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98.天災の塔の中へ
天空の魔女 リプルとペブル
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98.天災の塔の中へ
2時間ほどたった頃、リプルたちは、ようやくまがまがしい妖気を発する塔の下にたどり着いた。
塔の周囲は体育館ほどの広さがあり、見あげても黒いもやがかかっていて、はっきりと見通せない。
壁はゴツゴツと削り取ったような荒々しい岩肌で、積み木をいびつに積み上げたような不安定な形をしている。
「なんだか、ここまですんなり来られちゃったけど、どうやって入るんだろ?」
「油断するなよ。敵は、俺らを油断させといて一網打尽にしようっていう魂胆かもしれない。決して、その辺の物を適当に触ったり……って、おい!」
ロッドが注意をうながしているそばから、ペブルは、扉とおぼしきものの隣にあった赤いボタンを押していた。
シューっという音がして、扉が開きかけた。
全員あわてて近くの大きな岩の陰に姿を隠した。
しかし、中から何かが出てくるような様子は全くなかった。
「全く、お前ってヤツは」
ロッドがあきれたようにペブルをにらみつける。
「ごめん。『OPEN』って書いてあったから、つい。でもま、扉が開いたから、よかったってことで」
ペブルは、ニコリと笑うと行くわよと言って、大きなハンマーを担ぎ上げ、扉の中へと入っていく。
その後をダチョウがヒョコヒョコとついていく。どうやらすっかりペブルになついたようだ。
「あいつ、無事に帰れたら、しめてやる。覚えてろよ」
ロッドは、ペブルの後ろ姿をにらみつけながら歯ぎしりした。
塔の中は、薄暗かったが、かろうじて隣にいる人の顔が見えるくらいの光はあった。
中の壁も、岩肌を荒く削っただけのような殺風景な空間が続いている。
リプルたちのいる場所から反対側の壁は、薄暗い闇にとけて見ることができない。
「敵、いないみたいだし、このままイザベスあっさり救出できたり、したらいいな」
「ペブル、フラグ立てるなよ。どうやら敵が俺たちに気づいたみたいだ」
ロッドの声が消えないうちに、薄暗がりの向こうから、黒い固まりが迫ってくる様子が見てとれた。
以前、ジールたちを追いかけてきた黒ブドウのおばけみたいな固まりが三体ほど、ごろごろと転がってくる。
ただし、相手もこちらを警戒しているのか、その動きはゆっくりだった。
「敵は三体」
リプルが言った。
ジールがみんなを見回して素早く指示をする。
「僕とロッドが前列で敵と戦う。リプルは、後列から矢を打って。マーサはさらにその後から魔法で僕らをサポートしてくれ。えっと、ペブルだけど……」
ジールは少し言いよどむ。
「すごく、イヤな予感がするわ」
「君は、敵の攻撃をその大きなハンマーで受け止めるタンクの役割だ」
ジールが言い終わらないうちに
「やっぱりね。やらなきゃいけないなら、やるわよ」
ペブルは、素早く言った。
そして、
「行くわよー!」
と、自分を励ますようにひと声張り上げると、敵の眼の前に堂々と飛び込んでいく。
2時間ほどたった頃、リプルたちは、ようやくまがまがしい妖気を発する塔の下にたどり着いた。
塔の周囲は体育館ほどの広さがあり、見あげても黒いもやがかかっていて、はっきりと見通せない。
壁はゴツゴツと削り取ったような荒々しい岩肌で、積み木をいびつに積み上げたような不安定な形をしている。
「なんだか、ここまですんなり来られちゃったけど、どうやって入るんだろ?」
「油断するなよ。敵は、俺らを油断させといて一網打尽にしようっていう魂胆かもしれない。決して、その辺の物を適当に触ったり……って、おい!」
ロッドが注意をうながしているそばから、ペブルは、扉とおぼしきものの隣にあった赤いボタンを押していた。
シューっという音がして、扉が開きかけた。
全員あわてて近くの大きな岩の陰に姿を隠した。
しかし、中から何かが出てくるような様子は全くなかった。
「全く、お前ってヤツは」
ロッドがあきれたようにペブルをにらみつける。
「ごめん。『OPEN』って書いてあったから、つい。でもま、扉が開いたから、よかったってことで」
ペブルは、ニコリと笑うと行くわよと言って、大きなハンマーを担ぎ上げ、扉の中へと入っていく。
その後をダチョウがヒョコヒョコとついていく。どうやらすっかりペブルになついたようだ。
「あいつ、無事に帰れたら、しめてやる。覚えてろよ」
ロッドは、ペブルの後ろ姿をにらみつけながら歯ぎしりした。
塔の中は、薄暗かったが、かろうじて隣にいる人の顔が見えるくらいの光はあった。
中の壁も、岩肌を荒く削っただけのような殺風景な空間が続いている。
リプルたちのいる場所から反対側の壁は、薄暗い闇にとけて見ることができない。
「敵、いないみたいだし、このままイザベスあっさり救出できたり、したらいいな」
「ペブル、フラグ立てるなよ。どうやら敵が俺たちに気づいたみたいだ」
ロッドの声が消えないうちに、薄暗がりの向こうから、黒い固まりが迫ってくる様子が見てとれた。
以前、ジールたちを追いかけてきた黒ブドウのおばけみたいな固まりが三体ほど、ごろごろと転がってくる。
ただし、相手もこちらを警戒しているのか、その動きはゆっくりだった。
「敵は三体」
リプルが言った。
ジールがみんなを見回して素早く指示をする。
「僕とロッドが前列で敵と戦う。リプルは、後列から矢を打って。マーサはさらにその後から魔法で僕らをサポートしてくれ。えっと、ペブルだけど……」
ジールは少し言いよどむ。
「すごく、イヤな予感がするわ」
「君は、敵の攻撃をその大きなハンマーで受け止めるタンクの役割だ」
ジールが言い終わらないうちに
「やっぱりね。やらなきゃいけないなら、やるわよ」
ペブルは、素早く言った。
そして、
「行くわよー!」
と、自分を励ますようにひと声張り上げると、敵の眼の前に堂々と飛び込んでいく。
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