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106.塔からの脱出
天空の魔女 リプルとペブル
しおりを挟む106.塔からの脱出
岩を削って作ったような坂道をひたすら歩き続けるはめになり、頂上まで登るには2時間近くかかった。
途中、ペブルが
「もーダメ。お腹すいて、一歩だって動けない」
と、座り込んでしまった。
すると、なんとダチョウがコロンとタマゴを産み落としてくれて、それでみんなで力をあわせてフワフワのカステラを作った。
戦い疲れていて、さすがのリプルもいつものような優雅なティータイムを用意することはできなかったが、みんなが魔法を持ち寄った。
イザベスが火をおこし、マーサが空気から水蒸気を発生させて水を作り出し、リプルがボウルを用意して、ペブルは……「みんな、がんばれ~、もうすぐカステラだ~」と自作の応援歌を歌った。
ペブルの調子はずれの歌を聞いて、ロッドはみけんにしわをよせたが、何も小言を言うことなく、プイとそっぽをむいた。だが、そむけた顔には小さく笑みが浮かんでいた。
闇の世界に、カステラの甘い香りがただよって、できたてのあつあつのカステラをほおばりながら、リプルたちは、少しだけ幸せな気持ちを味わった。
ふたたび上階へ向かって歩き始めると、ジールがリプルのとなりにさりげなく並んで声をかけた。
「リプル、王都についたら、さっきのカステラ作ろう。街の人たちにぜひふるまいたいんだ」
ところが、リプルは、
「王都についたら、私は秘伝魔法の書を受け取ってすぐオルサトへ帰らないといけないから」
と、そっけなく答えた。
いつもと違うリプルのよそよそしい態度に、ジールは小さく首をかしげる。
リプルは、そっとくちびるをかみしめていた。
自分の秘密をジールに知られてしまったリプルの心が、これ以上、ジールと仲良くなることをこばんでいたのだった。
すると、その時、前を行くペブルが突然、騒ぎ出した。
「あ、ダ・チョウ、どこ行くの? 待って!」
ダチョウが、何かを見つけたのか、猛ダッシュで坂道を駆けあがっていく。
ペブルは、バタバタとダチョウの後を追いかけて走り出した。
「おい、待てよ、ペブル! また迷子になるぞ! ったく」
ロッドが、ペブルを追いかける。
マーサとイザベスは、顔を見合わせると、クスッと笑い後に続いて走り出した。
リプルもあとにつづいて走りだそうとした。
すると、ジールに後ろから手首をつかまれた。
リプルはおびえたような目でジールをふりかえる。
「みんなと一緒に行かないと」
リプルが、あらがうようにジールの手を外そうとする。
しかし、ジールは何も言わずに、リプルを自分の目の前に引き寄せた。
少し悲しそうな目をして。
そして、ゆっくりとリプルの魔女服のフードを外した。
リプルは、いたたまれなくなって、泣きそうな顔になり、うつむいた。
「だまっていてごめんなさい。私、魔力の強いところに来るとオオカミの耳になっちゃうの。なんでだか分からないけど」
そう言いながらリプルは、両手で自分の顔をおおった。
そんなリプルの両手をジールは、そっと握って、顔から外させる。
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その目は涙ににじんでいて、ジールの顔がゆがんで見えた。
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