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74.ふしぎなお客様
天空の魔女 リプルとペブル
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74.ふしぎなお客様
すると、その時、
「こんにちは」
「おいしそう」
「お邪魔していい?」
と、いう声が聞こえた。
「えっ?」
リプルたちが声のした方を振り返ると、十五人ほどの精霊たちが、リプルたちを取り囲むように宙に浮かんでいた。
透明な体と透明な羽根を持つ精霊たちだった。
「どうぞ。いっしょに楽しみましょう」
リプルは、笑顔で精霊たちを招く。
「ありがとう」
「うれしいね」
「おいしそう」
精霊たちは口々にそう言うと、テーブルに座ったり、リプルの肩に乗ったりと思い思いの場所に陣取った。
中には、イザベスの金髪の巻き髪の中にすっぽりと収まる者もいた。
リプルはケーキを小さく切り分けて、精霊たちが食べやすいようにしてあげた。
精霊たちは、手に手にケーキを持って、嬉しそうに味わっている。
「ところで、あなたたち、地上の住人でしょう? どうしてこんなところにいるの?」
リプルの肩に座った精霊が問う。
「実は、あっちの方から来たんだけど、途中で友達とはぐれてしまって」
リプルは自分たちが歩いてきた洞窟の入り口のほうをゆびさした。
「はぐれてしまったの。さみしいね」
「この洞窟、迷うのよ。道がいっぱいあるから」
「そうよ。しかも迷わせ鬼が住んでいるのよ」
精霊たちは口々にしゃべる。
「迷わせ鬼って?」
リプルが聞くと
「光で誘うの、で、どんどん洞窟の奥へ誘うの」
「どうして、彼らはそんなことするのかしら?」
「面白いからよ。だって、ここ闇の世界は、ずっと変わらない退屈な世界。不変なの。安定しているけど、不変よ」
と、一人の精霊が言うと、隣の精霊が、異を唱えた。
「でも。いいとこよ。地上の住民も来る。闇の住民も来る。ここは境界の地だから」
「闇の住人!」
その言葉に、ジールがハッとしたように精霊に問い返す。
「奴らがここにも現われるのか?」
「うん。この間、来た時は、たしか二百年前」
「そ、そっか。そんなに前のことか」
ジールはそれを聞いてほっと安心した。
そのとき、ひとりの精霊がイザベスの前にふわりと飛んできた。そして、じっとイザベスの顔をみた。
「あわ、わたくしの顔がそんなに美しいかしら?」
イザベスがにっこりとほほ笑むと、精霊は首をふった。
「あなた、闇の香りがする」
「失礼ね! わたくしは立派な魔女ですわ」
いきり立つイザベスには反応せず、精霊はジールに告げた。
「……近い。境界の結界が開く」
ほかの精霊も声をそろえた。
「そろそろまた開きそう」
「境界の結界が開けば……闇の住人も来る」
「……どうして分かるの?」
リプルが聞いた。
「分かる。空気の匂いが変わる」
「あの人もかすかに闇の匂い」
ふたたび精霊に指さされたイザベスは、キリキリと奥歯をかみしめ叫んだ。
「おだまりなさい!」
精霊がおびえたようにリプルの腕の中に逃げ込む。
「怒りはダメ、闇を呼ぶ」
「花が枯れる」
「ここに花が咲くの?」
リプルがそう尋ねると精霊たちは口々に答える。
「そう、あなたたちの目には見えないだけ」
「ここにもいっぱい咲いている。私たちには見える」
「そうなの、教えてくれてありがとう」
リプルは、精霊たちにお礼を言った後、ジールと顔を見合わせた。
ジールも難しい顔をしていた。
境界の結界が開く時、何が起るのか、まだ中等部の生徒である彼や彼女たちには、予想もつかなかった。
すると、その時、
「こんにちは」
「おいしそう」
「お邪魔していい?」
と、いう声が聞こえた。
「えっ?」
リプルたちが声のした方を振り返ると、十五人ほどの精霊たちが、リプルたちを取り囲むように宙に浮かんでいた。
透明な体と透明な羽根を持つ精霊たちだった。
「どうぞ。いっしょに楽しみましょう」
リプルは、笑顔で精霊たちを招く。
「ありがとう」
「うれしいね」
「おいしそう」
精霊たちは口々にそう言うと、テーブルに座ったり、リプルの肩に乗ったりと思い思いの場所に陣取った。
中には、イザベスの金髪の巻き髪の中にすっぽりと収まる者もいた。
リプルはケーキを小さく切り分けて、精霊たちが食べやすいようにしてあげた。
精霊たちは、手に手にケーキを持って、嬉しそうに味わっている。
「ところで、あなたたち、地上の住人でしょう? どうしてこんなところにいるの?」
リプルの肩に座った精霊が問う。
「実は、あっちの方から来たんだけど、途中で友達とはぐれてしまって」
リプルは自分たちが歩いてきた洞窟の入り口のほうをゆびさした。
「はぐれてしまったの。さみしいね」
「この洞窟、迷うのよ。道がいっぱいあるから」
「そうよ。しかも迷わせ鬼が住んでいるのよ」
精霊たちは口々にしゃべる。
「迷わせ鬼って?」
リプルが聞くと
「光で誘うの、で、どんどん洞窟の奥へ誘うの」
「どうして、彼らはそんなことするのかしら?」
「面白いからよ。だって、ここ闇の世界は、ずっと変わらない退屈な世界。不変なの。安定しているけど、不変よ」
と、一人の精霊が言うと、隣の精霊が、異を唱えた。
「でも。いいとこよ。地上の住民も来る。闇の住民も来る。ここは境界の地だから」
「闇の住人!」
その言葉に、ジールがハッとしたように精霊に問い返す。
「奴らがここにも現われるのか?」
「うん。この間、来た時は、たしか二百年前」
「そ、そっか。そんなに前のことか」
ジールはそれを聞いてほっと安心した。
そのとき、ひとりの精霊がイザベスの前にふわりと飛んできた。そして、じっとイザベスの顔をみた。
「あわ、わたくしの顔がそんなに美しいかしら?」
イザベスがにっこりとほほ笑むと、精霊は首をふった。
「あなた、闇の香りがする」
「失礼ね! わたくしは立派な魔女ですわ」
いきり立つイザベスには反応せず、精霊はジールに告げた。
「……近い。境界の結界が開く」
ほかの精霊も声をそろえた。
「そろそろまた開きそう」
「境界の結界が開けば……闇の住人も来る」
「……どうして分かるの?」
リプルが聞いた。
「分かる。空気の匂いが変わる」
「あの人もかすかに闇の匂い」
ふたたび精霊に指さされたイザベスは、キリキリと奥歯をかみしめ叫んだ。
「おだまりなさい!」
精霊がおびえたようにリプルの腕の中に逃げ込む。
「怒りはダメ、闇を呼ぶ」
「花が枯れる」
「ここに花が咲くの?」
リプルがそう尋ねると精霊たちは口々に答える。
「そう、あなたたちの目には見えないだけ」
「ここにもいっぱい咲いている。私たちには見える」
「そうなの、教えてくれてありがとう」
リプルは、精霊たちにお礼を言った後、ジールと顔を見合わせた。
ジールも難しい顔をしていた。
境界の結界が開く時、何が起るのか、まだ中等部の生徒である彼や彼女たちには、予想もつかなかった。
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