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101.戦闘

天空の魔女 リプルとペブル

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101.戦闘

「まずい、隠れて」
 リプルはみんなに短く伝え、みんなもその声に従って物陰に姿を隠す。

「ここまで、おいで~」
 ペブルは、ダチョウの背に乗って、敵に追いかけられながら逃げていた。
「そっか。ダチョウに乗ってりゃ、早いし、敵にも追いつかれないな」
 ロッドが笑いをかみ殺す。

 隠れているリプルたちの目の前をダチョウに乗ったペブル、そして約20体の敵が駆け抜けていった。

 ペブルがおとりになることで、敵の背後に回ることに成功したリプルたち。
「今度こそ、行くぞ」
 ジールの合図で飛び出したロッドがすぐさま二体の敵を切り倒した。
 二十体ほどもいるだろうか、敵の黒ブドウのようなカタチをした化け物たちは、たちまち混乱に陥ったようだ。
 互いに触手のようなものを絡め合ったり、打ち合ったりして戸惑っている。

 その間に、ジールとロッドは、素早く黒ブドウたちをしとめていく。
 リプルは、遠くから矢を射かけ、マーサは、呪文を唱えて黒ブドウたちの動きを緩慢にしていく。

 徐々に黒ブドウたちの数が減っていったが、一方で逃げるのをやめたペブルのほうは、壁ぎわに追い詰められていた。
 複数の敵にかっ込まれて、ペブルは逃げられない。
 敵は、ペブルにむかって黒い触手を何本も伸ばして迫っている。

 ペブルは涙目になりながらも、背中にダチョウをかばいつつ
「こっち来るな、ひえー」
 と言いながら、巨大ハンマーを振り回していた。

 ペブルの背後からダチョウも首を出しては、黒ブドウを突こうとしている。
 けれど、ペブルの方は、もう手に力が入らなくなって、ついにハンマーを落としてしまった。
(やられる)と、ペブルは思わずかがみ込んで頭を抱え、ぎゅっと目を閉じた。

 あのにゅるにゅるの黒いヒモのようなものにつかまれるのを覚悟して、体をぎゅっと固くする。
 一秒、二秒。
 あれ? 
 ペブルがうっすらと目を開けた時、そこにロッドの背中があった。

 ペブルが襲われる直前、ペブルと敵の間にロッドがすべりこみ、今まさにペブルにつかみかかろうとしていた敵の触手を切り落としたのだった。

「勢いは口だけかよ」
 そう言ってロッドがペブルの手を取り立ち上がらせてくれる。
「ロッド」
 ペブルは、素早く立ち上がって涙をぬぐうと、落ちていたハンマーを手に取って、
「おりゃー」
 と、また隣の黒ブドウに立ち向かっていった。

 こうして、リプルたちはすべての黒ブドウを始末した。
 全員、とても疲れていたが、そんなことを口にしているヒマはなかった。

「たぶん、イザベスはこの上の階にいる」
 リプルの言葉にみんなが言葉もなくうなずいた。
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