ってんのよ」
 ペブルは、両手を振り上げてロッドにつかみかかろうとした。

 ロッドはヒラリと身をかわし、
「そんなこと言ってないけど、自覚はあるんだな」
 と、笑う。

「許さないっ」
「ほら、すぐに頭に血がのぼる」
 と、ロッドは少し先の場所からペブルをからかう。

「待て~」
 と言いながら、ペブルはロッドを追いかけていった。

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