88 / 103
96.紫の太陽
天空の魔女 リプルとペブル
しおりを挟む
96.紫の太陽
ペブルとロッドの会話に、こわばっていたみんなの表情も少しやわらいだ。
灯りがついた分、五人の周りは明るくなったが、その周囲を取り巻く闇は、いっそう濃くなったように見える。
リプルは、オオカミの耳をすませてみた。遠くの方でかすかに風が吹くような音が聞こえる。
「かすかに風が流れるような音がするの」
「風が吹いているということは、開けた土地ってことだな。リプル、そっちに案内してくれる?」
「わかった。ついてきて」
明かりを持ったリプルの後についてペブルたちは、ゆっくりと歩き出した。
小さなたいまつで足元を照らしながらの移動は、なかなか骨の折れる作業だった。
しかも、足元には、大きな石が転がっていたり、穴が開いていたりして歩きにくいことこの上ない。
それでも、しばらくすると、五人の目も闇に慣れてきたようで、足元に転がっている頭くらいの大きさの岩や枯れた草らしきものが見分けられるようになってきた。
「おかしいな。闇の大地は、紫色の太陽に照らされている、と聞いたことがあるけれど。ここはあまりにも暗い」
紫色の太陽と聞いて、リプルがハッとした。
「そうだわ。何かの本で私も読んだことがある。『闇より暗き洞穴を進みて、至るは光の空か、はたまた更なる常闇の大地か。ああ常闇よ、我を招け。ぬばたまの闇に包まれし境界の隧道をぬけ、紫の太陽が光る闇の世界へと』たしか、こんな詩が書かれていた」
「ということは、ここは、境界の隧道かもしれないな」
「隧道とやらをぬけるとどこに出るの?」
ペブルがのん気な声でたずねる。
「闇の大地に出るか、それとも地上に戻れるか、行ってみないとわからないね」
ジールの言葉に、ペブルは、
「闇の大地で食べる非常食クッキーか、それとも王都のレストランでの温かいディナーか、出た場所で、それが決まるわね」
と、うで組みをする。
「おまえ、ほんと食べ物のことしか頭にないな。大物かよ」
あきれたようなジールの声にペブルは照れ笑いをした。
「でへへ。誉められた」
「誉めてねーし」
「あ、あそこが出口じゃない?」
リプルの言う通り、遠くに闇が薄くなっている部分が見える。
五人の足は、自然と早まった。ダチョウもヒョコヒョコとついてくる。
最後に少し急な坂道を上がりきってしまうと、広い大地がひらけた。
しかし、空があるべきところは、厚い岩盤のようなものにおおわれていて、そしてその岩盤の少し下に紫色に光る球体が浮かんでいた。
「あれって、紫の太陽!」マーサが声をふるわせた。
「てことは、とうとう来てしまったってことだね。闇の大地に」ジールの声にも緊張がまじる。
「うわーっ。缶入りクッキーの方だったか。残念」ペブルはあいかわらずマイペースだった。
「ペブル、お前だけガッカリの方向性が違うんだよ」ロッドはそんなペブルへのツッコミがうまくなっている。
乾いた風がヒューッと吹抜けていくが、まるで大地は深い死の眠りについているよう。
木や草もなく、ただただ荒涼とした岩とあれた大地が広がっている。隧道の中とは違って、あたりの様子は見える。
しかし、まるで紫色のサングラスをかけて見ているような景色で、おせじにも居心地がいいとは言えない。
その時、ぐらぐらと地面がゆれた。
ペブルとロッドの会話に、こわばっていたみんなの表情も少しやわらいだ。
灯りがついた分、五人の周りは明るくなったが、その周囲を取り巻く闇は、いっそう濃くなったように見える。
リプルは、オオカミの耳をすませてみた。遠くの方でかすかに風が吹くような音が聞こえる。
「かすかに風が流れるような音がするの」
「風が吹いているということは、開けた土地ってことだな。リプル、そっちに案内してくれる?」
「わかった。ついてきて」
明かりを持ったリプルの後についてペブルたちは、ゆっくりと歩き出した。
小さなたいまつで足元を照らしながらの移動は、なかなか骨の折れる作業だった。
しかも、足元には、大きな石が転がっていたり、穴が開いていたりして歩きにくいことこの上ない。
それでも、しばらくすると、五人の目も闇に慣れてきたようで、足元に転がっている頭くらいの大きさの岩や枯れた草らしきものが見分けられるようになってきた。
「おかしいな。闇の大地は、紫色の太陽に照らされている、と聞いたことがあるけれど。ここはあまりにも暗い」
紫色の太陽と聞いて、リプルがハッとした。
「そうだわ。何かの本で私も読んだことがある。『闇より暗き洞穴を進みて、至るは光の空か、はたまた更なる常闇の大地か。ああ常闇よ、我を招け。ぬばたまの闇に包まれし境界の隧道をぬけ、紫の太陽が光る闇の世界へと』たしか、こんな詩が書かれていた」
「ということは、ここは、境界の隧道かもしれないな」
「隧道とやらをぬけるとどこに出るの?」
ペブルがのん気な声でたずねる。
「闇の大地に出るか、それとも地上に戻れるか、行ってみないとわからないね」
ジールの言葉に、ペブルは、
「闇の大地で食べる非常食クッキーか、それとも王都のレストランでの温かいディナーか、出た場所で、それが決まるわね」
と、うで組みをする。
「おまえ、ほんと食べ物のことしか頭にないな。大物かよ」
あきれたようなジールの声にペブルは照れ笑いをした。
「でへへ。誉められた」
「誉めてねーし」
「あ、あそこが出口じゃない?」
リプルの言う通り、遠くに闇が薄くなっている部分が見える。
五人の足は、自然と早まった。ダチョウもヒョコヒョコとついてくる。
最後に少し急な坂道を上がりきってしまうと、広い大地がひらけた。
しかし、空があるべきところは、厚い岩盤のようなものにおおわれていて、そしてその岩盤の少し下に紫色に光る球体が浮かんでいた。
「あれって、紫の太陽!」マーサが声をふるわせた。
「てことは、とうとう来てしまったってことだね。闇の大地に」ジールの声にも緊張がまじる。
「うわーっ。缶入りクッキーの方だったか。残念」ペブルはあいかわらずマイペースだった。
「ペブル、お前だけガッカリの方向性が違うんだよ」ロッドはそんなペブルへのツッコミがうまくなっている。
乾いた風がヒューッと吹抜けていくが、まるで大地は深い死の眠りについているよう。
木や草もなく、ただただ荒涼とした岩とあれた大地が広がっている。隧道の中とは違って、あたりの様子は見える。
しかし、まるで紫色のサングラスをかけて見ているような景色で、おせじにも居心地がいいとは言えない。
その時、ぐらぐらと地面がゆれた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
オオカミ少女と呼ばないで
柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。
空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように――
表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
【完】ことうの怪物いっか ~夏休みに親子で漂流したのは怪物島!? 吸血鬼と人造人間に育てられた女の子を救出せよ! ~
丹斗大巴
児童書・童話
どきどきヒヤヒヤの夏休み!小学生とその両親が流れ着いたのは、モンスターの住む孤島!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
夏休み、家族で出掛けた先でクルーザーが転覆し、漂流した青山親子の3人。とある島に流れ着くと、古風で顔色の悪い外国人と、大怪我を負ったという気味の悪い執事、そしてあどけない少女が住んでいた。なんと、彼らの正体は吸血鬼と、その吸血鬼に作られた人造人間! 人間の少女を救い出し、無事に島から脱出できるのか……!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
家族のきずなと種を超えた友情の物語。
ミズルチと〈竜骨の化石〉
珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。
一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。
ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。
カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。
時空捜査クラブ ~千年生きる鬼~
龍 たまみ
児童書・童話
一学期の途中に中学一年生の教室に転校してきた外国人マシュー。彼はひすい色の瞳を持ち、頭脳明晰で国からの特殊任務を遂行中だと言う。今回の任務は、千年前に力を削ぎ落し、眠りについていたとされる大江山に住む鬼、酒呑童子(しゅてんどうじ)の力の復活を阻止して人間に危害を加えないようにするということ。同じクラスの大祇(たいき)と一緒に大江山に向かい、鬼との接触を試みている間に女子生徒が行方不明になってしまう。女子生徒の救出と鬼と共存する未来を模索しようと努力する中学生の物語。<小学校高学年~大人向け> 全45話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる