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59.密航
天空の魔女 リプルとペブル
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その時、どこからともなく
「うへーっ」
と言う声が聞こえてきた。
「何だよ、お前。調子に乗ってまた気分悪くなったのかよ」
ロッドがペブルにあきれたように言う。
「違う、今のは私じゃない」
ペブルが、むすっとしながら言い返す。
「じゃあ、いったい誰?」
「馬じゃないの――?」
と、のんきなペブル。
「お前、バカか。馬がうへーって鳴くか」
ロッドがツッコミを入れる。
「う、うへーっ」
また声が聞こえてきた。
「しっ、こっちだ」
ジールが、みんなに静かにするよう手振りで伝えてから、声が聞こえた荷台につまれた大きな衣装箱へと近づいた。
開けるぞ、と、みんなに目配せをしたジールが、衣装箱のふたを持ち上げる。
頭を寄せるようにして、箱の中をのぞき込んだみんなが目にしたのは、箱の中でぐったりと折り重なるように目をまわしていたイザベスと、マーサのすがただった。
「おかしいですわ、気がついたら、あの箱の中に入っていたんですもの。ああ、そうそう、きっと悪者にさらわれてあの中に入れられたんですわね、私たち。ねえ、マーサ。そうじゃないこと」
イザベスがマーサに必死に目配せしながら、そう言いつくろっている。
マーサは、苦笑しながら
「ごめんなさい、私たちも王都に行きたくて、こっそり馬車に忍び込んでしまいました。すみません」
と、言った。
そんなマーサを安心させるように微笑みながらジールが言う。
「旅の道連れは多いほうがいいよ」
「まっ、ジール様。私うれしゅうございますわ」
マーサをぐいっと押しのけてイザベスがジールの前にしゃしゃり出た。
「と、とにかく宿へ行こうか」
ジールは、そそくさとその場を離れた。
「もう、ジール様ったら、恥ずかしがりですわね」
イザベスが、その場で悔しそうに地団駄をふんでいる。
宿に着いた頃には、日も落ちてあたりはすっかり暗くなっていた。
リプルたちが入った宿は、一階が食堂になっていて、二階から上が宿泊できる部屋になっている。
リプルとペブル、マーサとイザベスの四人は同じ部屋。
二段ベッドが二つ入っている部屋がちょうど空いていたのだ。
ジールとロッドは向いの部屋に泊まることになっていた。
「お夕飯が楽しみだね。さっき村のおばさんに聞いたんだけど、この村って、カルキーって鳥の肉が名物なんだって。なんでもこの先の山にしか生息してなくて幻の味って呼ばれてて、わざわざ王都からカルキーを食べにくる人もいるらしいよ」
いつの間に仕入れたのか、すっかり元気になったペブルはそんな情報を披露した。
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