天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし

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68.地下の湖

天空の魔女 リプルとペブル

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68.地下の湖

 前を歩くリプルは、先ほどからマーサが無口になっているのが、気になっていた。もともとあまりしゃべる方ではないマーサだが、普段は誰かの言葉に小さく笑ったり、使い魔たちにこまめに声をかけるといった気づかいを見せることが多い。

 しかし、この洞窟を歩き出してからリプルは、マーサの笑顔を一度も見ていなかった。
「マーサ、疲れた?」
 リプルの声にマーサは、ううんと首を振る。
 けれど、次の瞬間、顔をしかめるようなしぐさをして右腕を押さえた。
「痛い」

「大丈夫? みんなちょっと止まって、マーサが」
 と、言いかけたリプルをさえぎってマーサは
「大丈夫。大丈夫だから」
 と、言い、むしろ足早に歩きはじめた。
 リプルは、マーサのいつになく人を寄せ付けない態度に、それ以上、声をかけることができなかった。

 それからまた一時間ほど歩くと、突然、前の方にぼうと青く光る点が見えてきた。徐々に近づいていくと、その点は段々大きな楕円となってきた。

「アソコ、ミズウミ」
 シッコクがバサバサと飛びまわりながら、言う。
「よかった。私ノドがカラからでしたのよ」
 イザベスがペブルの声に反応して駆けだした。

「私も、水飲みたい」
 ペブルも後を追う。二人が、リプルやジールたちを追い越して、この狭い通路から飛び出すと、そこは、地底にぽっかりと開けた空間となっていて、左手には、満々と水をたたえた地底湖が広がっていた。

 不思議なことに、地底湖の中には、枯れた木が何本も立っている。
 うっすらと青く光る地底湖に白くぼうと立っている枯れ木は、どこか幽玄な雰囲気だった。

 そんな景色など気にも留めずペブルとイザベスは、ばたばたと湖の畔へと駆け寄ると、膝をついて、両手で水をすくおうとした。
 
その時、キラッと何かが光った。
 すると、その姿のまま二人とも固まってしまった。
「う、動けない」
 ペブルが苦しそうな声を出す。

 そこにリプルが、やってきて腰に手を当てて言った。
「まったく、どんな水かも分からないのに、調べないで飲んじゃダメでしょ」
 ジールが、岸辺にあった古木の枝を手に取り、水に差し入れてから持ち上げてみた。
 
 すると、ジュッという音がして、枯れ木の水につかった部分が、ぼろぼろと崩れ落ちてしまった。
「ヒッ」
 動けないまま、声だけは出せるペブルと、イザベスは真っ青になった。
「リンレール、カリルーマ」
 リプルが、「ほどく」魔法を唱えると、ペブルとイザベスの体は、ふたたび動くようになった。

「ありがとう、リプルが固定魔法をかけて私たちを止めてくれたのね」
 ペブルは、リプルに抱きつかんばかりにして喜んだ。

「きっとこの湖を守っている精霊がいるはずだ」
 ジールはそう言うと、天の魔石を手で包みながら頭を垂れ祈りはじめる。
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