69 / 103
68.地下の湖
天空の魔女 リプルとペブル
しおりを挟む68.地下の湖
前を歩くリプルは、先ほどからマーサが無口になっているのが、気になっていた。もともとあまりしゃべる方ではないマーサだが、普段は誰かの言葉に小さく笑ったり、使い魔たちにこまめに声をかけるといった気づかいを見せることが多い。
しかし、この洞窟を歩き出してからリプルは、マーサの笑顔を一度も見ていなかった。
「マーサ、疲れた?」
リプルの声にマーサは、ううんと首を振る。
けれど、次の瞬間、顔をしかめるようなしぐさをして右腕を押さえた。
「痛い」
「大丈夫? みんなちょっと止まって、マーサが」
と、言いかけたリプルをさえぎってマーサは
「大丈夫。大丈夫だから」
と、言い、むしろ足早に歩きはじめた。
リプルは、マーサのいつになく人を寄せ付けない態度に、それ以上、声をかけることができなかった。
それからまた一時間ほど歩くと、突然、前の方にぼうと青く光る点が見えてきた。徐々に近づいていくと、その点は段々大きな楕円となってきた。
「アソコ、ミズウミ」
シッコクがバサバサと飛びまわりながら、言う。
「よかった。私ノドがカラからでしたのよ」
イザベスがペブルの声に反応して駆けだした。
「私も、水飲みたい」
ペブルも後を追う。二人が、リプルやジールたちを追い越して、この狭い通路から飛び出すと、そこは、地底にぽっかりと開けた空間となっていて、左手には、満々と水をたたえた地底湖が広がっていた。
不思議なことに、地底湖の中には、枯れた木が何本も立っている。
うっすらと青く光る地底湖に白くぼうと立っている枯れ木は、どこか幽玄な雰囲気だった。
そんな景色など気にも留めずペブルとイザベスは、ばたばたと湖の畔へと駆け寄ると、膝をついて、両手で水をすくおうとした。
その時、キラッと何かが光った。
すると、その姿のまま二人とも固まってしまった。
「う、動けない」
ペブルが苦しそうな声を出す。
そこにリプルが、やってきて腰に手を当てて言った。
「まったく、どんな水かも分からないのに、調べないで飲んじゃダメでしょ」
ジールが、岸辺にあった古木の枝を手に取り、水に差し入れてから持ち上げてみた。
すると、ジュッという音がして、枯れ木の水につかった部分が、ぼろぼろと崩れ落ちてしまった。
「ヒッ」
動けないまま、声だけは出せるペブルと、イザベスは真っ青になった。
「リンレール、カリルーマ」
リプルが、「ほどく」魔法を唱えると、ペブルとイザベスの体は、ふたたび動くようになった。
「ありがとう、リプルが固定魔法をかけて私たちを止めてくれたのね」
ペブルは、リプルに抱きつかんばかりにして喜んだ。
「きっとこの湖を守っている精霊がいるはずだ」
ジールはそう言うと、天の魔石を手で包みながら頭を垂れ祈りはじめる。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
星座の作り方
月島鏡
児童書・童話
「君、自分で星座作ったりしてみない⁉︎」
それは、星が光る夜のお伽話。
天文学者を目指す少年シエルと、星の女神ライラの物語。
ライラと出会い、願いの意味を、大切なものを知り、シエルが自分の道を歩き出すまでのお話。
自分の願いにだけは、絶対に嘘を吐かないで
circulation ふわふわ砂糖菓子と巡る幸せのお話
弓屋 晶都
児童書・童話
精霊魔法と剣の世界の片隅で紡がれる、少女と小さな幸せの物語。
まったりのんびりMMORPG風ファンタジー。
冒険者登録制度のある、そんなゲーム風ファンタジー世界で、パーティーでクエストをこなしています。
〜あらすじ〜
家事能力高めの魔法使い、正義感溢れる紳士な盗賊、マッドサイエンティストなヒールに白衣の魔術師の三人は、ある日、森で記憶を無くした小さな女の子を拾います。
その子を家族に返そうと調べるうち、その子の村がもう無い事や、その子に託された願いと祝福された力を知る三人。
この力を正しく使うためにはどうすればいいのか。
道に迷い悩む幼女と、それを支える仲間達の、友愛あふれるお話です。
テムと夢見の森
Sirocos(シロコス)
児童書・童話
(11/27 コンセプトアートに、新たに二点の絵を挿入いたしました♪)
とある田舎村の奥に、入ったら二度と出られないと言われている、深くて広い森があった。
けれど、これは怖い話なんかじゃない。
村に住む十才の少年テムが体験する、忘れられない夢物語。

普通じゃない世界
鳥柄ささみ
児童書・童話
リュウ、ヒナ、ヨシは同じクラスの仲良し3人組。
ヤンチャで運動神経がいいリュウに、優等生ぶってるけどおてんばなところもあるヒナ、そして成績優秀だけど運動苦手なヨシ。
もうすぐ1学期も終わるかというある日、とある噂を聞いたとヒナが教えてくれる。
その噂とは、神社の裏手にある水たまりには年中氷が張っていて、そこから異世界に行けるというもの。
それぞれ好奇心のままその氷の上に乗ると、突然氷が割れて3人は異世界へ真っ逆さまに落ちてしまったのだった。
※カクヨムにも掲載中

モモとマイキーの魔法の杖探し
朝日はじめ
児童書・童話
巴桃香は、御伽の世界に憧れる小学生の女の子だ。
そんなある日のこと、桃香は家に帰る途中で、ゴミ箱のなかに閉じ込められていた妖精リー・マイキーと出会う。
マイキーはうっかり落とした魔法の杖を探しに御伽の世界からやってきた。魔法の杖がないと元の世界に帰れないというマイキーは、桃香に杖探しに協力してくれたら願いを一つ叶えてあげると提案し、桃香は手伝うことになるが……。
毎日19時30分に更新予定。中編くらいの分量で終わる予定です。
沖縄のシーサーとミケネコーンとわたしの楽しい冒険をどうぞ~
なかじまあゆこ
児童書・童話
友達がいることは素晴らしい! 異世界(怪獣界)から地球に落っこちてきたミケネコーンも人間もみんな友達だよ。
門柱の上に置かれていたシーサーの置物が目に入った。その時、猫の鳴き声が聞こえてきた。だけど、この生き物は白、茶色、黒の三色の毛色を持つ短毛のいわゆる三毛猫と同じ柄なんだけど、目なんて顔からはみ出すほど大きくて、お口も裂けるくらい大きい。
猫ではない不思議な生き物だった。
その生き物は「ミケネコーンですにゃん」と喋った。
シーサーとぶさかわもふもふ猫怪獣ミケネコーンと中学一年生のわたし夏花(なつか)とクラスメイトみっきーのちょっと不思議な元気になれる沖縄へテレポートと友情物語です。
ミケネコーンは怪獣界へ帰ることができるのかな。
捨て犬の神様は一つだけ願いを叶えてくれる
竹比古
児童書・童話
犬と暮らす全ての人へ……。
捨てられた仔犬の前に現れたのは、捨て犬の願いを一つだけ叶えてくれるという神さま。
だが、神さまに願いを叶えてもらう前に、一人の青年に拾われ、新しい生活が始まる。
それは、これまで体験したことのない心地よい時間で……。
それでも別れはやってくる。
――神さま、まだ願いは叶えてくれる……?
※表紙はフリーイラストを加工したものです。

ルーカスと呪われた遊園地(中)
大森かおり
児童書・童話
ルーカスと呪われた遊園地(上)のつづきです。前回のお話をご覧いただく方法は、大森かおりの登録コンテンツから、とんで読むことができます。
かつて日本は、たくさんの遊園地で賑わっていた。だが、バブルが崩壊するとともに、そのたくさんあった遊園地も、次々に潰れていってしまった。平凡に暮らしていた高校二年生の少女、倉本乙葉は、散歩に出かけたある日、そのバブルが崩壊した後の、ある廃墟の遊園地に迷い込んでしまう。そこで突然、気を失った乙葉は、目を覚ました後、現実の世界の廃墟ではなく、なんと別世界の、本当の遊園地に来てしまっていた! この呪われた遊園地から出るために、乙葉は園内で鍵を探そうと、あとからやってきた仲間達と、日々奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる