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81.動物たちの移動をお手伝い
天空の魔女 リプルとペブル
しおりを挟む81.動物たちの移動をお手伝い
おじさんは自分の目をこしこしと太い指でこすると、ジールの顔をまじまじと見つめた。
「も、もしや、セント・クリストファー・フォン・ジールフリート様ではございませんか? 」
「誰? その舌噛みそうな長い名前の人」
と言ったペブルにおじさんが目を丸くする。
「知らんのかね? この国の王子だよ。第六王子だ。優しくて責任感が強くて、王子様たちの中でも人気が高いお方だ。ジールフリート様、覚えてらっしゃいませんか? 私です。この動物園の園長ですよ」
「いや、人違いですよ」
と、ロッドがそっけなく答えた。
「いや、しかし、見れば見るほどそっくりだ」
ペブルが、ないないというふうに片手を顔のまえで振る。
「園長さん、この人はただのジールだよ。洞窟でごろ寝するし、お肉も手づかみで骨持ってガシガシって食べるしね。寝てる時にお腹出してポリポリかいてたり」
リプルがすかさずツッコミを入れる。
「それは、ペブルでしょ」
「はい、そのとおりです」
と、ペブルが舌をだした。
まるでコントみたいなふたりの会話を聞きながら園長は、なおも首をかしげていたが、一つうなずくと言った。
「そうですか。これは失礼しました。私の勘違いでしたか。しかし、みなさんがせっかく来てくださったのに申し訳ないのですが、今日からしばらく閉園なんですよ。今日中に動物たちを王都に移動させねばならんので」
「今日これから動物たちを王都まで移動させるんですね」
リプルが目を輝かせている。
「そうだよ。お嬢ちゃん。動物園の職員たちが、動物を馬車に乗せたり、乗れる動物には、乗っていくんだが。いかんせん、職員より動物の数の方が多いからね、何往復もしなきゃいかんのだよ」
「それ、私たちにお手伝いさせてもらえませんか!?」
リプルが、ぴょんと飛びはねるような勢いで言う。
「え! 君たちが?」
園長は、びっくりして声が裏返った。
でも、そこは魔法が使える世界のこと。
現にリプルたちは、オオカミや鷹といった猛獣を使い魔として従えている。
園長はすぐに
「うむ、そうしてもらえれば、こちらも助かる」
と、首を縦に振ってくれた。
喜んだのは、リプルだ。
「ありがとうございます。さっそく動物たちに会わせてください」
ペブルも
「どの子に乗せてもらおうかな」
と、早くもやる気まんまん。
ほかのみんなも乗り気だった。
ただ一人、
「まあ、動物ですって、お洋服に毛がつきそう。私は馬車で行きたいですわ」
と、ぶつぶつ言うイザベスを除いて。
「じゃ、こっちに来てくれるかな」
園長は、入口の横にある、通用門を開けるとみんなを手招きしてくれた。
しかし、そこで立ち止るとみんなをふりかえった。
「あ、そうそう。動物によっては、気性の荒いのもいるから念のために使い魔さんたちは、離れててもらった方がいいかもしれませんな」
園長の言葉に、ウィングが
「そうだな。ジール、我らは一足先に王都へ向かっておくこととしよう」
と、空へ飛び上がった。
「それでは、王都で会おう」
ファングも短くそう言うと、動物園の前の道を風のように走り去っていった。
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