天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし

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63.おいしくいただきました

天空の魔女 リプルとペブル

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63.おいしくいただきました

 暗かった洞窟にポウっと光が宿った。
 イザベスが、炎魔法を使って灯りをともしたのだった。

 入口は、狭かったが、洞窟の中は、二階建ての教会がすっぽり入りそうなほどに広い。
 奥はどこまで続いているのか定かではない。

 灯りが洞窟の壁にリプルたちの影を映している。
 自分たちの何倍もの大きさの影に見まもられつつ、リプルたちは、輪になって座った。

「今日はここで野宿かな」
「ちょうど屋根もあるし、いいかもね」
「でも、ここでは、ろくなお食事がいただけませんわね」
 イザベスが悲しそうに言うと、
「じゃじゃーん!!」
 ペブルが、馬車の荷台から大きな袋を降ろし、ずるずると引きずってきた。

 みんながポカンとした表情でペブルを見つめる。
 ペブルは得意げな表情で、袋から中の物を取り出した。
 中から出てきたのは、頭に赤・黄色・赤と三色の羽根が生えた灰色の鳥。

「それって」
「おい!」
「そうだよ、カルキーの若鶏」
 ペブルは、得意気に言う。

「どうやって持ってきたの?」
 マーサが尋ねる。
 ペブルが、胸を張り、腕組みをする。
「ファングとウィングが手伝ってくれて、とっさに荷台に積み込んだの」

「ふふ、幻の味に、興味があったからな」
 と、ウィングが翼を広げながら言う。
「すまない、ジール。狩猟本能に逆らえなかった」
 と、ファングが首を下げた。

「お前! そのせいで、カルキーにあんなにしつこく追いかけられたんじゃないのか?」
 と、ロッドがペブルに詰め寄ったが、
「いいわよ。ロッド食べないなら……」
 と、逆に言い返されてしまい
「くっそー覚えてろよ」
と、歯がみするロッドだった。

 一時間後、洞窟の中には、香ばしい焼き鳥の香りが漂っていた。
 骨付きの焼き鳥にかぶりつきながらペブルは
「チキンよりあっさり味だけど、皮のぱりぱり感は、こっちの方が上だわね」
 と、ご満悦だ。

「ほのかに、ナッツの味がする気がするわ。普段は木の実を食べてるのかしらね」
 さっそくメモを取っているのは、リプルだ。

「なるほど、王都でも食べられない味だな。これは幻の味と、もてはやされるのも無理はない」
 と、ジール。

「親鳥も、この手で狩りたかった」
 と、ロッド。

「私、もうお腹いっぱい」
 と、マーサが言えば、ペブルが「食べる!」と手を差しだし残りの肉を受け取った。

 イザベスは、最初
「フォークとナイフがない食事なんて……」
 と、ぶつぶつ言っていたが、一口、肉にかぶりつくと、
「んまぁ」
 と笑顔になり、骨を手に持ち、豪快にぱくぱくと食べはじめた。

 ファングは、鋭い歯でかみついている。
 そしてウィングも自分の分け前をもらうと、高い場所に運んでいって、じっくりと獲物をつついていた。

 カルキ―のあまりのおいしさに、みんなはしゃべるのも忘れて食べ続けていた。

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