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91.動物の背にゆられて
天空の魔女 リプルとペブル
しおりを挟む91.動物の背にゆられて
「それじゃぁ、動物たちを呼ぼうかね」
ちょびひげの園長が右手をサッと振りながら口の中で何事かをモゴモゴと唱えると、ライオンを先頭に、シマウマやシカ、クロヒョウが行進してきた。
リプルが目を輝かせて駆け寄る。
「素敵、あれがライオンね。はじめて見たわ。こっちは縞模様の馬さん。こんにちは。シカさんもカワイイ」
「クロヒョウってかっこいいな」
ロッドは、しなやかなクロヒョウの姿に心を奪われた様子。
「俺、クロヒョウに乗せてもらう」
「おじさん、私、走るのが速い動物がいい」
と、注文をつけたペブル。
園長はしばらく考えていたが、
「それならダチョウかな?」
と、言った。
「ダ・チョウ? なんか優雅な名前っ」
ダチョウを見たことのないペブルのテンションが上がる。
園長は、また呪文を唱えている。
どうやらダチョウを呼び出してくれているらしい。
「そう言えば、トッドとレッドがまだここにいたはず」
マーサが籐カゴから魔法で小さくした二頭の馬をだした。
リプルが復元魔法を唱えると、二頭の馬は、元通りの大きさになった。
そんな動物たちに群がるリプルたちの輪から一人離れてイザベスが腕組みをしていた。
(ふふ、ジール様は、小さい頃、ライオンに乗りたがったという話でしたわね。と、いうことは今がその夢を叶えるチャンス。獣の背などに乗るのは、正直、気がすすみませんけれど、ジール様と一緒なら我慢できます。私、ジール様と一緒にライオンの背に揺られてまいりますわ)
イザベスは、みんなをかき分けてライオンのところに進むと、
「私、このライオンとやらに乗せていただきますわ」
と、言い、さっさとその背にまたがり、たてがみをギュッとつかんだ。
驚いたのはライオンの方だ。
たてがみをつかまれただけでなく、イザベスの香水の匂いも気に入らなかったらしく、ひとつ大きく跳ねると、ガオーっと大声を出した。
その声に驚いたシカとトッドが、慌てて動物園の外へと走り出す。
すると、ライオンもイザベスを乗せたまま、シカとトッドを追って動物園から外へと走り出してしまった。
「きゃー」
イザベスの悲鳴がどんどん小さくなっていく。
「追いかけなきゃ」
ジールは、レッドに飛び乗った。
マーサは、シマウマに、ロッドはクロヒョウに乗っている。
そこに、
「おう、来た来た。ダチョウだ」
園長の声に振り返ったペブルはガックリした。
「また、鳥!」
でも、そんなことを言っている余裕はなかった。
逃げた動物たちとイザベスを乗せたライオンを追わないといけないのだ。急いで、ペブルもダチョウの背に乗る。
一人残ったリプルが、どうしようと迷っていると、彼女の前を通りすぎざま、馬上からジールがさっと手を差し伸べた。次の瞬間、リプルはジールと共にレッドの背に乗っていた。
「みんな行くぞ」
ジールの声を背中に聞きながら、リプルもレッドの手綱をしっかりと握りしめた。
リプルとジールが乗ったレッドの後ろに、マーサを乗せたシマウマ、そして、ペブルを乗せたダチョウが羽根をバサバサさせながら続く。しんがりはクロヒョウに乗ったロッドだった。
「園長、間違いなく王都に彼らを連れていきますから安心してください」
ロッドのその言葉が終わるか終わらないかのうちに彼らは全員、動物園の外へと消えていた。
「やれやれ。騒がしい連中じゃったわい」
園長は、肩をすくめながらも、楽しそうな面持ちでリプルたちを見送っていた。
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